時代と焔の守り手は龍の剣 第八話

・・・その後、ルーク達と別れ比古清十郎はアニスを連れザオ遺跡まで行った。



「・・・ここか。辺りにはタルタロスの姿は無いようだが・・・まぁいい、行くぞ。この中に神託の盾がいればいいとでも祈っておけ、もしかしたら行き違いになってるかもしれんからな」
「はい・・・」
砂に埋もれた遺跡の入口を発見はしたものの、辺りにタルタロスの姿がない。その様子に冷静に勤めつつもいなかった場合の反論を認めない口振りでアニスに首を縦に振らせ、さっさと前を歩き出す。









・・・過去の文明が如何様な物であったのか、所々崩れ落ちてはいるがその姿を保っている遺跡の中を歩く比古清十郎達。
(・・・ソーサラーリングの力がここで増したのは、嬉しい誤算と言った所か。まぁこれで障害物の排除にいらん力は割かんで済むようになった、わざわざコイツを受け入れた甲斐があるという物だ)
そんな中で比古清十郎は足元をピョンピョン飛び跳ねて付いてくるミュウの、新たな力を音素の塊からソーサラーリングに宿して先程体当たりで岩を砕いた時の姿を思い出す。



・・・ソーサラーリングにはまだ秘められた先がある、比古清十郎はその有用性を初めから知っていた。だからこそ後々の為に比古清十郎はチーグルの森に行って一匹程チーグルをソーサラーリングとともに借り受けようと考えていた訳だが、セカンのおかげでその2つが勝手に近付いてきた。故に比古清十郎はミュウを受け入れたのだ・・・ただ忠義心はともかくとしても、その声はあまり比古清十郎の気に入る物ではないのは確かである。






・・・そんなミュウの力で道々の障害物をぶち壊しながら進んでいき、比古清十郎達はザオ遺跡の奥へと辿り着く。
「・・・導師を囲むよう3人、か」
「アッシュにシンクにラルゴ、かぁ・・・どうしよう、イオン様があそこにいるのにぃ~・・・」
更に奥へと続く扉の前に六神将が3人とイオンが1人、その姿にアニスはブリブリした口調で弱ってないように聞こえる弱音を吐く。すると、比古清十郎は躊躇いを見せずスタスタと歩き出す。
「・・・余計な手出しはするな、巻き込まれたくなければな」
「えっ・・・!?」
その背を見ていたアニスは更に続いた明らかに不穏さを増した比古清十郎の声に、一気に背筋を凍らせ震え上がる。
(元はと言えばお前の不始末からこのような事態に発展しただろうが、このクソガキが・・・!)
その戸惑いを背に受けながらも、比古清十郎はありったけのイラつきを心の中でぶちまける。



・・・自分の責任を軽い物、そして人に尻拭いをさせることを当然の物と考えてルーク達に付いてきたアニス。そして今この場に来て六神将の3人を見ても尚、態度を改めようともしていない・・・それらの鬱憤が溜まりたまった比古清十郎はアニスに手伝ってもらう気など毛頭なかった、目の前の六神将3人を片付ける作業を。



「・・・ん?なんだい、アンタは?って、後ろにいるのはアニスじゃないか」
「導師を追ってきたか・・・しかしどうやってここに来た?」
「あの屑がいない・・・ハッ、怖じ気づきやがったか!」
「カクノシンさん!」
その比古清十郎が近付いてきた事に気づいたシンクを筆頭に、ラルゴはここに来た訳をいぶかしみ、アッシュはルークがいないことを嘲り、イオンは比古清十郎の名を叫び、それぞれ反応を見せる。
「アンタが誰かは知らないけど、随分ご苦労な事だね。わざわざこんな地下にまでアニスの為に来て、殺されるんだからさ」
「・・・言いたい事はそれだけか?」
「・・・何?」
その中でシンクが比古清十郎を馬鹿にするような言葉を投げ掛けるが、声を荒げず返す。その声にラルゴが眉を寄せるが、比古清十郎は構わず刀を抜く。



「これから死ぬ奴に一々付き合う気などない」









10/15ページ
スキ