縁を切った先に在ったのは死神の手

『虚空』・・・その名を知る者曰く、木の葉の死神。だがその存在を見た者はほとんどおらず、いるかどうかすら怪しまれる程噂の立たない木の葉の暗部。

他里どころか木の葉でもほぼ知られていない虚空であるが、戦場での彼を知る者はその実力に畏怖を覚え細々と噂を流している。



そんな姿形を含めた虚空の情報は当然、大蛇丸とともにいるカブトの耳にも入っている。だからこそカブトは警戒を最大限に強めていた、流れ着く噂があまりにも人間離れした成果を上げているだけに・・・
だがふとカブトは虚空を見て、眉を上げる。
「・・・大蛇丸様、ならば彼の相方はどこに?」
「・・・だから私の援護に回れと言ったのよ。彼がいないのならそれに越した事はないけど、いたら確実に私達の隙を狙ってるはずよ」
「隙?見つける必要などない、俺がお前らの隙を作ってそれをつくだけだ」
「「!?」」
大蛇丸に不自然さを告げるカブトに大蛇丸はだから警戒しろと言うが、突然上から乱入してきた声に顔を向ける・・・そこにあったのは、陽光の陽射しを受けてその姿がシルエットになった一人の人間が抜き身の刀を持っている物。
‘ガッッ!’
「・・・っ・・・っ!」
その刀が狙ったのは大蛇丸。不意を突かれたものの三忍と呼ばれたその類い稀な身体能力で、全身全霊で大蛇丸は振りかぶられた刀を後ろに飛んで避ける。刀が橋に当たり大きな傷痕をつけると大蛇丸は冷汗を浮かべるが、そのすぐ後瞬時に大蛇丸は目を剥いた。
「カブト!」
一瞬だった。いきなり現れた影に気を取られたカブトがその影を注視していた所に、その背後に目にも止まらぬ早さでクナイを持った虚空がカブトの首にその刃を突き立て・・・カブトの首を宙に舞わせた。
あまりにも瞬間の出来事に大蛇丸はカブトと名を叫ぶ、信じきれないといったように。
‘ドサッ’
「・・・言った通りになっただろう。俺が隙を作ってそれを突いた、これはその結果だ」
「・・・潜んでいるとは思っていたし隙を見せる気もなかったけど、まさかここまでやれるとは思わなかったわ・・・貴方も相当の物ね、『朱炎』」
カブトの首が無くなった胴体が橋の上に倒れ込み、奇襲を仕掛けた人物から話し掛けられ、大蛇丸は朱い長髪をなびかせる180cm程の暗部を見て朱炎と名を呼ぶ。



『朱炎』・・・『虚空』が木の葉の暗部として活動を始めてから二年程経ってから、虚空とバディを組むようになった人物。

木の葉の死神に帯同するようになり、その名もあり死者を冥府に誘う漁火と恐れられるようになった。



・・・大蛇丸の耳には勿論朱炎の名も入っては来たが、両者共にその姿を見たのは初めて・・・
(・・・死神の名は伊達ではないようね・・・)
大蛇丸は認識を改めつつも、目の前の二人に対し久しく感じなかった危機感を感じていた。
・・・目の前の虚空が一人なのを見て、場にいない朱炎を警戒したためにカブトを援護するよう大蛇丸は姿を出した。姿を現してから油断していたつもりはない、だが本当に文字通り隙を作らされカブトを殺された。大蛇丸自身いつ朱炎に接近されたか確認出来ず、カブトと引き離されるように動かされたと思ったら、すかさず隙を見つけた虚空がカブトを一瞬で殺してしまって・・・これだけの一連の鮮やかな流れ、大蛇丸は今までに許したことがない。故に脅威を感じずにはいられなかった。
「俺達の名前などお前にはどうでもいい、ここで死ぬお前には関係ない」
「・・・ふふ、大きく出た物ね。やれるものならやってごらんなさい」
朱炎から感情のない殺人宣言をされ、大蛇丸は表面上は余裕を見せつつ喋りつつも腕の袖口から蛇を出して来る。








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