時代と焔の守り手は龍の剣 第八話

・・・人という物は責任を取ると言う物を総じて嫌う、それが道理のあるものであろうともなかろうとも。その論理は人の集まる大きな国になれば、なおのこと明確になる。何故国が責任を取るのを嫌がるのかと言えば、その国の大きさに比例して取るべき責任の大きさもでかくなるからだ。

そんな責任は出来る限りは避けたい、故に手っ取り早く責任逃れの為に誰かにその擦り付けを国は狙いやすい。そう思うが故に相手にキムラスカはマルクトに責任を押し付けたく、マルクトはそれを是非とも拒絶したい・・・そんな行動を繰り返す内にきっかけは些細な物でも火種は徐々に拡大し、どこかでどちらかが折れなければもう戦争は止められない流れになる。その時はきっかけを作ったナタリアの言葉1つでは止められない程に。

・・・元々敵同士と知り、その緊迫した様子と言うものは言葉にしているのにナタリアは自身の行動がどのような意味か。それを中途半端に都合のいいようにしか理解してないだけに、面倒極まりなかった。平和を望んでおきながら、戦争の引き金に十分なり得る行動を取っているだけに。



「・・・それで尚、ナタリア殿下はまだアクゼリュスに向かうと言うのですか?殿下がインゴベルト陛下の勅命を賜っていない以上、このまま我々に付いていけば我々にもいらぬ嫌疑がかけられます。それらを踏まえてもまだ我々と行きたいと言うのであれば、まずはインゴベルト陛下のれっきとした勅命を賜ってから来てください・・・ただ、勅命を取ろうともせずこのまま我々に付いてくるのはやめてくださいね。今言ったような事態になることを選ぶのであれば、貴女は国の摩擦を選ぶ愚か者と言う事になりますから」
「・・・っ!・・・わかりました、お父様の許可を取りましたら私もそちらに向かいます・・・」
そして更に続けた盛大な皮肉混じりのジェイドの遠回しな制止に、ナタリアもようやく事の重大さくらいは理解したようで苦々しそうに許可を取ってからくると言い出す。
(・・・それでも自分が行くと言うのを譲らん辺り、本気で自分の行動を省みる気があるとは到底見えんな・・・)
だがそれはあくまでも事の重大さだけの事で、自身の行動を本当に省みれてはいない。比古清十郎はそう感じていた。
(まぁいい、とりあえずはこれ以上は厄介な事もないだろう・・・)
だがそれでもこれ以上阿呆を連れていきイライラすることも避けられる、そう思った比古清十郎は少しだけ内心でホッとする。
「・・・そうですか、ではケセドニアまではご一緒しましょう。今から我々がバチカルに戻れば大幅な時間のロスになりますし、かといってこの過酷な環境で一人バチカルに帰っていただいては却って危険な物となります。それからは船に乗ってバチカルにお戻りになるか、ケセドニアにて陛下の勅命が降りるまでお待ちください。そしてそれからマルクトにいらしてください、その時は我々は歓迎致します」
「・・・はい」
そして一件落着したからなのかジェイドは先程のキツイ言葉から一転、笑顔を見せながら勅命を取ってから来てほしいと言いナタリアも力なく一言で返す。だがその言葉の中に許可を取るまでは絶対に来るなと含められたのにも気づかない辺り、ジェイドのさりげない配慮があると言えるだろう。
(まぁインゴベルトはこの阿呆には勅命など出しはしないだろうがな)
そして比古清十郎は確信している、絶対にインゴベルトが勅命をナタリアに対して出さないだろうと言う事を・・・ある理由で。








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