縁を切った先に在ったのは死神の手

これは、ルークがオールドラントで禊をやり遂げナルトの世界に完全移住をした時より半年程前の話・・・
「・・・シズネ、ダンゾウを呼べ」
「はい、わかりました」
それは綱手が一人の男を呼び寄せた事から始まる。









「・・・何の用だ、綱手姫?」
呼び出された顔の右半分を包帯で覆い、右手に重厚な封印を施す老人ダンゾウ。里の最高権力であり呼び出しをかけた火影に対し、慇懃な態度で呼び出した訳を問う。
「単刀直入に言うぞ、ダンゾウ。大蛇丸に『深淵』の二人を差し向けた、任務の内容は殲滅だ」
「・・・っ」
だが綱手も火影、慇懃な態度をあえて気にした様子も見せず相手を見据えながら用向きの本題を淡々と伝え、ダンゾウは静かに目を見開く。
「そうか・・・とうとう決心したか」
「勘違いするな。決心したのではない、時期が来たんだ。暁から離れた大蛇丸の一味の中に、暁の一員のスパイがいると情報が入ってな。そのスパイから大蛇丸のいるアジトの情報を絞り上げる為に、二人を派遣したんだ」
「そしてその流れの上で大蛇丸の一味を壊滅、か」
「そうだ。その中にはお前の目的も入っている・・・とだけ、言っておこう。話はそれで終わりだ」
「ふむ・・・了解した」
報告をしつつさりげなしに添えられた反応を見るカマかけにダンゾウは特に反応を示すでもなく、執務室を退出していく。
「・・・釘はさしておいたから、下手に動きはしないだろう。流石にあの二人相手ではダンゾウも手の出しようはないだろうしな」
・・・ダンゾウの組織する『根』がどれだけ文字通り木の葉内で根を張っているのか、ダンゾウがどれだけ危ないまでの好戦的な改革派なのかを知る綱手は警戒している。木の葉を乗っ取るタイミングを伺っているダンゾウが取る行動を。あくまでこれは可能性でししかないが、それでも弱みを見せればここぞとばかりに付け込むだろうダンゾウの姿を綱手はすぐに想像出来る。
とは言え先手はもう打っている、『深淵』の二人という最大にして最高の一手を。綱手は目を閉じ、二人の戻った後の対処をどうするかを真剣に案じだす・・・






「『深淵』を出した、か。ようやくその時が来たようだな」
だが警戒されている当のダンゾウは至って満足そうに微笑を浮かべていた。
「あまりにも時間がかかるようであればこちらから働き掛けようかと思ったが、『深淵』から機が来たと言うなら根から誰かを付けるまでもない。あの二人なら十分な結果を残してくれるだろう」
・・・忍の本分は自己犠牲、そう考えるダンゾウは『深淵』の二人は信頼出来る存在だと、他人には知られてはいないがそう認識していた。
行動理念こそダンゾウは二人との関係が薄い為にどのようなものなのかを知らないが、時には冷酷非道とも呼べる手段を使い切り捨てるべき物は切り捨てる精神力と判断力があり、圧倒的実力を持ち里の一つや二つ楽々と作れそうなモノを、他里では暗部クラスですら微かにしか名前を知る者がいないほど売名行為を嫌う徹底した謙虚さと里の為に身を粉にして尽くすその姿勢・・・
元々は穏健派が気に食わなかったダンゾウであったが、綱手の元で今ある平和の形を裏から見えないよう誰より力強く支える『深淵』という存在を嫌う事は出来なかった。
「大蛇丸に取り入る事は白紙、だな」
しかし嫌う事が出来ないとは言え、時にはダンゾウの思惑の壁にもなりえる。
自らの目的を果たす為に『根』の誰かを大蛇丸の元に派遣しようと考えていたダンゾウは一人仕方ないと呟きながらその計画を断念し、廊下をゆったり歩いていった。








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