焔と渦巻く忍法帖 第十話

ケセドニアからバチカル直行船に乗ったルーク達。ルーク達は今その船から降りて、バチカルの地に再び降り立っていた。ここで再びという表現なのは、ルークとナルトからすればよく抜け出していた場所なのでこの風景は見慣れているからだ。



港の埠頭からルーク達が歩いて行くと、港の入口に中年男性の軍人と金髪のリグレットと似た雰囲気の女軍人が立っていた。
「ルーク様ですね。お初にお目にかかります、キムラスカ・ランバルディア王国軍第一師団師団長のゴールドバーグです。この度は無事のご帰国おめでとうございます」
「ごくろう」
ゴールドバーグの態度に貴族として答えるルーク。だが内心ではルークはすごく浮かれまくっていた。
(やっぱ軍人ってこうあるべきだよな~)
アルマンダインの時もそうだったが、ゴールドバーグの態度もこれが正しいのだと確認させてくれる。もしこれが修頭胸や眼鏡狸だったならルークの返事に「態度が悪い」「いやぁ、どんな育ち方をしてきたんでしょうねぇ」と言ってくるのが、簡単に想像できる。
(いくら『わがまま坊っちゃん』だからって貴族は一応国の宝だぜ?名の知れた貴族なら尚更な)
貴族は国の代表なんだから立場を考えて発言しろよ。ルークがそんな事を思っていると、眼鏡狸が自分の名を名乗った瞬間、ゴールドバーグと女性軍人のセシル少将が驚愕の表情になった。
「貴公があのジェイド・カーティス・・・!」
セシル少将が何か畏怖の念を持った口調で眼鏡狸をじっくりと見ている。
「ケセドニア北部の戦いではセシル将軍に痛い思いをさせられました」
その一言で過去に戦った事があるのだとルーク達は知る。しかしそれと同時に、眼鏡狸の配慮の無さにまたルーク達は辟易とした。
「ご冗談を・・・私の軍はほぼ壊滅でした」
紛れもなく事実を話しているのだろう、苦い顔になりながら眼鏡狸の言葉に答えるセシル少将。そこでルークはあまりの無神経さに、口を挟んだ。
「なぁ、おっさん。あんた本当に和平結ぶ気あるのか?」
「おやおや、いきなり何を言い出すのですか?そうでなければここまで来ていませんよ」
まぁこうくるだろうと予想していたルーク。明らかに自分を舐め腐っている口調につっこみを入れるのは後に置いて、ルークは話を続けた。
「今までの敵対国を友好国に変えるのが和平だろ?あんたからすれば叔父上に書簡を渡せば成功なんだろうが、和平を結べば上だけじゃなく下とも繋がりが出来るんだぜ?そんなときに過去をほじくりかえしてセシル少将の苦い記憶を思い出させてんじゃねぇよ。明らかにセシル少将は気分を害してんぞ。下手すると遺恨の元だぞ?まぁ少将は我慢するだろうが、ここは港だ。周りの人達からすれば、マルクト軍人がキムラスカ軍人を下に見たって見られてもおかしくねぇんだぞ。それに今までの事を水に流そうっていうはずなのになんで過去の争いを引き合いに出した話をすんだよ」
馬鹿かおっさん。ストレートど真ん中に豪速球でわかりやすく、そう含みを入れた言葉を投げるルーク。
「ルーク!あなた、言い過ぎよ!」
「あぁ?これはキムラスカの沽券に関わるし、それに何よりセシル少将が気分を害してんだぜ?セシル少将がこんな風に不快な思いをしてるから謝れって説明してるだけだよ。言い過ぎって言うなら、それを考えてないおっさんに言えよ。それともセシル少将は気分悪くしたままいろってのか?」
「そ、それは・・・」
無意味な反論に出てきた修頭胸を一蹴し、またルークは眼鏡狸と向き直る。
「どうなんだ、おっさん」
さぁ、とどんな態度をとってくれるんだとルークは待つ体勢に入った。
「・・・申し訳ありませんでした、セシル少将。場もわきまえずあなたの事を顧みない発言をしたことを丁重にお詫びします」
さすがにここまで言われたなら自分の拙い行動に気付いたのか、それとも謝らなければいけない雰囲気になってしまっていると察したのか、眼鏡狸は頭を深く下げて詫びの言葉を放つ。
「よかったな、セシル少将。これで和平もうまくいくぜ?和平の使者はある程度礼節をわきまえてないといけないからな。あんたのおかげでそれは証明出来たんだから」
ニッと向けられた笑顔から、セシル少将は快挙に成功した子供という印象を受けていた。




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