焔と渦巻く忍法帖 第九話

船もケセドニアに着き、ルーク達はキムラスカ側の方へと向かっている。するといきなり老け髭が足を止めた。
「・・・私はここで失礼する。アッシュの事をダアトに報告しなければならないのでな」
アッシュの事は老け髭の範疇外の出来事とは言え、ルークにあそこまで言われたのだから責任というものが否応なくある事に気付かされたのだろう。やけに神妙な顔をして老け髭が別行動をとると言い出した。
「それが終わったら師匠はバチカルに来るのか?」
「あぁ、そのつもりだ」
それを聞いて、ルークはホッと安心する。
(よかった~、老け髭と一緒にいる時間なんてめんどくせぇからな~)
「じゃあ師匠、また後で」
表面上笑顔でそういうと、ルークはさっさとその場から離れていった。



「・・・ルークはどうしたというのだ、ガイ」
「いや、俺にも・・・」
ルークが離れていった後、最近のルークは変わったという含みを持った質問をフェミ男スパッツに投げ掛ける老け髭。フェミ男スパッツも訳が分からないと眉をひそめている。
「ルークはルークだってばよ。そうじゃないのかってば?」
そこにナルトが二人に問掛ける。
「少なくても俺から見ればルークは出会った時からずっとルークだってばよ」
「・・・どういう意味だ?」
「ルークは変わってない、そういう事だってばよ」
それだけ言うとナルトはさっさとルークの方へと走っていった。




「あらん、この辺りには似つかわしくない品のいいお方♪」
ナルトがルークを見つけると、ルークは桃色の髪の女性に絡まれていた。あえてここで絡まれていたという表現なのは・・・
(手つき怪しすぎ、素人以外ならすぐスリって気付くってばよ)
必要以上に体を寄せて、色仕掛けの最中に懐に手を忍ばせる。ナルトがそれに気付かない訳がない。確に女という武器を利用するのは有効手段ではあるが、相手が悪すぎる。
「それはどーも」
ナルトが簡単に気付くものに、ルークが気付くのは当然。ルークは女性の手を動かないように掴み、顔を接触直前まで近付け更に小声で一言放った。
「運がいいな、アンタ。今は機嫌がいいから俺にやろうとしていたことは見逃してやるよ」
ニヤッと笑い、ルークはその手を放して街の中心へと歩いていった。言われた女性は呆然とルークの後ろ姿を見ることしか出来ずに、たたずんでしまった。
「ねーちゃん、今の事はさっさと忘れた方がいいってばよ」
ポンと背中を叩いて、ナルトはまたルークの後を追っていった。
「な、なんなのさ一体・・・」
女性の呟きは得体のしれないものを見てしまったかのような、不安に満ちていた。



「ルーク、あれはやりすぎじゃないかってば?」
「あれでも優しい方だろ。滅茶苦茶にしてねぇんだから」
優しいというより、気まぐれなだけ。ナルト側の世界でならいざ知らず、こちらでまでルークは小犯罪を裁く気はない。
「つってもあのねーちゃん、ルークの顔見て恐怖してたってばよ」
「あー?あんなに紳士に笑ったのに?」
「笑顔ひとつで人を恐怖させるなんてどういう才能だってばよ」
「人の事は言えねぇだろ?ナ・ル・ト?」
クックッと笑い、傍らのナルトの肩に顔を乗せるかのように近付ける。
「それに今更俺らの目的には関係ねぇだろ、あんなこと」
「まぁ、そうだってばね。俺達がやることは今バチカルにいる馬鹿の大元を叩き潰す事だってば」
「そういうこと。それに俺、さっきも言ったけど紳士だし~?」
「紳士なら紳士らしく修頭胸達に優しく振る舞ってやれってばよ」
その言葉にルークは楽しげに言い放つ。
「紳士と接するに値するのは淑女であるべき、そう思わねぇか?」
その言葉にナルトはプッと軽く噴き出す。
「成程、それならあの態度は間違いじゃないってば」
愉快そうに、それでいて淑女たるにふさわしくないと納得してナルトは笑った。



光の王都への凱旋は近い、彼らはどこまで壊せるのだろうか?



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