焔と渦巻く忍法帖 第九話
「あ、あなた達は何でシンクを簡単に受け入れるんですか!?」
もうシンクの意思は聞いて諦めたので、シンクを受け入れる事を決めた二人にまた理由を聞いてきた。
「別に嫌いじゃないし」
「眼鏡狸達が来るって言うなら断ってたってばよ」
また簡潔にまとめた一言、二人に嘘という感じが全く見えないだけ、余計にわかりやすい。だが、ディストにはまた気になる何度目かの単語が出てきていた。
「・・・ちょっと待って下さい、あなた達の言う眼鏡狸って誰ですか?」
「ジェイドだよ。ジェイド・カーティス。マルクト軍第三師団長の大佐」
やっぱり、予想は当たっていた。
「ん?何かあったのかってば?」
「正気ですか・・・あなた達、あのジェイド相手に・・・」
「散々セントビナーで眼鏡狸を性悪って言ったヤツの台詞じゃねぇぞ、それ」
まさか自分以外にそんなだいそれた事を言うような存在がいたのかと、逆に恐怖に陥っていた。
「あんなの眼鏡狸で充分だってばよ。馬鹿だし」
「回りにいる奴らも馬鹿だし、丁度いいだろ、あだ名」
かつての幼馴染みはここまで言われる様な男だったのか?死霊使いと呼ばれるマルクト皇帝の懐刀の筈だ。まず間違っても馬鹿とは呼ばれる筈はない、また疑問がディストに浮かんだ。
「・・・聞かせていただけませんか?何故あなた方がそこまでジェイド達をそこまで嫌うのかを」
「あ?いいぜ」
ルークはディストの質問に答えるべく、眼鏡狸達の行動説明を始めた。
「・・・っつー訳だよ。ん?どうした?」
説明を聞き終わると、ディストはプルプルと体を震わせて、うつ向く。
「随分といい身分じゃないか。そいつら」
そこに元々敵であったシンクが呆れ口調で呟く。
「・・・それは嘘ではないんですね」
「俺達は必要じゃない嘘はつかないってばよ。もっともこんな話に嘘をつく必要もないってば」
うつ向きながらも聞いてきた声色は暗い、ナルトは疑問をはっきりさせるためにスッパリと答える。
(・・・ジェイド、あなたは変わってしまったんですね・・・)
自らの目的の為にダアトに行った後、ジェイドには全く会っていなかった。目指す物が違う為、歩む道も違えた。しかしどのような扱いを受けようと、尊敬をしていたかつての幼馴染みを越えたいと思っていた気持ちに今も偽りはなかった。だが目の前の二人に嘘偽りない真実を告げられ、ディストは愕然とした。能力に溺れ、立場を理解せず、レプリカとは言え今は王族のルークに不敬を重ねる。
優遇されている立場での怠惰から生まれる傲りで、尊敬していたジェイドは変わってしまった。
(・・・私も変わらなければいけないんですかねぇ・・・)
これまでディストは常に誰かの背中を追い掛けていた。初めは自らの師、ゲルダ・ネビリム。次は幼馴染み、ジェイド。無自覚ながらも、ディストは前に目標を置いては進んできた。越える為、近付く為に。
レプリカ技術をディストが研究してきたのは事故で死んでしまった師のネビリムを復活させて、かつての仲間と共に楽しかった時間を取り戻したかったからだ。だがジェイドは変わってしまった。それがディストにはたまらなく衝撃でならなかった。
「あの楽しい時は戻らない・・・ですか・・・」
もう昔とは違う、そう気付いてしまった。
「・・・どうしたんだ?ディスト」
「・・・すみません、これから私達が会うときは私の事は本名のサフィールで呼んで下さい。あなた達と会うときはただのサフィールとして会いたいんです」
「・・・あぁ、わかった」
ディストの決意を感じとったルーク達は頷いて返す。ただ美しい思い出だけを胸に生きてきた。だが思い出は所詮、過去なのだと知ってしまった。はからずもルークとナルトの二人がジェイドの事を話してくれたことで、理想は所詮理想なんだと気付いた。いや、気付かせてくれたのだ。
(・・・私は過去にすがって、今を見ようとしていなかった・・・盲目でしたね、私は)
けれど気付いてしまった以上、もう目を背ける訳にはいかない。
(私はこの事を気付かせてくれたこの二人に協力します。それが私の止まっていた時を動かすきっかけになった二人への恩返しです。だからネビリム先生・・・見ていて下さい)
今を生きる自分がいつまでも過去を追い掛ける訳にはいかない。誰かの影を常に追い求め続けていたディストは先程死んだ。今は新たな決意に生きる、サフィール・ワイヨン・ネイスとしてこの場に立っていた。
