縁を切った先に在ったのは死神の手

「忍びの本分は忍ぶ事、だと・・・?」
「少なくとも俺はそう思ってるけど?考えてみろよ。別に強い忍がいたって常に普段から全力で姿が見えない速さで動く奴なんて聞いた事ないだろ?俺は強いっ、なんてアピールしたって別に得なんてなーんもねーんだ。むしろ実力は隠しておいた方がいいだろ?任務を行う上じゃあな」
「だったら!俺がいた時のお前はなんだってんだ!出来もしないことを自信満々に言って、目立ってばかりいたじゃねぇか!」
「『あれ』は『今の俺』を隠す為の隠れ蓑だよ」
「!?んだ、と・・・」
忍ぶ事の利を説くナルトにサスケは二年半程前の時の事を引き合いに出し声を荒げるが、明らかに『うずまきナルト』と『今のナルト』とを一線を画した冷たさを思わせる話し方にサスケは言葉を失いかける。
「あの状態の俺を見て馬鹿以外の言葉が出ると思うか?瀕死になってボロボロになってようやく勝利を収める俺を見て、その姿より遥かに強い俺を想像出来ると思うか?どうだ、答えてみろってばよ」
「・・・」
更に話していくナルトの言葉に、サスケは返答を返せずとも納得してしまっていた・・・派手であり大きい物であればあるほど、その分闇がわかりにくくなる。木の葉を隠すなら森に隠せというが、正しい表現と今のナルトは言えると。
「わかるだろ?『あれ』が『今の俺』の隠れ蓑だって。で、その隠れ蓑の俺の目で見てお前を殺してもいいって思ったから今こうやって殺しに来たんだよ」
「・・・俺を殺していい、だと・・・?どういうことだ、ナルト・・・?」
そのサスケの様子からもう理解しているとナルトは話を続けるが、サスケはその話に不審な点を感じ取る。



「お前はもううちは一族の再興を諦めた、俺がそう判断したから木の葉の里の上層部はお前の始末に俺を送ったんだ」



「なっ・・・俺がうちは一族再興を諦めたと、お前がそう判断した、だと・・・!?」
・・・その不審点とは判断した、という点。だが詳しくその中身を聞いてしまったサスケは自身としては全然諦めていない、うちは一族再興断念とナルトが判断したこと。不本意極まりない発言にサスケは怒りを覚える。
「あー、ちょっと間違った。正確に言えば里はうちは一族の再興を支援する意味がなくなったから、お前を生かす意味がなくなったってとこだな。あくまでうちはの再興を諦めたってのは、俺の見方だってばよ」
「一族の再興を支援・・・里がだと?」
だが訂正が入った言葉に、サスケは訳がわからないという風に首を傾げる。
「そういう風に何も考えてないから、俺はうちは再興を諦めたって判断したんだよ」
「!んだとっ!?・・・つぅ・・・!」
そんなサスケを明らかに馬鹿扱いしたナルトの言葉にサスケは激昂して起き上がろうとするが、掌のクナイが引っ掛かり痛みに顔を歪める。
「んじゃそんな何も考えてないサスケに質問だけど、一族の人間を増やしたいなら最初に何をする必要がある?」
「何って・・・それは子供を作る事だろう・・・」
だがナルトはサスケの主張も痛みに歪める顔も気にせず質問をし、サスケは気を取り直しつつ当然の事だろうというように答える。
「なら次の質問。手っ取り早く一族の子供を増やしたいならどうすればいいと思う?」
「手っ取り早く、だと・・・?それは色々な女を手当たり次第に妊娠させる、というくらいしか思い付かないが・・・」
「更に追加の質問。言い方は悪いけど、その色々な女ってどうやって調達する?」
「・・・それは・・・」
そんなサスケにナルトは次々質問し、どうやって妊娠してくれる女を調達するのかと聞かれサスケは言葉を濁す。
・・・復讐に囚われ、それのみに没頭していたサスケ。その上で復讐の目的としてきたイタチ、復讐を果たす力を手に入れる為に近付いた大蛇丸の二人を嫌悪し憎悪するサスケは利己的な行動を嫌う傾向がある。故に自分の為に敵対も何もしていない無関係な女を手当たり次第妊娠させる、などということはサスケからすれば最もはばかられる事だった。



「そんな色々な女を用意してくれる環境って奴をお前は放棄して、木の葉の里を敵に回したんだよ」









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