時代と焔の守り手は龍の剣 第八話

「・・・それは本当なのか?」
「えぇまぁ・・・私はお止めしたんですけどね・・・」
「まぁ!かつての宿敵と手を結ぶという時に王女である私が協力するのは当然の事でしょう!」
「だから誰も頼んだ覚えはねーっつーの・・・」
その言葉を信じたくないと改めて確認を取る比古清十郎の声にジェイドが気まずそうに目を反らしながら答えるが、ナタリアは止めた事を批難しながら自身満々に答えルークは静かに愚痴るよう勝手にやってきたことだろうと呟く。
「・・・すまんが何故王女もだが、お前達がこのような場所にいるのか・・・初めから説明してくれないか?」
「・・・えぇ、わかりました・・・」
・・・ルークやジェイドの二人も何か事情があった、そう感じた比古清十郎はこうなった経緯を聞くことを滅多にない丁寧な口調で述べる。その声にジェイドはゆっくりと疲れた声でその経緯を話し出す・・・












・・・ジェイドの話によればこうだ。キムラスカとマルクト間で和平を締結するため現在障気により壊滅しかけているアクゼリュスを救う為、ルークを親善大使としてアクゼリュスを救いに行くことになった。

だがそう決まったはいいもののバチカルの海上に浮かぶ神託の盾の船のせいで船でケセドニアに行く事が出来ず、やむ無くヴァンを囮として船に乗せケセドニアに向かわせその間にルーク達が徒歩でケセドニアに向かう事になったのだが・・・そこで話をややこしくしたのが王女であるナタリア、である。

・・・あろうことかナタリアは別にルークにも王にも頼まれてもいないのに、勝手に付いてきたと言うのだ。それも全くルーク達どころか、ティア達にすら迷惑がられるよう歓迎されない形で。それで全員早く帰れという雰囲気でいたのだがナタリアが何やらルークの秘密を知ってそうな言葉を引き合いに出して、ルークの許可を強引に得て一同に付いていく形になったということだが・・・



「・・・それで今に至る訳です」
(阿呆がいる・・・それも加減を知らん底無しの阿呆が・・・)
ジェイドの話を聞き終わり比古清十郎は真性の阿呆を目撃し、眉間にシワを寄せ下を向き目をつぶりナタリアから視線を反らす・・・自身満々に胸を張るナタリアを見ていたら確実に阿呆、と言いたくなる気持ちを抑えるために。



・・・誰にも望まれない、頼まれていない。そんな事実を一切合切無視し、ただ自分の考えだけを尊重し力技で押しきった。しかもそうやったことを全く悪かったと微塵も思っていない、むしろ自分をアクゼリュスに派遣した王の判断や自分を連れていこうとしなかったルーク達の判断が間違っていたとすら思っている・・・そんな節すらある故に、比古清十郎はただ底抜けの阿呆だと感じていた。



(・・・この様子では遅かれ早かれキムラスカからこの阿呆を連れ戻しにかかる手が来るか・・・?・・・いや、このままこの阿呆を放置する可能性もないことはないか・・・まぁいずれにしてもとりあえずこの阿呆を説得するだけしてみるか、理解するかなどわからんがな・・・)
だがいくら阿呆とは言えこれでもキムラスカの王女である。後にどうなるかはわからないにしても、今必要なのは・・・ナタリアと無駄だろうが、話を交わす事。比古清十郎は顔を上げつつ、阿呆と言わないよう心掛けながら口を開く。








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