焔と渦巻く忍法帖 第八話

「だ、大丈夫ですか?アニス、それにガイ・・・」
アニスが呆然と立ち尽くしガイがまだガタガタ震え続けているので、様子を見ていたイオンが容態を心配する言葉をかけた。
「わ、私は大丈夫です。けどそっちの男の人が・・・」
「あぁ、ガイは俺んちの使用人だけどそれと同時に男色主義者で女は受け付けねぇんだ」
理解不能な行動に戸惑っていたアニスにフェミ男スパッツのプロフィールを教える(印象を植え付ける)ルーク。言われたアニスはその言葉の意味を瞬時に理解したらしく、勢いよくフェミ男スパッツから身を引いた。
(流石ルーク、抜け目ないってばよ)
言葉責め、一言で表すならそれ。ナルトには及ばないとはいえ、ルークの話術には真実味というものが完璧な嘘であってもついてくる。更に言い逃れが出来ない状況と証拠までついてくる。反論しようものなら更に奈落に突き落とされる事はまず間違いない。
(俺も久しぶりに追い詰めたいってばよ)
とはいえ今のナルトはただの少年、目の前のあたふたするルーク以外の人物達に早く溜ったフラストレーションをぶちまけたいと思っていた。



「つーか師匠どこだよ。カイツールにいるって言ってたけど、旅券がねーと帰れねぇんだろ?」
(宿屋でくつろいでんじゃねーよ老け髭。迎えに来るってんなら姿を発見するまで常時外で待ってるのが普通なんじゃねぇのかよ)
言葉と心の声が全く正反対なルーク。気配は宿屋から感じているので、間違いなくいることは明らかだ。
「ここで死ぬ奴にそんなものいらねぇよ!!」
(出たな、煙デコ)
すると上から煙デコこと鮮血のアッシュ、オリジナルが声と共に降ってきた。殺気を伴っていると感じたルークはそれを必要最小限の前転でそれをかわす。
(真性の馬鹿だな、こいつ。ここがどんな場所だか考えずに行動するなんて)
おかげで鬱憤に更に追加要素が増えた、罪状を心で追加していることなど雰囲気に出さず煙デコの方に体勢を変えるルーク。するといいとこ取りのタイミングでヤケにゴテゴテした飾りがある、思い出したくない後ろ姿がルークの視界に入ってきた。
「退け、アッシュ!」
「・・・ヴァン、どけ!!」
再び斬りかかられたルークをかばうように煙デコと鍔ぜりあいを繰り広げる老け髭。
(あれ、師匠とか謡将って呼ばねぇで呼び捨て?こいつ一応老け髭の部下だろ?礼儀すら学んでねぇのか、煙デコ・・・洗脳失敗したな、老け髭)
はっきりと感じとれる反逆の意、更には暴走と取れる行動。反抗期と言うには過激過ぎる。大方ルークへの恨みだけを餌に洗脳してきたのだろう。餌はバランスよく色々与えれば、与えられた方も心のバランスもよく育つというのに。そうすれば素直に敬語を使い、このように暴走することもなかっただろう。結局詰めが甘いとルークは思った。



「・・・どういうつもりだ。私はおまえにこんな命令をくだした覚えはない。退け!!」
鍔ぜりあいの最中の老け髭のその一言でようやく剣を納めた煙デコ。しかし納めた瞬間、一目散にその場から逃げ出してしまった。
その様子を見ながらスクッと立ち上がるルーク。
「久しぶりだな、ルーク。今の避けかたは中々だったぞ」
振り向き様、久しぶりの胡散臭い笑顔を張り付けて師匠面をする老け髭。
(てめぇの誉め言葉なんて毒にも薬にもなりゃしねぇんだからいらねぇよ)
内心で毒づきながらも、「ありがとうございます、師匠」と笑顔で答えるルーク。するとルークはチラッとナルトへと視線を向けた。しかしそれは一瞬だけで、すぐに視線を老け髭に戻しながらルークは話をある方へと持っていった。
「師匠、旅券は俺らの分持ってきてますか?持ってきてるなら全部俺に渡して欲しいんです」
「旅券だと?まあ、いい。公爵から予備の分も合わせて何個か預かってきた。これで全員ここを通れる」
と言いながらルークに旅券を渡す老け髭。旅券の確認を終えたルークは満足そうな顔で老け髭の思いもよらない言葉を放った。



「じゃあ師匠、今から六神将のアッシュって奴を捕まえてきて下さい」




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