焔と渦巻く忍法帖 第九話

「あー、やっぱり千鳥実戦向きじゃねぇな。写輪眼もち専用の技って感じで」
「それは別にいいってばよ。俺達はどうせ実戦では使わないんだし。それにうさばらしには丁度よかったってば」
「そうだな」
二人がサフィールに言ったように、撤退の訳作りの為という理由が装置破壊の本当の理由である。それのついでとして、二人はせっかく会得した千鳥を試す機会がなかった為、装置でついでに試したのだ。



「ま、煙デコが俺の同調フォンスロットを開こうとしてたのは逆に感謝してやろうかな。シンク達と接触するきっかけを作ってくれたって事で」
「って言っても愚行を重ねに重ねた上で、更なる愚行の上で行った出来事から起こってるから感謝って言うには少し程遠い事をやってるってばよ」
「ここまで来れば馬鹿さ加減に感謝って意味でいいんだよ。少しでも賢けりゃんな事しようともしねぇだろうし」
「あぁ、そういう事だってば。・・・カイツールが見えたってばよ」
「今日はもう休もうぜ、めんどくせぇあいつらの顔なんて忘れてよ」
「そうするってばよ」
カイツールを視界に納めた二人は走るスピードを緩め、徒歩へとシフトチェンジしてカイツールへと向かっていった。



二人はその後カイツール入りし、宿で一夜を過ごした。余談ではあるが、その一夜は同行者及び老け髭と煙デコへの罵詈雑言の時間に費やされていた。
一夜明けた今、二人は港から船が直ったと報告を受けて港へと向かっていた。
「あーまたあいつらと行かなきゃいけねぇな~、めんどくせぇ」
「久しぶりに息抜きしたから我慢するってばよ」
「わかってんだけどめんどくせぇ事に変わりはねぇから余計にきついんだよ」
歩きながら後頭部をガシガシとかくルーク。ナルトもそれはわからないではないので、ポンとルークの肩を叩いて「行くってばよ」と優しくさとした。



そんなルーク達が港にたどり着くと、同行者と老け髭とどこか高貴そうな中年男性が入口で待ち受けていた。
「これはこれはルーク様」
いきなりの男性の友好的な態度、本来ならこの態度が当然であるという常識を久しぶりに見たルーク達は少し嬉しくなっていた。
(そうそう、これだよこれ!立場が上の人間に対しては年下だろうと敬語!)
今は自分が『ルーク・フォン・ファブレ』、紛れもなく重要地位にいる人間だ。同行者は全くその事を考慮せずに散々発言してきたため、自分の常識がおかしいのかと思う程だった。しかし目の前の中年男性のおかげで、間違っていないと確信出来た事が嬉しくてたまらなかった。
「・・・誰?」
だが自分はこの人物の名を知らない、素直にルークは名前を問う。
「覚えておられませんか?幼い頃一度バチカルのお屋敷でお目にかかりました、アルマンダインです」
「・・・覚えてねぇや」
嬉々として話すアルマンダインの顔に申し訳なさそうに返す。
(煙デコが屋敷にいる時に顔を見せただけか。なら俺が知らないのは当然だな)
一応自分に常識を再確認させてくれた人物に、嘘をつくのはしのびない。そう思いながらもルークは嘘をついた。
「そうだ、船は直ったって聞いたけど今から出発出来んの?」
「はい、準備は出来ていますのでいつでも」
「なら今から俺らが乗るから出発してくれ。お前らもそれでいいんだろ?」
「ええ、大丈夫です」
「わかりました」
イオンの了承も取れた事で、全員が船に向かう。しかしその中、ルークはある人物からの鋭い視線を感じていた。



「・・・老け髭が何か企んでるってばよ」
ナルトもその視線に気付き、ルークに近より小声で話しかける。
「一瞬じゃあるけど確実に視線向いてたよな俺に」
船へと向かっていく最中、ルークをチラッと確かに見てきたのを感じていた。
「何か仕掛けてくんな」
あの視線には明らかに悪意が感じ取れた。
「ま、何仕掛けてきても叩き潰せばいいだけだってばよ」
「ま、そうだな」
誰にも気付かれないよう小声で話し合いながらも、二人も船へと入っていった。




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