焔と渦巻く忍法帖 第八話

「師匠、早くアッシュを捕まえて来てくんねぇかな~」
(どうせオリジナル命の老け髭様は逃がしてしまったとかいって逃げそうだけどな)
老け髭のそそくさと逃げる背中を見て、白々しい期待の声をあげるルーク。別にルークは煙デコを捕まえて来てほしい訳ではない、ただ単にうさばらしとダアトの評価を下げる事と常識をつきつける場面の為にあのような事を言っただけだ。



その後、カイツールで一泊してから港へ出発という事になった。しかしルークと眼鏡狸は宿の中に入らず、眼鏡狸の呼び出しによりカイツールから少し離れた場所で現在話あっていた。



「・・・失礼ですが、ルーク。あなたは本気であのような事を言ったのですか?」
すると眼鏡狸が少しかしこまってルークに質問をしてきた。
「あぁ?本気に決まってんだろ?内部分裂を起こしているような不安定な団体を信じる程俺はお人好しじゃないっつーの。俺がダアトを信用するための最低条件はアッシュを命令してる馬鹿の名前を知ること、だから俺はアッシュを捕えてきてくれって師匠に頼んだんだぜ?それすら出来ないならダアトなんて信じねぇよ。それにアンタ、一応あのタルタロスに乗っていた人間の中で最高地位の人物だろ?ダアトの人間に襲撃されて派閥が違うからってそのままイオンに訴えもせず、ダアトに抗議しようとすらしねぇなんてマルクトの方がおかしいんじゃねぇの?導師イオンを非公式に乗せてたとはいえ、マルクト兵を一方的に殺してったんだぜ?ダアトに抗議文くらい送っても罰は当たらねぇだろ」
「ですが・・・」
「それとも何か?預言があるからダアトに抗議するなってか?イオンに気を使ってんのか?・・・下らねぇ。タルタロスの人達はダアトのいさかいに巻き込まれて死んだんだぜ?それにタルタロスは六神将に奪われてんだ。マルクトの所有物を当たり前のようにダアトの人間が使ってんだぞ。イオンに気を使うのは結構だが、他のダアトの人間にまで気を使う必要はねぇだろ」
次々と繰り出されるルークのマシンガントークに黙りこむ眼鏡狸。ルークの態度自体は変わっていないが、いきなりの理にかなった話口調に眼鏡狸は反論が出来ないようだ。
「今まで考えなかったのか、ダアトに抗議って?抗議するって皇帝陛下に報告してどういう返事が来るかどうかは知らないけど、明らかにやりすぎだって判断すると思うぞ。アンタはやりすぎだって判断しなかったのか?」
「・・・いえ、証拠を残さない為には当然だと」
「アンタが言ってんのは証拠を消しきれた場合だろ。証拠を消しきれなかった今、はっきりと事は明るみに出てんだぜ?さっきの俺らの会話でカイツールのマルクト兵はちゃんと聞いただろ?タルタロスの兵は全員殺されたって。明るみに出てしまった今、遺恨なんて発生したも同然なんだよ」



確かに先程の言葉を思い出していくと、言っている。ナルトという少年が大きな声で発言し、それを自分がはっきりと認めた事を。そして周りの兵がイオン、ヴァン、ティア、アニスに恨みの視線を送っていたのを眼鏡狸は感じていた。そこまで言われ、眼鏡狸はルークの言うとおり既に遺恨は発生したのだと理解した。



「けど俺はそこまで鬼じゃねぇ。だから俺はアッシュを引き渡してくれればいいって言ったんだよ。首謀者さえ分かればそいつをどうにかすればいいだけだし。手を下した奴よりも指示を出した奴を知ることが重要だろ?けど師匠はやけにアッシュの事を渋るから行かなきゃいけないように仕向けたんだよ」
「・・・そういうことですか」
そこまで言われ、眼鏡狸はやっと納得した。
「もう用は済んだだろ?戻ろうぜ」
「あ、いえ。お先にどうぞ。私は少し考え事をしてから行きますので」
「あ?んじゃあ、先に行くぜ」そういうとルークはさっさと眼鏡狸を残し、歩いていった。



「他より頭の回転がよくて何よりだってばよ」
「あぁ、それでも見解のズレがあったから少し説明に時間がかかったけどな」
その様子を隠れて見ていたナルト。先程のダアトを攻めるという発言を理解していなかった眼鏡狸とイオン以外のメンバーはルークの発言を、『世間を知らないおぼっちゃま』と見たのだ。宿に入る際、三人は色々グチャグチャ言ってきたがそれは軽く無視した。
「俺はあの老け髭から離れたかっただけだけどな」
「どうせ言わなきゃいけない事だってばよ。言わなかったらストレスがたまるだけだってば」
「違いねぇ」
ククッと笑い、ルークはナルトの言葉に同意した。




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