焔と渦巻く忍法帖 第九話

「ルーク、お前は自分が誘拐されて七年間も軟禁されたことを疑問に思ったことはないか?」
「それは・・・」
(超振動欲しさにオリジナルをさらうような犯罪者に諭されるか、ボケ老人)
戸惑いの表情とは真逆に、心中荒れまくっているルーク。しかし老け髭はルークの内心に気付かず、尚も話を真面目に続ける。
「今こそその理由を教えよう、ルーク。それは世界でただ一人単独で超振動を起こせるお前をキムラスカで飼い殺しにするためだ」
「えっ・・・!?」
「お前はその力を持っているがために今まで国に軟禁されていたのだ。超振動は使い方次第で戦争に多大な影響をもたらし、戦況を変える事が出来る。お前のその力の為にマルクトはお前を欲したのだ」
「そんな・・・」
「このまま行けばお前はナタリア王女と結婚する。しかしそれは軟禁場所が城に変わるだけだ。お前の父も国王も、それを望んでいる」
「・・・」
(おーおー、ま~た随分と大胆な馬鹿言ってんなー。あ、馬鹿は前からか)
ルークがそう思うのも無理はない。いくら事実を言ってるとは言え、これはれっきとした国の批判だ。
(何も知らない子供にしか通用しねぇぞ、この話)
もし、この話を分別ある人間に話せばキムラスカに悪意があると見られるだろう。キムラスカのやり方が正しいかどうかは別として、別国の品位を下げる事を現在進行形でその国の貴族で次期国王に教え込もうとしているのだから。
「お前もそれは嫌だろう、ルーク。そのような事態を回避するためにはまずは戦争を回避するのだ。そしてその功を内外に知らしめる。そうなれば平和を守った英雄としてお前の地位は確立される。少なくとも理不尽な軟禁からは解放されるだろう」
「英雄・・・ですか?」
「そうだ、自信を持てルーク。超振動という力がお前を英雄にしてくれる」
ポンと肩に手を置き、あの胡散臭い笑みを浮かべてくる。だがそんなことはお構い無しに、ルークはこれまでの会話の経緯を総合してある推測をたてていた。
「・・・師匠、ちょっと一人で考えていいですか?いきなりいろんなこと言われて何がなんだか・・・」
「・・・ああ、ゆっくりと気を落ち着ければいい」
不安げな顔で話すルークに、一瞬間を空け優しげに返す老け髭。それだけを言い残し、老け髭は階段の奥へとまた去って行った。



「・・・触ってんじゃねーよ、老け髭」
パッパッと嫌そうな顔で老け髭に触られた部分を埃のように払うルーク。
「でもまあこれでよかったんじゃないかってば?」
そこに外面に張り付いていたナルトが飛び上がってくる。
「まぁ、そうだな。おかげで計画もそろそろって確信を持てた事だし」
「国に不信感を持たせ、その分の自分への信頼を増やす。そして自分だけを信じる事しかないように仕向ける、洗脳の常套手段だってばよ」
「それに屋敷にいたときはあんな事全く言って来なかったしな。いきなりこのタイミングかっ、って感じだったけど」
「その不自然過ぎる事がそれをまた裏付けてるってばよ」
今までなかった事を唐突に行ってきたことがルーク達のとっかかりになった。



‘ボォー’
「ん?着いたな」
話し合いもそこそこにしていると、汽笛の音がなり響いてきた。
「なーんかやる気でてきたな。もう少しで完全に移住出来るって思うと」
「気楽にやるってばよ」
二人は見えつつある終演を楽しみにしつつ、船がケセドニアに接岸するのを心待にしていた。




9/11ページ
スキ