焔と渦巻く忍法帖 第八話

その後朝になり、宿から出てきた影分身と交代した二人。老け髭から譲り受けた旅券を使い、無事に国境も越えて後は港へと一直線の道を歩いていた。



港を目視出来る程の位置にルーク達が近付いてきた時、一行の中央に位置していたナルトが先頭を歩いていたルークに近付いて話しかけた。
「ルークはバチカルに帰れる事は嬉しいってば?」
「ん?まぁな。もうこんな旅はこりごりだぜ」
「ふーん」
一先ず聞いた返事に納得したかのようにまた中央に戻っていったナルト。何でもないかのような会話を終えたところで一行は港へとたどり着いた。



(この臭いは・・・)
港に入った瞬間、ルークの鼻に臭ってきたもの。それは戦場ではかがざるをえないにおい、死臭。それに焦臭いにおいもあいまって明らかに争いが起こっていた事が分かる。
(・・・まさかとは思うけどなぁ・・・)
何か一大事が起こっていると感じたルークはある予感を胸に、港の方へと突然走り出した。それと同時にナルトもルークに続いて走り出した。同行者達はいきなりの二人の行動に戸惑って、ぎゃあぎゃあと何か騒いでいるだけだ。



「うわ・・・」
表情では屍がそこらじゅうに並んでいる状況に絶句する。しかし心中は港の埠頭の先でつったっている師匠もどきの後ろ姿を見て、また心で毒付いていた。
(こーの様子見るとまーたダアト・・・いや、老け髭の隠しきれていない宝物が暴走したな)
師匠もどきの後ろ姿があることで、大体の予想をつけるルーク。
「師匠!・・・どうしたんですか、これは・・・」
予想を確認するためにこの惨劇に戸惑いながら師匠に頼る顔を作って、ルークは老け髭に話かける。
「ルークか・・・アッシュが港を襲った・・・」
ルークの言葉に振り返りながら苦い顔をして状況を話す老け髭。
「アッシュって・・・師匠が追っかけてたんじゃないんですか?」
「いや、途中で見失ってしまった。だからルーク達より先に港へと向かったらアッシュが港を襲っていたんだ」
そう話す老け髭の顔にはいつもの嘘臭い表情はなく、静かな怒りがうっすらと雰囲気から漂っていた。
(老け髭はこれマジで怒ってんなー。飼い犬の暴走が余程気に食わなかったようだな)
滅多に崩さない嘘の優しさを纏った雰囲気が完璧に消え去っていることから、本当の怒りだと分かる。



「ヴァン!!これはどういうことなんですか!?」
するとようやく追い付いてきたイオンが状況確認の為に老け髭に話かける。
「導師イオン・・・申し訳ございません。アッシュが港を襲って来ました・・・港を襲ったアッシュは船を全て壊していき、更には船を整備出来る整備士を拐い、整備士を返して欲しければ導師イオンとルークの身柄を交換しろという条件を出してきました」
さらさらと流れてくる老け髭の言葉、その言葉を受けたルークは煙デコの有り得ない要求と行動に我慢することも忘れ、ただ単に本音を口走った。
「なぁ、イオン、師匠。アッシュ潰してくれよ」
「「「「「「はっ!?」」」」」」
いきなり出てきたルークの言葉に二人だけでなく、全員が目を丸くして驚く。
「だってそうだろ。他国の領土侵して、他国の兵を殺して、挙げ句の果てに自らの主と他国の貴族を人質と交換しようなんてふざけた思考の持ち主、和平の邪魔でしかねぇよ。それに国境でも言ったけどあいつ犯罪者だろ?マルクトとキムラスカの双国の兵をでこれだけ殺しといて今更犯罪者じゃねぇなんて言えるか?」
そう言われて、黙りこむ面々。その様子を見ながら尚もルークは続ける。
「それにダアトには責任問題って物が発生するだろ。いかなる理由があっても下のヤツが起こした犯罪をそいつ個人の意思だからって上が関与しないっていうのは無しだ。ダアトの軍服着てたんだから尚更だろ。それにキムラスカの被害を見てみろよ。人為的な被害もさることながら、船や建物まで破損してんだ。被害額も半端じゃねぇぞ」
辺りを見渡しながら、これだけの事をしてくれたんだと告げる。
「なぁ、ダアトに責任って文字はねぇの?あったらアッシュをどうにかしてくれよ、師匠、イオン」
余程煙デコのやった事が気にいらなかったのだろう、ほぼ素で話すルークの姿にナルトは老け髭とは違う静かな怒りを放っているのを感じていた。





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