焔と渦巻く忍法帖 第六話

「神託の盾に襲われたって言ったけど、そんな危ない状況だってば?」
「・・・あー、それがなー。妙なんだよ」
「妙?」
「襲撃のタイミングが計った様に示しあわせてあるんだよ。襲ってきたのが神託の盾なら戦争肯定派が和平妨害の為にイオンを止めに来たのは分かるんだけど、イオンは秘密でダアトを出てきたってちゃんと言ってたんだよ。もしイオンが出ていったってのが最初からダアトを出た時点でバレてたなら俺らに出会う前に何回か襲撃があった筈なんだ。でもイオン達は全くそんな事は言ってなかった。つまり戦争肯定派はイオンの正確な位置を知ってる筈がないんだよ。けれどタルタロスを襲ってきた神託の盾は前方に囮を出す形で別方向からの奇襲を行ったんだ」
ブリッジからの報告は前方に大量のグリフィンが来ているというもの、しかしまだ距離が20kmもあるような所に居るのに、機関部に敵が突然襲ってきたという最期の一言を聞いた。
「あんなのはタルタロスの進路を知っていないとまず二面作戦なんてのは無理なんだよ。しかも、襲ってきたダアトの六神将の黒獅子ラルゴってヤツがイオンを奪還しに来たってはっきり言ったんだ。イオン達の行動がここに来てあからさまに把握されている・・・妙だろ?」
「妙・・・っていうかもうこれは決まってるってばよ」
スパイに、そう答えたナルトの顔には迷いなど欠片もなかった。
「やっぱそう思うか?」
ナルトの結論を聞いたルークは大して驚いていない。その問いかけで彼もその可能性を考えていたというのが分かる。
「けど問題は誰がスパイなのかって事だってばよ」
「マルクト兵は可能性が低いな。襲撃時からタルタロス全体に気配を影分身に探らせたんだけど、俺ら以外に生き残りがいねぇ。もしマルクト兵の中にスパイがいたなら裏切られたって事になるけどな。もしかしたらタルタロスをチーグルの森から発進させる前に誰か離脱したって可能性も否定出来ないけど」
「それはあの眼鏡狸に聞けば早いってばよ」
「そうだな・・・おっ、あそこだ。あの上の方に今影分身がいるぞ」
そう指差した先にルーク達は急いでいった。






「何で扉の前で待ってるんだってばよ」
「見張りをしろだと」
影分身と入れ替わった二人。二人は扉の横で座って話している。
「あの眼鏡狸また最悪な事言ったぞ。タルタロスを奪い返すには俺の剣術と修頭胸の譜歌が必要だって」
「うわ、サイテー」
眼鏡狸はマルクトの所有物のタルタロスを他国のまだ和平すら結んでいない筈の貴族と、他国の兵士にタルタロス奪還の手伝いをしろと言ってきた。
「てめぇのしり拭いくらい自分の手でやれよって感じだよな?」
「自分一人じゃ無理ならマルクト兵を引き連れて後でやれってばよ」
現状を把握すればたった四人程でタルタロスを奪還出来ないと気付く筈だ。既に戦闘の声すら聞こえない、あんな短時間でタルタロスを制圧をしているのだから相当な数の敵が居る事を裏付けている。ましてや封印術を喰らった今の眼鏡狸では修頭胸より多少戦える程度。しかし敢えてタルタロスを取り戻そうとしている。和平にタルタロスが絶対必要な理由はない筈なのに。
「見極めってのも大事なのにな~」
二人は見極めのタイミングを誤らないように常に動いてきた。故に眼鏡狸の行動は二人からすれば勝算がないただの自殺行為に見えた。






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