焔と渦巻く忍法帖 第五話

しかしルークも何も知らないままでいたらここまでクイーンを助けようとしなかっただろう。そう、ナルトに会わなければ・・・



ルークがナルトと共に里で生活している時にナルトは九尾が体の中に封印されているというだけでナルトが迫害されている場面を何度も見ていた。何故耐えるというルークの問いに、ナルトは仕方ない事だとその事をただ力無い笑みでルークに返した。その時にルークははっきりと理解した。ナルトは‘被害者’なのだと。

九尾だからという下らない被害妄想だけでナルトを見ようともしない、突き放す、挙げ句の果てには殺そうとまでする。ナルトはその様な環境の中にいたから強くならざるをえなくなった。心を殺されないように、命を奪われないように・・・
このままクイーンを放っておくことなどルークには出来なかった。人の勝手で奪われ、死んでいく姿など見たくはなかったのだ。

・・・それにまたクイーンを助けたいと思った理由はもう一つあった。



〈ここまでしてくれた事には感謝する。だが我にはそなたらに返せる物など何もない・・・〉
〈でしたらクイーン、一つお願いがあります。この願いを聞き届けていただけるのであれば貸し借りは考えずとも結構です〉
〈何だ・・・?〉
〈貴方に抱きついてもよろしいでしょうか?〉
〈・・・その程度の事でいいのか?〉
〈はい〉
〈分かった〉
〈失礼します〉
クイーンに断りを入れるとルーク達は首元に両側から一人ずつ抱きついた。
「ナルト・・・母親ってこんな感じなのかな・・・」
「分かんないけど・・・多分そうだってばよ・・・」



クイーンの首元で気持よさそうに顔を緩めている二人。

二人がクイーンを助けたいと思ったもう一つの理由、それは母親という像をクイーンに見い出したからである。ルークにはオリジナルの母親であるシュザンヌがいるが、本当の母親と言えるような間柄とは言い難い。シュザンヌは記憶を失い、拐われたルークが可哀想だという同情心でしかルークを見ていない。その為、シュザンヌには自分の母親だというビジョンを持った事が無い。

ナルトも本当の母親は既に他界してしまっている。一回も母親の姿を見ることが無いままに育ってきた。故に母親の愛情という物を知らなかった。

そんな二人の前にクイーンが現れた。対面した際には子供を守る為に人間達を退けようと自らが体を張って守る姿が目に入った。その時ルーク達は会っていない筈の母親という像をクイーンに重ねていた。母親の理想像を見た瞬間、二人は母親を助けたい子供の心境になっていた。それが第二の理由である。



「優しいな・・・」
「優しいってばよ・・・」
母親の温もり、経験することのなかった暖かさ・・・それが今現実に感じとれている。二人はただただ心地よかった、他に感想などない、それだけである。




〈それではクイーン、失礼致します〉
そろそろ行かなければいけないという事で二人はクイーンから離れて礼の形を取りながら別れを切り出した。
〈そうか、改めて感謝しよう。我等を救ってくれた事を・・・〉
〈いえ・・・それでは失礼します。クイーン、壮健であれ〉
そう言うと二人はクイーンの目の前から姿を消し去ってしまった。
〈さらばだ・・・〉
息子達よ、別れを実感した瞬間にクイーンは少し寂しそうな表情で低く唸り声を上げていた。




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