焔と渦巻く忍法帖 第八話

先程泣き付いて疲れていたのか、今度はさっきより短い時間で泣きやんだ。しかしまだアリエッタは泣き足りないようで、顔は泣きそうなままだ。
(余程イオンの事がショックだったんだろうけど・・・この様子じゃただ単に好きって訳じゃなさそうだな)
アリエッタの悲しみかたが少し激しすぎると思ったルークはアリエッタに質問をしてみた。
「・・・アリエッタ、イオンとはどんな関係だったんだ?」
「・・・アリエッタ、前はイオン様の導師守護役だった、です。けど、二年前突然アニスが導師守護役になってアリエッタは導師守護役を外された、です」
泣きそうという事もあいまって、たどたどしい口調が更にたどたどしくなっているアリエッタ。その言葉を受け、ルークはある疑問が生まれた為、アリエッタにもう一回質問してみた。
「アリエッタ、それからのイオンの印象はどうだった?それと誰がアリエッタを導師守護役から解任するなんて言ったんだ?」
アリエッタに視線を合わせるように膝を屈め、優しい笑顔で聞くルーク。
「イオン様、アニスが導師守護役になってから変わった、です。前はアリエッタの事いつも心配してくれた、です。導師守護役の事決めるのはモース、です」
泣きそうなままのアリエッタの言葉にルークは疑問の答えをそのままいただく事が出来た。そして同時に、アリエッタの事を放ってはおけない、いとおしい存在だと認識していた。



「アリエッタ、しばらくクイーンのところに戻ったらどうだ?いろんな事が一気に起きてまだ頭の中がこんがらがってるだろう?ちゃんと整理するために時間をとって休んだ方がいい」
アリエッタの事を心配しているのは事実、だからこそルークはこの場から離れさせようと優しい言葉でアリエッタに休息を勧めた。
「そうだってばよ、それにクイーンに再生した森の住み心地はどうですか?って聞いてないからアリエッタに聞いてきて欲しいんだってば。アリエッタもママに会いたくないってば?」
ナルトもルークの言葉の後押しをする。まだ今から話す事はアリエッタにはきつい、ルークは推測から弾き出された事実を今のアリエッタにつきつけたくはなかった。ナルトはそのルークの気持を汲み取り、援護に出たのだ。
「・・・わかったです」
優しい言葉、態度、ルーク達は真にアリエッタを心配している。それを感じとったアリエッタは素直にルーク達の言葉を受けとった。返事を返した後アリエッタはライガに乗り、来た道を戻ろうと方向転換をして去ろうとしていた。
「アリエッタ、この事は俺達だけの秘密だ。誰にも言っちゃいけない。約束してくれ」
「はい。わかったです」
去り際に約束を取り付けたルーク。アリエッタはその言葉に振り返りながら頷き、颯爽とその場を去っていった。



笑顔でアリエッタが見えなくなるまで見届けた後、即座にルークとナルトは笑顔を消し去り、真顔でアリエッタの話から得た情報を整理しだした。
「オリジナルのイオンが死んだのは二年前だな。導師守護役をアリエッタから代えたのは本物のイオンじゃないってアリエッタは確実に言うからだろう」
「モースって奴が導師守護役の配置を代えたって事は今のイオンがレプリカだって知ってるからだってばよ。モースも老け髭の一員、かどうかは確定してないけどレプリカ技術の黙認をしてるからどっちにしても罪はあるってばよ」
「ま、そうだな。しかしアリエッタの代役があれなのは納得出来ねーなー俺」
「それは同意見だってばよ」
触れ合ったから分かるが、アリエッタは口調以外は何の遜色もないいい子だ。礼儀も知っている。しかし現導師守護役のアニスは他国の貴族に媚を売る、他国の軍人に守るべき対象の導師より近い位置にいる。更にはチーグルの森で導師を自ら守らずに他国の軍人に様子を見ていてくれと言い、そして他国の軍人に使い走りを頼まれてそれをあっさりと了承していた。幻術の中とはいえ、現実にこうなっていたらというシチュエーションをルークは見せていた。そんな中で、これだけの行動を起こしたという影分身の報告を受けた。これをうけたルークと話を聞いたナルトは兵士失格だろうとシンクロして思っていた。



「イオンの事は老け髭も知ってる筈だし、それを言ってないって事はアリエッタを利用しようとしてるって事だってばよ。アリエッタはダアトから離すべきだってばよ」
「ああ、そうだな」
このままいけばアリエッタは終わってしまう、ルークとナルトはそう思いアリエッタを救う事を決心した。




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