焔と渦巻く忍法帖 第八話

「でもまあ、タルタロスのスパイって案外俺らの近くにいるんじゃねぇの?」
「薮から棒にどうした・・・って言いたいけど俺もそう思うってばよ」
宿屋に戻る道の途中、スパイの事をルークが突然切り出してきた。
「普通スパイって利用価値のあるやつを簡単に殺す訳ねぇもんな」
「かといって俺らの周りには尾行者の気配はないってばよ」
「フェミ男スパッツは除外せざるを得ないんだよなー。あいつはタルタロスから合流してきたんだし。つっても修頭胸はちげーんだよ。図らずもずっと一緒にいるから俺らが証人になってっし」
「眼鏡狸はまた可能性が低いってば。わざわざ味方を弱体化させるような手の込んだ芝居したなら主演男優賞もので逆に俺が誉めちぎってやるってばよ」
「つーことはやっぱアイツか」



「「アニス」」



期せずして声が揃った二人。
「エンゲーブで鳩を飛ばしていたけど、あれは六神将に送ってたんだろうな」
「考えてみればおかしかったってばよ。主であるはずのイオンが側にいるのに、誰に鳩を飛ばす必要があるってば?何かの報告の為ならイオンに遠慮せずに昼間堂々と鳩を飛ばすってばよ」
アニスがエンゲーブで鳩を飛ばす様子を見ていたが、何か目線を気にしながらこそこそと行動していたので『訳ありです』と公表しているような様子が丸分かりだった。
「どうする?問いつめるか?」
「大丈夫だってばよ。あんな様子じゃすぐに尻尾を出すってば」
「そうだな」
ナルトの一言でまあそうなるだろうなと思ったルークはその話をさっさと打ち切った。



その後宿に戻り、一泊したルーク達。夜も更け、朝日が昇り始める時間帯になったところでルークとナルトは一人の気配がベッドから離れて外に向かおうとしているのを感知していた。
(・・・昨日の今日だな)
気配が部屋から出ていくのを確認した二人はベッドから起き上がり、アイコンタクトを交した後各自の影分身をベッドに残して気配を追跡していった。



案の定気配の主はアニス、少しカイツールから離れてアニスが鳩を人目を気にしながらまたこそこそと放とうとしている場面をルーク達は目撃していた。
(もしかして国本にいる恋人へのラブレターだってば?)
(熱烈なアピールの相手は知る必要があるな、だって俺らライバルだし)
(確かにそうだってば)
そんな会話をルーク達が繰り広げていると、誰もいないと感じたアニスは鳩を空へと解き放ち、また人目を気にしながら宿屋の方に戻っていった。
(ラブレターは相手に渡る前に奪うってばよ)
(そうするか、浮気性な女は弱点を押さえておくに限る)
その一言でルーク達は隠れていた場所から一瞬で姿を消した。



「よ~しよし、いい子だってばよ」
姿を消した後、すぐに鳩に追い付いて鳩を捕まえたルーク達。するとルークは鳩の足元に結びつけてある手紙をすぐにほどき、その文書に目を通していった。
「どうだってば?」
「ビンゴ!!・・・『導師イオンとルークは現在カイツールの国境線に今はいます』。予想通りだな」
「やっぱりだってばよ」
するとルークは何かを思い出したかのようにおもむろにポケットをあさりだした。
「あー、あったあった」
ポケットからルークが取り出した物、それはセントビナーでアニスが残していった手紙だった。その手紙と鳩の足に結ばれた手紙を見比べ、ルークはナルトへと顔をゆっくり合わせて言葉を放った。
「・・・なぁ、ナルト。手紙をどうするかって選択肢がもうひとつ増えたぞ。5の『利用する』が追加したけどどうする?」
「なら5しかないってばよ!!」
ルークが手紙を見比べたのは筆跡からアニスが書いた物かの最終確認、それも確認し終えたルークはこれは利用する方が価値があると判断した。それをナルトは理解したため、ナルトはその答えに即答した。
「んじゃこの鳩は放すってばよ」
そう言うとナルトは鳩を放し、それと同時にナルトは影分身を作って飛び去った鳩の後を影分身へと追い掛けさせた。
「仕上げは影分身がやるってばよ」
自らの影分身を見てそう言い放つナルト。その顔には裏のありそうな悪い笑みを浮かべていた。




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