焔と渦巻く忍法帖 第六話

「・・・何かいるってばよ」
「・・・ああ、いるな」
上に。扉の前で談笑していたルーク達は自分達の上に何者かが近付いて来ているのを感じていた。
「・・・ナルト、適当に‘俺ら’らしく騒ぐぞ」
「了解だってばよ」
そのやりとりを終えた二人は先程までの気配を殺したたたずまいではなく、明らかに素人と思えるような気配へとシフトチェンジした。
「あー!!くそ!!何で俺らが見張りなんて地味な事やらなきゃいけねぇんだよ!!」
「そうだってばよ!!どうせならもっと俺に似合ったバーッとした仕事がやりたいってばよ!!」
二人があからさまに気配を変えた理由、それは‘ルーク・フォン・ファブレ’では勝てない程の実力者という理由だからだ。気配で分かる、六神将の黒獅子ラルゴと同列程はあると。それでルークは適当に騒ぎを起こして眼鏡狸達を呼び寄せようとしているのだ。



そうこうしていると、修頭胸の譜歌で眠っていた近くの神託の盾兵が起き上がってきた。
「ナルト!ここは俺が戦う!お前は下がってろ!」
「わかったってばよ!」
わざとらしく大声で会話をするルーク達。その会話の裏は、
(とりあえずこれであいつら来るだろ)
(来なかったら耳腐ってるってばよ)
・・・というものである。
そんな含みに気付かないまま起き上がってきた神託の盾兵はルークに叫びながら襲いかかってきた。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」
「・・・一瞬で逝かせてやるよ」
そう小声で呟いたルーク。呟いた瞬間、ルークの表情が恐ろしい程無感情な能面みたいな表情になっていた。そのルークの顔を真正面から見てしまった兵士はとてつもない恐怖を感じた。兵士は切りかかる体勢に入っていたが、その恐怖で勢いを崩してしまい振り下ろす剣の早さが鈍ってしまった。これをルークは最小限の見切りでかわし、持っている剣をあっさりと心臓に突き立てた。ルークがゆっくりと剣を引き抜くと兵士は床へと引き寄せられ、倒れて動く事はなくなってしまった。
「何なの!?この騒ぎは!」
(ようやく来たか)
兵士を倒した直後、修頭胸達が叫びを聞いて駆け付けてきた。
「まずいですね。今の騒ぎで譜歌の効果が切れはじめている」
そう眼鏡狸が呟くとほぼ同時に、上から溢れんばかりの殺気がルークに向けられた。
(・・・俺に恨みでもあんのか?)
眼鏡狸にも修頭胸でもなくあくまで自分に向けられた殺気、正直身に覚えが無さすぎてルークはどうしてなのか分からなかった。



「馬鹿面さらしてのうのうとしてんじゃねぇ!!出来損ないが!!」
唐突に上から声が飛んできたと思ったら、氷柱がいきなり降り注いできた。その氷柱を修頭胸はまともに喰らって脳震盪を起こしたようで、倒れてしまった。眼鏡狸は氷柱をよけて上から降ってきた男と向かいあっている。そしてルーク達は・・・
(眼鏡狸に任せるか)
(そうしようってばよ)
適当に喰らった振りをして倒れていた。倒れた奴らに注目を集めるような状況ではないので堂々と口パクで話している。
(叫んだ時の声でまさかとは思ったけどオリジナルだったとはな~)
(何で頭髪を追い込むような髪型にしてるんだってば?)
二人は倒れた振りをして襲いかかってきたヤツの顔を盗み見ると、ルークに似た顔がそこにあった。
(けど強さはルークに似ても似つかないってばよ)
今の譜術だけでナルトは理解した。ルークが詠唱したものと威力が桁違いに違う。ルークより明らかに弱いと。
(まあ仕方ないだろ。強くなる為にした修行の時間の密度がちげーんだから)
確かに六神将程の器に収まるのだからそれなりに努力はしたのだろう。しかしルークが言った様に修行の密度が違う。まともに戦えば一秒もしない内に決着がつく、それほどの差がある。
(つーかこの様子じゃ俺相当恨まれてんなー)
(何かサスケに似てるってばよ。あの一方的な恨みかた)
(確かに)
ふとナルトが思い出したサスケ。彼もイタチを恨んでいた。イタチは大してサスケを気にしていなかったので、本当に一方的だったが。
(・・・あいつ思い出したらムカついたから殺していいってば?)
(そのムカつきはサスケに取っとけ、今は止めろ)
はたから見れば絶対絶命な状況であるが、二人には全く関係なかった。




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