焔と渦巻く忍法帖 第八話

「・・・って訳。だからクイーンは生きてる、心配しなくてもいいんだよ」
クイーンの経緯説明も終わったところで、アリエッタは目をウルウルさせて泣きそうになっていた。
「ママ生きてる、ですか?本当に」
「俺達が保証する、それは間違いないってばよ」
アリエッタもルークとナルトの言葉が嘘偽りない真実だと理屈抜きに理解出来た。するとアリエッタはルークに駆け寄って、腰元に抱きついた。悪意を感じなかったので、されるがままにルークは抱きつかれたが、本人はその理由が分からない。ナルトは逆に面白そうにニヤニヤしながら様子を見ているだけだ。
「うっ、グスッ・・・ママ、助けてくれてありがとう、です・・・」
するとアリエッタから泣き声混じりの礼の言葉が聞こえてきた。ルークは泣き付いてきた子供を乱雑に扱うような冷血漢ではない。彼は基本フェミニストなのだ(礼儀知らずは例外)。
「グスッグスッ・・・うわぁぁぁぁぁん!!」
話を理解してもう我慢出来なかったのだろう、ルークの胸で大声でアリエッタは泣いてしまった。しかし悲しい泣きかたではない。どちらかと言えば嬉し泣き。アリエッタの様子から分かる、ルークとナルトの見立て通り、クイーンはいい母親だった。子供が自らの死に、泣いてくれるだけの想いを受けているのがいい証拠だ。
(俺らのやった事は普通は誉められた事じゃねぇんだろうけど、何かこうして感謝されっと悪い気はしねぇな)
(俺達は最初から間違った事は何もしてないってばよ、だって俺が決めた事だし)
(神か、お前は)
泣いているアリエッタをそっと腕の中に納めて、彼女に気を使い読唇術で会話をする二人。
(泣き終わるまで待ってやれってばよ、い・ろ・お・と・こ)
(言われるまでもねぇよ)






少ししてアリエッタも落ち着き、泣き終わるとルークから離れた。それをちゃんと確認すると、ルーク達はアリエッタにある注意を促した。
「アリエッタ、クイーンが実は生きてる事はアリエッタの中だけに納めておいた方がいい」
「何で、ですか?」
「言いにくい事だけどアリエッタや俺達以外の人間からすればライガは危険な魔物で殺す対象だってばよ。それに今俺達が一緒にいる奴らは全員クイーンが死んだって思ってるから、実は生きてるって知ったら何をするか分からないってばよ」
残酷なようだがナルトは事実を言っている。
「そんな・・・。イオン様は!?イオン様はそんなこと言う筈がないです!」
するとアリエッタは声を荒げ、イオンの事を必死に聞いてきた。
「アリエッタに酷いことを言うようだけど・・・イオンもチーグルの森からクイーンにただ出ていってくれと言っただけで、ライガの事を心配はしていなかったんだ。俺達の目から見たら、どうにか『チーグルの為』にライガはどいてくれと言ったようにしか見えなかった・・・」
「そんな・・・」
ルークの言葉で明らかに表情に暗さを見せるアリエッタ。しかし影分身から得た情報で、チーグルの長老にクイーンの報告したとき、イオンはクイーンが死んだというのに「チーグルに協力するのは当然です」と言い放ったのを思い出していた。あれではイオンはクイーンが死ぬのはチーグルの為で、ライガの事など知った事ではないと言ってるようなものだ。もしアリエッタの母親だったと知っても、結果論で許して欲しいと言葉だけの謝罪で終わる事が予想出来る。イオンは聖人君子の要素を持っているだけで、実際に見えている物が少ない。結局イオンも修頭胸達と同類なのだというのがルーク達の印象だった。
すると、アリエッタは顔を歪めてまた泣く体勢に入ってしまった。余程イオンの事がショックのようで、今度は正真正銘悲しみの為に泣こうとしていた。
「アリエッタ、ほら」
その様子を見たルークはアリエッタを手招きし、自分のところに来いと誘ってみた。それにアリエッタは泣きそうながらもルークに近付き、ルークの胸に埋まるとまた大声で泣き出した。
(・・・もうちょっと待つけど、いいか?ナルト)
(女の涙は黙って掬いとる、それが男の役割だってば。待つに決まってるってばよ)




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