時代と焔の守り手は龍の剣 第二話

・・・比古清十郎の命により、エンゲーブという村に向かったセカン。彼女はエンゲーブについた・・・が早速、少し悩んでいた。









「・・・うーん・・・どうしよう・・・」
辺りは暗く、エンゲーブの村の外れの一角でセカンはしゃがみ込みながら困ったように声を上げる。何故セカンは困っているのか、それは・・・
「「「「みゅーみゅーみゅーみゅー!」」」」
セカンがやたらみゅーみゅー鳴く小さい生物を両手に持ち、似たような小さい生物がセカンを取り囲むよう何匹も怒ったように鳴いているからだ。
「これって、チーグルよね・・・チーグルが食料泥棒の犯人・・・」
そこから辺りを見渡し、林檎やらなにやらと食料が散乱している現状にセカンは少し考え込む・・・



・・・セカンはエンゲーブに着いた時、宿の前でなにやら人が集まって騒ぎがあるのを目撃した。その人達に話を聞けば、村の中にある食料貯蔵庫が何者かによって荒らされていたとのことだった。

エンゲーブに行けと比古清十郎に言われたセカンだが、具体的にはエンゲーブで何をしろとは言われていない・・・そういう指示だっただけに、セカンは特に目立った動きもエンゲーブ内で他に無かったため食料貯蔵庫の周辺を怪しまれない程度に見張る事にした。

そしてその見張りの結果が、チーグルという生き物が食料貯蔵庫から食料を大量に運びだそうとしているのを目撃して、それを捕まえた訳である。尚、村の中で捕まえようと思えば捕まえられたセカンだったが、それをしなかったのは色々思う所があったためだ。



「・・・チーグルが食料を盗むにはそれなりの理由がある、よね。そんなにチーグルは食料を必要にしないっていうし・・・」
何を思ったのかセカンは無言で掴んでいたチーグルを離す。その瞬間セカンからそのチーグルはピョンピョンと飛びながら離れ、仲間のチーグルとともに食料を持つと一目散に闇夜の平野に消えていく・・・
「・・・」
するとセカンは何も言わず適度に距離を空けながら闇に消えていくチーグルの後を追う・・・












・・・その後無言でチーグルの後を追っていたセカン。既に朝日が昇っていてもう朝と呼べる時間、そんな時間までチーグルを追っていたセカンの前に森が姿を現す。



「・・・ここが、チーグルの住む森・・・」
森の入口にてようやく声を出すセカン。
「見たところチーグルに必要な食料なんかは足りてるようだし、やっぱり理由ありか・・・」
パッと森を見渡しながらセカンはチーグルを思い、首をひねる。
・・・そう、セカンが食料泥棒をしたチーグルを泳がしたのはそうしなければならない理由を知りたいと思った為だ。
「・・・急がないと。あまり時間をかけると動きがあったかどうかもわからなくなっちゃう・・・」
とは言えこれはあくまでもセカンの独断、それをセカン自身もわかっているだけにチーグルがあんな思い詰めた行動を取った理由を早く知ってエンゲーブに戻りたいと思いながら素早く足を運んでいく・・・



・・・それから歩いてさほど時間も経たない程すると、セカンの前に周りを池に囲まれた一際大きい大樹が姿を現す。
「注意しないと・・・」
そしてその大樹の根本に穴を見つけると、ここがチーグルの住家だとあたりをつけながら刀の鯉口に手をかけながら中に入っていく・・・



「「「「みゅーみゅーみゅーみゅー!」」」」
「うわぁ・・・」
すると中には何十匹ものチーグル達が足元にひしめき、セカンにみゅーみゅー鳴きながら抗議する光景が広がっていた。そんな光景に刀の鯉口から手を引きながら、セカンは少し引いていた。



・・・比古清十郎との暮らしでその師匠の趣味もあり、あまり飾り気のない暮らしをしていたセカン。そんなものだから比古清十郎は動物を飼うという概念もなく、セカンも自然と動物を飼いたいという気持ちはなかった。まぁ犬や猫やチーグルを見て可愛いと思うくらいはあるが、こうやって沢山いられては若干引く気持ちがセカンは強いようである。



「何者だ、そなたは?」
「!誰っ!?」
すると目の前にいるチーグル達の奥の方から人の発する言語が聞こえ、セカンはまた刀に手を伸ばす。
「・・・髭のある、チーグル?」
その声の方を見たセカンの目に入ったのは、やたら年を取ったように見えるチーグルだった。









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