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もうシンクの意思は聞いて諦めたので、シンクを受け入れる事を決めた二人にまた理由を聞いてきた。
「別に嫌いじゃないし」
「眼鏡狸達が来るって言うなら断ってたってばよ」
また簡潔にまとめた一言、二人に嘘という感じが全く見えないだけ、余計にわかりやすい。だが、ディストにはまた気になる何度目かの単語が出てきていた。
「・・・ちょっと待って下さい、あなた達の言う眼鏡狸って誰ですか?」
「ジェイドだよ。ジェイド・カーティス。マルクト軍第三師団長の大佐」
やっぱり、予想は当たっていた。
「ん?何かあったのかってば?」
「正気ですか・・・あなた達、あのジェイド相手に・・・」
「散々セントビナーで眼鏡狸を性悪って言ったヤツの台詞じゃねぇぞ、それ」
まさか自分以外にそんなだいそれた事を言うような存在がいたのかと、逆に恐怖に陥っていた。
「あんなの眼鏡狸で充分だってばよ。馬鹿だし」
「回りにいる奴らも馬鹿だし、丁度いいだろ、あだ名」
かつての幼馴染みはここまで言われる様な男だったのか?死霊使いと呼ばれるマルクト皇帝の懐刀の筈だ。まず間違っても馬鹿とは呼ばれる筈はない、また疑問がディストに浮かんだ。
「・・・聞かせていただけませんか?何故あなた方がそこまでジェイド達をそこまで嫌うのかを」
「あ?いいぜ」
ルークはディストの質問に答えるべく、眼鏡狸達の行動説明を始めた。
「・・・っつー訳だよ。ん?どうした?」
説明を聞き終わると、ディストはプルプルと体を震わせて、うつ向く。
「随分といい身分じゃないか。そいつら」
そこに元々敵であったシンクが呆れ口調で呟く。
「・・・それは嘘ではないんですね」
「俺達は必要じゃない嘘はつかないってばよ。もっともこんな話に嘘をつく必要もないってば」
うつ向きながらも聞いてきた声色は暗い、ナルトは疑問をはっきりさせるためにスッパリと答える。
(・・・ジェイド、あなたは変わってしまったんですね・・・)
自らの目的の為にダアトに行った後、ジェイドには全く会っていなかった。目指す物が違う為、歩む道も違えた。しかしどのような扱いを受けようと、尊敬をしていたかつての幼馴染みを越えたいと思っていた気持ちに今も偽りはなかった。だが目の前の二人に嘘偽りない真実を告げられ、ディストは愕然とした。能力に溺れ、立場を理解せず、レプリカとは言え今は王族のルークに不敬を重ねる。
優遇されている立場での怠惰から生まれる傲りで、尊敬していたジェイドは変わってしまった。
(・・・私も変わらなければいけないんですかねぇ・・・)
これまでディストは常に誰かの背中を追い掛けていた。初めは自らの師、ゲルダ・ネビリム。次は幼馴染み、ジェイド。無自覚ながらも、ディストは前に目標を置いては進んできた。越える為、近付く為に。
レプリカ技術をディストが研究してきたのは事故で死んでしまった師のネビリムを復活させて、かつての仲間と共に楽しかった時間を取り戻したかったからだ。だがジェイドは変わってしまった。それがディストにはたまらなく衝撃でならなかった。
「あの楽しい時は戻らない・・・ですか・・・」
もう昔とは違う、そう気付いてしまった。
「・・・どうしたんだ?ディスト」
「・・・すみません、これから私達が会うときは私の事は本名のサフィールで呼んで下さい。あなた達と会うときはただのサフィールとして会いたいんです」
「・・・あぁ、わかった」
ディストの決意を感じとったルーク達は頷いて返す。ただ美しい思い出だけを胸に生きてきた。だが思い出は所詮、過去なのだと知ってしまった。はからずもルークとナルトの二人がジェイドの事を話してくれたことで、理想は所詮理想なんだと気付いた。いや、気付かせてくれたのだ。
(・・・私は過去にすがって、今を見ようとしていなかった・・・盲目でしたね、私は)
けれど気付いてしまった以上、もう目を背ける訳にはいかない。
(私はこの事を気付かせてくれたこの二人に協力します。それが私の止まっていた時を動かすきっかけになった二人への恩返しです。だからネビリム先生・・・見ていて下さい)
今を生きる自分がいつまでも過去を追い掛ける訳にはいかない。誰かの影を常に追い求め続けていたディストは先程死んだ。今は新たな決意に生きる、サフィール・ワイヨン・ネイスとしてこの場に立っていた。
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