焔と渦巻く忍法帖 第六話

結局その後ルーク達は船室に押し込まれた。それを確認すると神託の盾兵は離れていき、この場には倒れた振りをしているルークとナルトの二人と、オリジナルの譜術で気絶したままの修頭胸と、敵わないとみて素直に起きたまま連行された眼鏡狸しかいない。

これを推測から確信へと変えるチャンスだと見たルークは眼鏡狸から話を聞くべく、意識を取り戻した振りを始めた。



「ううん・・・」
唸りながら床から身を起こすルーク。いかにも意識を取り戻したばかりという感じで、ルークを知らない者からすれば誰もが起き上がったばかりだと見るだろう。
「おや、お目覚めですか?」
今起きたのかと言わんばかりの嫌味を存分に含んだこの口調、更にはうすら寒い笑み。
「うっさい、キモイ」
少しそれにいらついたルークは普通に本音で返す。
「心外ですねぇ。私はこんなにもあなたを心配していたというのに」
「うわっ、余計キモッ」
手で頭を押さえ、悲しむフリをするオッサンの姿。いくら若作りであろうが、ルークからすればオッサンなので気持ち悪いだけ。更にはわざとらしすぎるのも余計にルークのいらつきに拍車をかけた。



しかし、こんなコントをするためにルークは起き上がったのではない。改めてルークは流れを戻すべく、自ら話を持ち掛けた。
「なあ・・・タルタロスの人達って助かった人、いないのか?」
先程までの眼鏡狸に文句を言っていた顔はなく、純粋にタルタロスの兵達を心配するルークの顔で問掛けた。
「いないでしょうね。マルクト軍艦のタルタロスを占拠するのですから生き残りを出すわけにはいきません。生き残りを出して、逃がしてしまえばダアトとマルクトとの遺恨を残す事になります」
「タルタロスに乗ってた兵って・・・どれくらいいたんだ?」
「極秘任務でしたから通常の半分程度、百四十人程ですね」
それを聞いたルークは顔を下げ、苦い顔を作りつつ心の中で状況を整理していた。
(百四十人程か・・・影分身の感じた数と同じだな・・・やっぱマルクトにスパイがいた可能性は低いか)
マルクト兵のスパイ容疑は晴れた。続いて次の疑問をぶつけるべく、ルークは少し顔を上げて不安そうな面持ちで眼鏡狸に向かいあった。
「なあ・・・六神将って何なんだ?」
「神託の盾首席総長ヴァン総長の直属の部下です」
「はぁ!?」
その答えに普通に驚くルーク、その声に構うことなく眼鏡狸は話を続けた。
「神託の盾騎士団の顔とも言える程の認知度です、知らなかったのですか?」
「・・・知らねーよ。悪かったな」
不機嫌な顔でそっぽを向くルーク。正確に言えば六神将の事は知らなかったというより、知ろうとしなかっただけであるが。しかしその事実にまたこの世界に呆れがきてしまった。
(眼鏡狸の言葉通りならオリジナルはダアトで有名人だよな?ならオリジナルを見てキムラスカの王族だって噂くらいたつだろ。中立を保っているダアトならキムラスカやマルクトからも人の行き来があるはずだし、オリジナルだけが都合よく全く人前に出ないなんてあるわけねぇだろ)
どれだけ人に関心がねぇんだ、今まで噂がキムラスカに届かなかったのが不思議に思えたルークだった。
(それを言えば老け髭も老け髭だよな。自分の直属の部下にオリジナルを配置するって。バレたらどうすんだよ・・・ま、でもこれで六神将は老け髭サイドって見てもいいかもな。少なくてもオリジナルとオリジナルを止めた女は確実にそっち側だ。俺がレプリカだって知ってる訳だし。残りは確認を取ったわけじゃないし、はっきりと全員が全員老け髭に賛同するのかどうか微妙だな)
だって老けてて髭だし。



推測を終えたルークは悪い意味でアンチエイジングな姿をしている人物についていく気持ちが分からなかった為、老けていることに魅力があるのかどうなのかと下らない事に考えを移行していた。




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