時代と焔の守り手は龍の剣 第九話

「それよりマルクトの協力が確約されたってこと、センセイは確信してたのかい?やけに落ち着いてたけど」
「当然だろう、マルクトに提供したものは無視をすれば少なからずマルクトに大打撃を与える物だ。もしものことを考えれば放置は出来ん代物、安心を買う為には俺に協力をしておいた方がいいと考えるのは当然だ。万が一協力しないとなっていたならお前もこの場には来ていなかっただろうからな、姿を見た時点でそれはないと確信していたがな」
「はぁ・・・かなわないね、センセイには・・・」
その姿にノワールは質問の矛先をマルクトの協力が成された事に向けるが、至って自信満々にキメポーズで返され呆れ顔で参る。
「・・・あ・・・それとこれは個人的に気になった事なんだけど・・・聞いていいかい?」
「なんだ?」
するとふとノワールは何かを気まずそうに思い出したような所作を見せ、比古清十郎に質問の許可を取る。
「・・・確かあのルークの引き連れてた従者、ガイって言ったかい?センセイの話を聞くと、あれはガルディオスか近しい者の生き残りって話じゃないか」
「そうだと確信している・・・ガルディオスと聞いて何か情でもわいたか、あの半端者に?」
「いやぁ、そうじゃないさ。ただ聞きたいのさ、アンタは何を持ってこれから行動するのかとね・・・」
その質問の中身はガイに関して。そう聞き比古清十郎は遠慮なく冷たい声色でガイに何かあるのかと聞き返すが、ノワールは遠くを見るような目で寂しそうに返していく。
「ホドやガルディオスの事を大義に思ってか単なる復讐心か知らないけど、ガイがファブレに復讐をしようとしてきたのは分かるさ。けどそれで復讐してハイそれで遺恨は全部清算した、なんて展開にはならないだろう?」
「・・・むしろ血みどろのどろどろとした争い以外見当がつかんな」
ノワールの言わんとしている事、それがどれだけの想いがこもっているのか。それが伝わってくるだけに、比古清十郎は自身の経験から復讐はより大きな復讐の念を生むだけだとノワールに同意を返す。
「まぁ百歩譲って復讐するのはいいさ、それ以外に気持ちに整理がつけられないならね。けどセンセイから話を聞いてから考えたんだよ・・・そうやって復讐を遂げずに長い間バチカルにいるくらいなら、なんでマルクトに戻らなかったのかってね・・・」
「・・・」
そこから本題とも言えるノワールの寂しさの見える顔からの本音が出てきた事に、比古清十郎は口を閉じ黙って話を聞く。
「ホドの崩落から十何年もの時間があるならいくらでも行動のしようがあっただろうさ、復讐するにしてもなんにしてもそれに付随しての物を考えるだけの時間もあったと思うんだよ・・・それで十何年もの時間をかけて取った行動がただ現状維持・・・正直さ、何がしたいのかわからなすぎて妙な気持ちなんだよ。ファブレで奉仕の心に目覚めるのもありだとは思うさ、けど話を聞けばセンセイの言った通り従者としては半端者以外何者でもない態度を取ってるってんだろ?・・・なんなのさとしか思えないんだよね、マルクトの為にもキムラスカの為にもなりきれてない・・・あたしらだって公に広い顔出来るような事やってる訳じゃないけど、それでも自分達が選んだ道だから漆黒の翼の活動が出来る。けど・・・」
「・・・何がしたいのか全く見えない、だからどのような行動をしているのか知りたい、と言いたいのだな?」
「あぁ、そうさ・・・」
ガイに対しての溢れる疑念を受け比古清十郎は言葉を途中で引き継ぐよう受け止め、ノワールは苦々しいのか疲れたのか判断がつきにくい顔でその声を肯定する。









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