焔と渦巻く忍法帖 番外編

我慢の限界はとうに超えていた(グランコクマの宮殿にある客間の一室にて、ピオニーとジェイドととある人物の三人きりの場面。時間軸は第二十二話の中くらいで、視点はルークとナルトの影分身が覗いていた物)











「・・・とりあえず言いたい事は色々言った。だがまだ気分は晴れる気が全然しない、その理由は分かるな?」
「・・・はい」
とある中年男性を後ろに控えさせピオニーは柳眉を逆立てるよう、眼鏡狸に静かに猛っている。流石に眼鏡狸も目の前の皇帝に今までの対応が出来ず、小さく返事を返す。
「・・・今から俺がやることは個人的なウサ晴らしだ。だが反撃は許さん、許されん立場にあることもわかるな?」
「・・・はい」
ウサ晴らし、そうはっきり言われているのに眼鏡狸に拒否権はないため頷く以外にない。そしてピオニーは拳をポキポキ鳴らしながら眼鏡狸の前に立つ。
「・・・封印術を喰らったとは聞いている。だから一応手加減はするが、大きな怪我をしない保障はない。一通り終わったらコイツに回復させるから、傷や怪我が残るかもとかの心配はするな」
「・・・はい」
そこから後ろにいる第七音譜術士の中年男性を指差すが、その話の中身があまりにも物騒であるのに眼鏡狸は壊れた機械のように同じ言葉でしか肯定出来ない。そしてその言葉を受け、ピオニーは怒りを込めた目で右拳を力強く握る。
「歯ぁ食いしばれ、俺一人の私刑で済ませるだけありがたいと思え」
「はい・・・うっ!」
ピオニーに律儀に返事を返す中、眼鏡狸は突然腹を殴られうめき声をあげ体を曲げる。だがうずくまりそうになる眼鏡狸をピオニーはすかさず軍服の襟を掴んで顔を引き起こす。
「何へばってんだ?まだこれくらいで終わる訳ないだろ」
「ぐっ!・・・うっ!・・・」
そこからピオニーは冷徹な目で容赦なく顔を殴り、腹を殴りと眼鏡狸に相当の暴力を振るっていく。
・・・この皇帝はあまり知られていないが、武に関しても一般兵士とは比べるべくもない程強いという事実がある。貴族たるもの武術もたしなみの一つとして身につける物だが、ピオニーはたしなみの域を超えて武術を趣味としている。武器収集もその一環だ。流石に封印術を喰らっていない時の眼鏡狸程ではないが、それでもその一撃は手加減しているとは言え一般レベルからは大変重い。
見る見る内に眼鏡狸はボロボロになっていく・・・



(流石に幼なじみだからこそ、許せないもんがあるようだな。私刑なんて言葉まで出してボコボコにするほどに。ま、私刑とは言ってるけど皇帝だけじゃなくて配下達の怨みも多大に入ってそうだけど)
(そうでもなけりゃやり切れないんだろうなー、あんな失態犯したら)
そんな様子を影で盗み見ていたルークとナルトの影分身達は読唇術で話しながら、クックッと笑いをこらえていた。
(後ろに控えてる第七音譜術士のオッサンもオッサンだよなー、全く動揺してねぇよ)
(殴られるに相応しい訳聞いてるからだろ。旅の間の話聞きゃ、普通は殺されてもおかしくはない罪を犯してるって気付くってば)
既にかけていた眼鏡も吹き飛び痣だらけになっていく眼鏡狸の姿と、無言でひたすら暴力を振るっていくピオニーの姿を見ているその男性の視線は揺るぐ事は一切ない。それは即ち、私刑を容認していることになる。
「ぐぁっ・・・」
(おっ、倒れた・・・あー、気絶してるなあれは)
すると最後に思い切り振りかぶった渾身の一撃をピオニーはお見舞いし、眼鏡狸を床に倒れ込ませる。そして立ち上がる事も出来ずにいる様子から、大分殴られていたこともあり演技ではなく気絶したのだとルークは見る。
「治療をしておけ。そして目覚めたら伝えろ、レプリカルーク達の元にすぐさま合流しに行けとな」
「はっ、かしこまりました」
その様子を見てピオニーは中年男性からタオルを受け取り手を拭きながら後の対応を告げ、部屋から出ていく。
「・・・はぁ」
そしてピオニーが出ていくと倒れ込んだ眼鏡狸を見て呆れたように溜息をつきながら、男性は譜術の詠唱を始める。
(うっわぁ、すっげぇめんどくさそうに詠唱始めたよ!)
(治療も出来りゃしたくないんだろうな、あのオッサン!やっべぇ、笑いたいから今すぐ消えるってばよルーク!)
(そうすっか!マルクトにいる意味もないしな!)
その様子を見ながらすごい気色満面になっていた二人は会話を終えると、すぐにその場から消える。
その場には眼鏡狸を一人治療する、男性の姿しか残ってはいなかった・・・









END



(裏設定)



第七音譜術士の男性はピオニーに内緒で事情を説明され協力しています。
ピオニーの強さについてですが海外版ではプレイヤーキャラになってる画像を見ましたので、そこから強い設定にしてボコボコにさせました。








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