時代と焔の守り手は龍の剣 第九話
・・・そこから比古清十郎達を乗せた辻馬車は速度を上げ、目的地へと向かっていった。ただそこは比古清十郎の住む小屋になどではない・・・
「え・・・ここは?」
辻馬車が止まり、比古清十郎の住む小屋に着いたと思って下車したイオン。だが見渡しても小屋などないその馬車に、どこかと首を傾げる。
「デオ峠だ、ここは」
「デオ峠・・・ここが・・・?」
その様子に辻馬車から降りてきた比古清十郎がデオ峠と明かし、イオンは不思議そうに比古清十郎を見る。
「・・・住まわれている所に帰るのではなかったのですか?」
「陶器は土地土地にある様々な土によってその色を変える。俺は時々作風を変えるため、このデオ峠まで来ては土を持って帰りその土で陶器を作っている故にここに来たんだ。それに俺は辻馬車に乗る時は小屋に帰るなどとは言っていない、乗せていってもらうと言っただけだ」
「あっ、そう言えば・・・確かに」
「でもよかったじゃないですかイオン様ぁ、わざわざそんなに歩かないで済む距離になったんですし」
「そうですね、ハイ」
そのイオンの疑問は帰る事じゃなかったのかと言うことだが、比古清十郎は土を持って帰る為と言いつつすぐに帰るとは言ってないと言いイオン達を納得させる。都合がいいからと笑ませる事で。
・・・だが陶器の事をよく知らないイオン達では分かるはずもないだろう、このデオ峠の土は粘土状になりにくい上に小石が多く陶器に使う石としては不適合な土だと言うこと・・・つまり、嘘だと言うことを。
「・・・まぁこれまで一応共に旅をしてきた身だ、この峠を越えるまでは付き合ってやる」
「えっ!?ホントですかぁ!?」
それを見抜けていない二人に比古清十郎は普段だったらまず言わない親切心を自ら切り出し、アニスは目を輝かせる。それは比古清十郎の腕を存分にアテにしている証だ。
「いいんですか?」
「ただの気まぐれだ、それにお前らはここで押し問答をしている時間もないのだろう。俺と行くのか、行かないのかどっちだ?」
「いえ、行かせていただきます・・・ありがとうございます」
そしてイオンも意思を確認してくるが比古清十郎から逆に俺と行かないのかと言われ、すぐに感謝の態度を示す。
「では行くぞ、ここを越えればもうアクゼリュスは目と鼻の先になる」
両者共の同意が取れた事に比古清十郎は珍しく先導を取り、二人の先を歩き出す。その後を二人は当然のように付いていく・・・
・・・それから比古清十郎達は峠の半ば、一番険しく高い場所に差し掛かる。
「・・・うっ」
「イオン様!?」
「・・・どうした」
そこでイオンは突然力ない声を漏らし両膝を地面に崩し落とし、アニスが側に駆け寄り比古清十郎は後ろを振り返り声をかける。
「なんでもありません、ちょっと疲れて・・・」
「なんでもないように見えませんよぅ、イオン様ぁ!・・・もしかしてまたイオン様、ダアト式譜術を使ったんですか?」
「・・・確かに僕はザオ遺跡でアッシュ達に使わされました。ですがあの時から少し時間も経ってますし、大丈夫だと思ったんですが・・・」
「・・・何?」
その声に大丈夫だと返すが明らかに青いその顔色にアニスが慌てふためくが、聞き捨てならない事を聞き比古清十郎の眉がピクリと上がる。
「・・・今お前はダアト式譜術を使ったと言ったが、聞いた所導師に連なる者辺りにしか使えん術だろう。それはお前はおろか歴代導師の命を蝕んだような禁忌の術と言うのか?」
「いえ、どうやら僕はダアト式譜術を使うように体が出来ていないらしく・・・一回使うとこうなってしまうんです・・・すみません」
そこから比古清十郎は探るような質問を投げ掛け、イオンはキツそうにしながらも律儀に答えつつ頭を下げる。
