焔と渦巻く忍法帖 第九話

「ダアトを潰すって・・・本気なの!?」
「本気だってば。冗談でこんな下らない事は言わないってばよ」
「何でダアトを潰したいなんて思ったんですか!?」
やはり二人ともいきなりの爆弾発言は相当に衝撃を受けたらしく、何故という目で問掛けてくる。
「なぁ、二人とも。言ったよな、ナルトは異世界から来て俺はナルトの世界で過ごして来たって」
穏やかに、語りかける口調でルークが話す。
「向こうじゃ預言なんてねぇんだ。自らの頭で考え、自らの考えで動いて、自らの動きで未来を掴みとる。想像出来るか?預言のない生活ってヤツを」
「・・・想像出来ないです」
「だろ?んでナルトの世界でそんな生活してきた俺からすれば預言なんて下らねぇんだよ。言い方は悪いけど、さしずめ預言っていう台本渡されて、このとおり動けってダアトの手の上で踊ってる人形達って所だろ?この世界の人間達は」
いい得て妙、二人は自らの感想を図らずも互いに同調させていた。
「ダアトは預言通りにしろと腐る程言って来やがる。けど正直うざってぇんだよ、自分の意思を預言ごときで変えて掌返して『預言通りにすればいいだろう』って考えは。自らの意思で動く世界にしたい、しかし邪魔な預言を無くすにはどうすればいいのか?・・・その答えは預言を詠む大元、ダアトを潰す。これしかねぇだろ」
ルークの口調は話し終わるまで変わらず穏やかだった。しかし目は全く笑っておらず、いかに本気で話しているのかが分かる。
「事を進めるには二人の協力が必要なんだってば。協力してくれるってば?」
ニヤッと口元を歪ませ、確認を取るナルト。
「・・・もしここで協力するって言って、後で僕らがヴァンに知らせるって可能性は考えてないの?」
「大丈夫だろ?お前らなら。だってリグレットやラルゴみたいな忠誠心溢れる性格じゃねーし」
「でもまぁ老け髭なら忠誠心を持つ必要無いっていうなら分かるってばよ。それに知らせたなら知らせたで実力行使でダアトを潰すだけだってばよ。もう隠す必要が無くなるだけだし」
見透かされている、それに言っても気にしないと言っている。腹の探りあいにはもう意味がない、そうシンクは思ってしまった。
「・・・分かりました、私はあなた達に協力しましょう」
するとディストが眼鏡を抑えながら降伏宣言した。
「・・・僕もいいよ、あんた達に協力する」
敵わない、シンクもそう思いながら降参した。
「けど・・・協力するなら条件がひとつある」
だが圧倒的な強さを持つ二人に、シンクはあるひとつの思惑が芽生えていた。
「条件?何だってばよ?」



「全部終わったら僕も忍とやらになれるように鍛えろ。それが条件だ」



そのシンクの言葉にディストは目を見開いて驚く。しかし言われた二人は大して驚くでもなく、あっさりと返事を返す。
「「いいぜ(ってばよ)」」
「・・・え?いいの?」
「「うん」」
二人の即答に信じられないと言った感じで、シンクは彼らしくなく棘のない口調になってしまった。
「・・・ちょ、ちょっと!!シンク!!どういうつもりですか!?」
本日何度目かの動揺からの立ち直りから開口一番、シンクに理由を聞く。
「アンタに言う義理なんてないんだよ、死神」
「キィィィ!!死神ではありません!!薔薇です!!薔~薇!!」
「落ち着けってばよ、ディスト。シンク、ディストがうるさいから説明してやれってばよ」
「・・・わかったよ」
渋々ながら、話をしようとディストと向き合う。
「・・・僕はこの二人についていきたいと思ったから・・・以上だよ」



オリジナルのイオンの代わりにすらなれない、そう言われて捨てられた自分。その際老け髭に命を救われたが、もうこの世界に絶望の色しかシンクは見えていなかった。自分を捨てた世界が嫌いで嫌いで仕方がなかった。しかし、そんな風にしか見えていなかった視界に、二人が突然現れた。更には嫌いな世界とは別の世界から来たと言っている。疑いようのない証拠を目の辺りにし、シンクはその時無自覚に思った。『自分にもこの二人のようになれるか』と。話を聞けば聞く程に、形はどうであれ自分を持っている二人が内心で羨ましくなっていった。ふと老け髭の計画で世界への復讐を果たしたら自分はどうなるのだろう、自分はどうすればいいのだろう。そう思ってしまったシンクに不安がよぎった。
「僕の決めた事だよ。あんたには関係ないさ」
自ら決めた事、それは二人についていく。そうすればやりたい事も自らの目で見えてくる、シンクにはもう迷いはなかった。




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