時代と焔の守り手は龍の剣 第九話

・・・ノワール達はホド崩落から自分達が歩む道を決め、その指針の上を進むように生きてきた。それが自身らが義賊だと宣っても、周りからすればただの盗賊崩れと言われようとも。だが周りの目など、ノワール達には関係なかった。それが世界に対してのせめてもの反抗心を見せるものだと信じていたから。

そんな迷いを見せずに活動するホドの民であった自身らに対し、ホドの領主に近いだろう位置にいたことが予測されるガイのどっちつかずの行動は、聞けば聞く程ノワール達にとってやり場のない感情を覚えさせていた。‘自分達は道を選んだ、なのに何故領主に関係するだろうあの男は半端なまま過ごしているのか’、と。

・・・自分達と直接関係はしなくとも滅び行く大地から同じように脱出した身、少なからず同情をガイにノワールは感じていた。だがその同情がガイの行動を批判しきれない原因を作っていた。



「・・・まぁ今度会って時期が来たなら、奴の真意は聞いておいてやろう。俺としても奴がキムラスカとマルクトの戦争の引き金を引くか否か、見定めねばならんからな」
「・・・すまないね、センセイ」
そんな葛藤を理解した比古清十郎は余計な言葉を挟まず自身も聞きたかったことがあるからと言い、ノワールは目を伏せ礼を言う。
「・・・そろそろ導師も阿呆姫と話を終えこっちに来る頃だ。お前は暗闇の夢ではなく、漆黒の翼としてもう覚えられているのだろう。厄介な事になる前にもう行け」
「・・・あぁ、行かせてもらうよ。じゃあね、武運を祈るよセンセイ」
そこから比古清十郎は視線を背けながらさっさと行くように言い、ノワールは乾いた笑いを浮かべ場から去っていく。
「・・・フン、そんなものが味方をしなくても俺はやるべきことをやるだけだ・・・まぁ、気持ちだけはもらっておこう・・・では、行くか」
・・・その後ろ姿を見ながら満足そうに微笑を浮かべる比古清十郎は独り言を口にすると、船の方へと歩き出す・・・













・・・そして比古清十郎が船に乗りこんだ後イオン達も船に乗り込み、その船はカイツールの港へと出港した。



「・・・何の用だ?」
船室のベッドで目を閉じ静かに腰掛けていた比古清十郎、そこに扉を開けて入ってきたイオン一人の姿を見てゆっくり目を開ける。
「・・・ナタリアとお話をしてきました。インゴベルト陛下にお手紙を出したそうなのですが、まだ返事がないらしく・・・」
「だろうな、返事が来るにはあまりにも時間が早すぎる」
(まぁ何を言ってもインゴベルトは阿呆姫の望む返事など返しはしないだろうがな)
まずはとイオンがナタリアの望むような展開にはなってないことを暗い面持ちで告げるが、内心同様冷たい声色で比古清十郎は一蹴する。
「許可が出たらすぐさまアクゼリュスに向かうと言っていましたが、その時にはもう救援が完了している可能性もあります。だからその時は僕が貴女の分もちゃんとアクゼリュス救援を見届けるとお話してきました」
「・・・で、何故それを俺に話す?重ね重ね言うが、俺には何の関係もないことだ。アクゼリュス救援の事などな」
「え、えっと・・・それは・・・一応お話は通しておこうと思いまして、貴方のお話でナタリアはケセドニアに残った訳ですし・・・」
「フン・・・」
そんな冷たさを知らずにイオンは後の会話を伝えるが、比古清十郎は別に必要ないと言う。その返答にイオンはしどろもどろになるが、比古清十郎は大して気にせず鼻を鳴らす。







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