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「え・・・ここは?」
辻馬車が止まり、比古清十郎の住む小屋に着いたと思って下車したイオン。だが見渡しても小屋などないその馬車に、どこかと首を傾げる。
「デオ峠だ、ここは」
「デオ峠・・・ここが・・・?」
その様子に辻馬車から降りてきた比古清十郎がデオ峠と明かし、イオンは不思議そうに比古清十郎を見る。
「・・・住まわれている所に帰るのではなかったのですか?」
「陶器は土地土地にある様々な土によってその色を変える。俺は時々作風を変えるため、このデオ峠まで来ては土を持って帰りその土で陶器を作っている故にここに来たんだ。それに俺は辻馬車に乗る時は小屋に帰るなどとは言っていない、乗せていってもらうと言っただけだ」
「あっ、そう言えば・・・確かに」
「でもよかったじゃないですかイオン様ぁ、わざわざそんなに歩かないで済む距離になったんですし」
「そうですね、ハイ」
そのイオンの疑問は帰る事じゃなかったのかと言うことだが、比古清十郎は土を持って帰る為と言いつつすぐに帰るとは言ってないと言いイオン達を納得させる。都合がいいからと笑ませる事で。
・・・だが陶器の事をよく知らないイオン達では分かるはずもないだろう、このデオ峠の土は粘土状になりにくい上に小石が多く陶器に使う石としては不適合な土だと言うこと・・・つまり、嘘だと言うことを。
「・・・まぁこれまで一応共に旅をしてきた身だ、この峠を越えるまでは付き合ってやる」
「えっ!?ホントですかぁ!?」
それを見抜けていない二人に比古清十郎は普段だったらまず言わない親切心を自ら切り出し、アニスは目を輝かせる。それは比古清十郎の腕を存分にアテにしている証だ。
「いいんですか?」
「ただの気まぐれだ、それにお前らはここで押し問答をしている時間もないのだろう。俺と行くのか、行かないのかどっちだ?」
「いえ、行かせていただきます・・・ありがとうございます」
そしてイオンも意思を確認してくるが比古清十郎から逆に俺と行かないのかと言われ、すぐに感謝の態度を示す。
「では行くぞ、ここを越えればもうアクゼリュスは目と鼻の先になる」
両者共の同意が取れた事に比古清十郎は珍しく先導を取り、二人の先を歩き出す。その後を二人は当然のように付いていく・・・
・・・それから比古清十郎達は峠の半ば、一番険しく高い場所に差し掛かる。
「・・・うっ」
「イオン様!?」
「・・・どうした」
そこでイオンは突然力ない声を漏らし両膝を地面に崩し落とし、アニスが側に駆け寄り比古清十郎は後ろを振り返り声をかける。
「なんでもありません、ちょっと疲れて・・・」
「なんでもないように見えませんよぅ、イオン様ぁ!・・・もしかしてまたイオン様、ダアト式譜術を使ったんですか?」
「・・・確かに僕はザオ遺跡でアッシュ達に使わされました。ですがあの時から少し時間も経ってますし、大丈夫だと思ったんですが・・・」
「・・・何?」
その声に大丈夫だと返すが明らかに青いその顔色にアニスが慌てふためくが、聞き捨てならない事を聞き比古清十郎の眉がピクリと上がる。
「・・・今お前はダアト式譜術を使ったと言ったが、聞いた所導師に連なる者辺りにしか使えん術だろう。それはお前はおろか歴代導師の命を蝕んだような禁忌の術と言うのか?」
「いえ、どうやら僕はダアト式譜術を使うように体が出来ていないらしく・・・一回使うとこうなってしまうんです・・・すみません」
そこから比古清十郎は探るような質問を投げ掛け、イオンはキツそうにしながらも律儀に答えつつ頭を下げる。
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