縁を切った先に在ったのは死神の手

「止めてくれ?おかしいことを言うってばね、俺はお前の行動を全て思い出させてやってるだけなのに」
「止めてくれ・・・もう、聞きたくない・・・」
その懇願に首を傾げつつ尚の追撃をかけるナルトに、サスケは耳を抑えたそうに弱りきった声でもう一度止めてくれと言ってくる。



・・・復讐は復讐、復興は復興。二つの事柄を全く別に分けて考えてしまったが故に、このような事態をサスケは引き起こした。

サスケがもし少しでも自身を省みる事が出来、尚且つ一族復興の事を考え行動していたならこのような状況に陥らなかった可能性は非常に高いだろう。せめて復讐を諦められなかったとしても、里を出る事なく里で修業に勤しんでいたはずだ。里を出る事の不利に足を取られながら。

・・・ただそもそもの話、サスケを引き止める為に一族復興の一連の流れを里は話そうと思えば話せた。しかしそれが話されなかった理由は、主な物としては一族復興を願わなかった者がいたことにあった。

うちはを復興させるならナルトが言ったような特例としての複数の女をあてがう対策などサスケに対して優遇の扱いを取ることになる。それは新たなうちはの子孫達が出て来る為、未来の事を考えれば里の戦力の先行投資と考えれば損はないかと思われる・・・だが反面として、その対策を取ればサスケや発案した上層部以外の里の住民達の反感を買いかねないというデメリットがある。

いかに同情の余地があるような身の上とは言っても、サスケだけを優先して里の資産を勝手に回してしまえば当然下は気持ちいいものではない。この場合の資産の意味は金などの財産もだが、あてがわれる女などの人材もである。

里の資産という物は里という枠組み内で賄わなければならない以上、必然的に限りが出て来る。うちは再興の為に金を費やせばその分の金という物は別件で使っていた所から引用しなければならなくなるため、その引用された所はまず不満を覚える。何故自分達がうちはの為に金を持って行かれなければならないのかという不満を。

同様に里の女をかなりの数をサスケにあてがえば、当然女からもであるが男からも不満が出て来やすくなる。流石に任務などと言われても女はうちはの子供を孕む為だけにサスケと契るのは嫌だという者もいるだろう、それがイノやサクラなどの純粋に好意を持っている人物は尚更だ。文字通り体だけが目当てで抱かれ子を産まされるなど、サスケと同年代のくのいち達は考えが成熟していないのもあり自身からはまずいけない。

そして男からして見ても、うちはの子を産む為の女かどうかを知らなければまず女を作れないという状態になり、結婚にこぎつける事すら出来ない男達が出来る可能性が出て来る。もし結構な数の女がサスケにあてがわれた場合は=それだけの人数分里の男が結婚出来なくなる事を示す。それが例えうちはにひいては里の為だからと説得しても、うちは一族ではない一般市民が減ってしまえば特殊な血を持つ者だけを優遇するのかと言う声が出ることは避けられなくなる。

・・・メリットだけかに思えるうちは再興も、裏を返せば里の人々の不平不満を増長しかねないデメリットが存在している。そういった意見を言う者達がいて意見を言ったからこそ、復讐を目的としていたサスケの最終的な意志を尊重するという結論に里は至ったのだ。どちらにするかを選んだ時どちらにせよ選んだのはサスケなのだからと、責任を半ばなすりつけるかのような形で。



・・・だが里が不満を分散させる安全策を取るような状況を作っていたとしても、結局里を捨てる結論に至ったのは紛れも無くサスケ自身の考えによるもの。それは今いかにサスケが一族に対する浅慮さを後悔した所で、過去を変えられようはずもない・・・









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