焔と渦巻く忍法帖 第六話

「隊長どうしますか?」
「・・・殺せ」
二人が倒れている振りを続けていると、神託の盾兵がオリジナルにルーク達をどうするのかと指示を求めてきた。その質問に対する答えは殺せの一言。
(こいつ本当にキムラスカの貴族なのか?それともダアトに心から帰順したのか?ならもうこいつは‘ルーク・フォン・ファブレ’という名前を捨て去ったって事だよな)
今現在‘ルーク・フォン・ファブレ’を名乗っているのは他ならぬレプリカの自分。しかしオリジナルは見た所神託の盾でも上の位置にいる。もしここでダアトの一兵士としてルークやマルクトの眼鏡狸を殺してしまうというのなら、紛れもない戦争肯定派という事だ。
マルクトの和平の使者を殺してしまえばいずれ戦争は起きてしまうだろう。つまり自身の出身国であるキムラスカに戦争が起こって欲しいと言っているようなものだ。もしその場の勢いだけで言っているのであっても、‘ルーク’がマルクトで失踪してしまえばまた戦争のきっかけになってしまう。それを分かっているのだろうか。
(ダアトに帰順してんのならキムラスカに反意があってもおかしくねぇけど、明らかに俺に‘だけ’恨みを持ってんだよなこいつ)
ルークに向けられた殺意、会ってもいない自分に向けられるような殺気ではない。
(老け髭にいらんことを吹き込まれてんな、これ)
オリジナルの今までの行動で浮かぶ可能性は老け髭の洗脳。あることないこと言葉巧みに吹き込んで自分がダアトにいなければいけないと思い込ませ、何故という感情は自分へ恨みを持たせる事でそれを打ち殺させている。恨みの対象を反らし、自分への信頼を知らず知らずの内に本人に植え付ける、洗脳の常套手段だ。でなければ自分へ向けられる殺気はあまりにも大きすぎる。
(オリジナル飼い慣らしたからって調子に乗んなよ、老け髭)
恨みなぞどうということはない、ましてや殺される気など毛頭ない。どうせなら今この場でオリジナルを殺せば話は変わる、そう思いルークとナルトは何時でも反撃に出れるように剣が振り下ろされるギリギリまで待とうとしていた。



「アッシュ、閣下の命を忘れたのか。それとも我を通すつもりか?」
反撃に出ようと待っていたルークとナルトの耳に飛込んできたのはアッシュという今のオリジナルの名前らしきものを呼んだ女の声だった。
「・・・チッ、適当な船室に放りこんでおけ」
そう言ったオリジナルの声にはありありと不満の色が聞いて取れた。その声に周りにいた神託の盾兵がルーク達を担いで、船室へと移動しようとしていた。



(アッシュ・・・‘燃え滓’ねぇ。ルークを捨てて自分自身が燃え滓って表す名前をつけんのはあまりにも自虐的じゃねぇかな。オリジナルじゃなく、老け髭が付けたってんなら随分と皮肉な名をつけたな・・・悪趣味極まりねぇ)
運ばれている最中、ルークは先程の会話の事を思い返していた。
(閣下か・・・この閣下ってのは老け髭だろうな。もし他のヤツが閣下で戦争肯定派なら、オリジナルが俺を殺すのは止めない筈だ、寧ろ殺すのを推奨するだろう。それを止めるって事はあの女も俺がレプリカだって知ってて、‘ルーク’がまだ死ぬ場面じゃないって知ってるんだろうな。閣下からの命っていうのは恐らく「レプリカは殺すな」って感じかな。ま、少なくとも老け髭がこの襲撃には一枚噛んでんな)
推測は推測でしかない、だが考える事は重要だ。出来るだけ実情を把握するべくひたすらにルークは船室に行くまでの間、思考を張り巡らせていた。





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