焔と渦巻く忍法帖 第五話

「おっ、きたきた」
二人が森の再生に満足していると、ルーク達がやってきた方角からルークとナルトの影分身が何やら大量の荷物が入っていそうな袋を持ってきた。
「よし、仕上げだ。フリジットコフィン!!」
影分身の到着と同時にルークが譜術を唱えると、何もない所に氷柱がつきでてきた。するとルークはその氷柱を剣で中身だけをいきなり削りだしている。
一体何が起こるのかとクイーンは怪訝な表情で見守っていると、瞬く間にドーム状に削られた氷が姿を表していた。すると先程の影分身達がルーク達に持ってきた袋を渡している。袋を渡した影分身達が役目を終え消えると、ルーク達は袋を開けてその氷のドームの中に中身を入れだした。ふとクイーンがドームに入れている物を見ていると、大量の食糧がドームに入れられていた。



食糧が袋から全て出てしまった事を確認した二人は改めてクイーンに向き直り、礼の形を取った。
〈お待たせ致しました、クイーン。この通り森は新たな形で再生しました。ですがこの森も再生されたばかりで満足な食糧も取れないと思い、私達の影分身にエンゲーブまで大量に食糧を買い込ませて来ました。食糧はしばらくはこれで賄えるでしょう〉
ルーク達が買ってきた食糧はライガであるクイーンが見ても一ヶ月は食える程の量がある。フリジットコフィンから創った氷のドームは食糧を腐らせないようにするために少しチャクラをおり混ぜて放った物で、少々の熱や衝撃では壊れないようにしてある。
〈これで子供達が産まれてくる環境は整いました。何かまだ必要な物がございましたら私達がご用意致しますが?〉
〈それは必要ない・・・だが一つ答えよ。そなたらは人間、我等の敵である筈だ。何故我等を助ける〉
〈・・・貴方が被害者だからです〉
そう答えたルークの表情には悲痛そのものだった。



〈貴方は住みかを奪われ、今までの暮らしを奪われました。そして我々が来る事で貴方を殺す存在が近くに来てしまいました〉
クイーンを殺す存在、それはあの眼鏡をかけたマルクト軍人。ルークはあの眼鏡狸が自分達の実力に及ばないまでも、並外れた力を持っているのを見抜いていた。目の前のクイーンが相手にならない位には実力があることを・・・
〈貴方はあそこにいたら確実に命まで奪われていました。あの場に隠れていた軍人の手によって・・・〉
チーグルの住みかにいるときに察知していた気配は眼鏡狸のものだった。そしてクイーンと初めて対峙した時にはあの場に潜伏しているのも察知していた。もしあの場でクイーンを説得しようとしていたら眼鏡狸が出てきてクイーンを殺していただろう、有無を言わさずに。だからルークは幻術を使い、あの場にいたクイーンを除く全員を騙したのだ。クイーンは死んだ、これで一件落着という幻を見せて・・・
〈はっきりと悪いと言えるのは誰でも無いんです。貴方も、チーグルも、人間も。しかし人間が決めたルールでチーグルは善、ライガは悪と自分達が勝手に決めたルールだけで貴方を殺そうとしたんです。それが私達は納得出来なかった・・・だから人間のエゴに巻き込まれる前に貴方を助けたいと思った、そういう事です〉
そのルークの必死に語られる言葉一つ一つに悲しい程にクイーンを慈しんでいるのが聞いてとれた。何が彼をそこまでかりたたせるのかは分からないがクイーンはその言葉に偽りはないと既に認めるしか出来なくなっていた。




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