焔と渦巻く忍法帖 第七話

「まあガイが男色主義者なのはどうでもいいんだけど、探しに来たのってガイだけなのか?」
散々こきおろした後は知ったことではないと、ルークは屋敷の現状把握を今だ傷心中のフェミ男スパッツに確認をとる。
「あ・・・いや、ヴァン謡将もルークを探しに来てるんだ。俺はケセドニアから陸づたいにここまで来て、ヴァン謡将はケセドニアからカイツール側に海路を使ってな」
「兄さんが!?」
質問に答えるべく、フェミ男スパッツが気を取りなおしつつ答えていると、修頭胸が兄の事を聞いた瞬間、すさまじい形相でフェミ男スパッツに向かいあった。
「兄さん?君はヴァン謡将の・・・」
するとフェミ男スパッツが意味ありげに修頭胸を見出した。しかしルークはそんなことは気にせずに、
「なあ、他には誰か来てねぇのか?」
自分の聞きたい事をフェミ男スパッツに投げ掛けた。
「ああ、あれから屋敷内は少しゴタゴタしてしまってな。公事に出来ないから軍人を連れて行くわけにはいかないってヴァン謡将が俺と二人で行くって言ったんだ」
「・・・で、二人で手分けして来たと」
「ああ」
明らかに有り得ない事実、それはルークを呆れさせるには充分な内容だった。
(フェミ男スパッツの言い方だと老け髭の言葉でその事が決定したんだよな?・・・有り得ねぇ、有り得ねぇだろ。ダアトの軍属の人間が自らキムラスカの人間の為に動くなんて。老け髭の事だから計画までは死なせる訳にはいかないって気持ちで俺を探しに来たんだろうけど、あっさりと行く許可を出すファブレ公爵の気持ちが分かんねぇ。大体屋敷に襲ってきたのは『ダアトの軍人』なんだぜ?責任問題として『ダアトの上に位置する人物』が状況整理の為に屋敷に残るべきだろ。身元は何より老け髭が知ってる訳だし、身内が起こした犯罪だから予め『ルーク』を誘拐するために計画されてたって疑っていいはずだろ。そこは無理をしてでも一般人に変装させたキムラスカ兵を送れよ。それにたった二人だぞ、敵地マルクトに送る人員が。そして老け髭を疑えよ)
あまりにも拙い、あまりにも有り得ない。キムラスカが如何に甘いかを裏付けている。
(預言頼りな生活ってのはここまで判断力を鈍らせんのか?少し考えれば誰にでも分かることだろ)
この世界に関心が全くなかったから見えてくる甘さ、それは日々疑う事を必要とするルーク達からすればただ愚かしいだけの光景にしか見えなかった。



「あー、だりぃ。もうここで野営した方がいいんじゃねぇ?」
もう今更突っ込むのは面倒だと思いつつも、ルークは今までの話の流れを意図的に絶ち、気だるげに夜營を申し出た。
「ルーク!!今は和平に向かわなければ・・・」
(やっぱり来たな・・・分かってんだよ)
「イオンが辛そうにしてんのが見えねぇのか?一々倒れられて介護するために止まる時間は逆に無駄だろ。なら今日は足を止めてさっさと休んだ方がいい」
反論が来ることを予想していたルークはイオンの体調の事を理由に出す。案の定イオンの方を見ると、先程から比べれば少しは顔色はいいが健康とは言い難い。実際ルークは真実だけしか話していない。しかしそれでもイオンの様子を見て発言したルークの方が、修頭胸よりは気遣いが出来ていると言えるだろう。修頭胸は主の事実を目の前にして、反論出来ずに悔しそうに歯を噛んでいる。
「イオンも休め。倒れられたら迷惑だ」
「そうだってばよ」
修頭胸の様子を尻目で見て、イオンに休息を勧めるとルークとナルトは少しイオン達から少し離れた所に陣取って座った。



「・・・ありがとうございます」
イオンは少し申し訳無さそうに二人を見て呟いた。




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