焔と渦巻く忍法帖 第五話

そのあとミュウを道案内に加えた一行はライガが陣取っている場所へ辿りついていた。



(あれがライガか・・・凛々しいじゃん)
ルークが見たライガ、それは獅子を思わせる容貌に子供の象程もある体格だった。どちらかというとルークはチーグルのような一般的に可愛いと言われるような動物は好きではない。豹や虎のような獣特有の鋭さを見せた野性的な動物が好きだ。



(・・・やっぱこのまま殺させるのは惜しいな)
傍らでルークが説得すると言った筈なのに何故かイオンが説得に出ていた。しかしその説得の内容はここから出ていってくれとだけ言った端的なもの。少しの間一緒にいたから分かるが、このチーグルは良くも悪くも素直に言葉を受け止める。イオンの言葉をそのままライガに一言一句間違える事なく伝えるだろう。ライガがどう返すかを考えないままに・・・



(・・・さて、そろそろいくか。幻術・偽来幻霧!!)
ミュウがその言葉を伝えきれていない状況でルークがいきなり印を組んだ。印を組んだ直後、辺りに霧がたちこめてきた。するとこれまでついてきた修頭胸とミュウとイオンが突然あらぬ方向を向いて喋りだした。その異様な光景を見て先ほどまで殺気だっていた筈のライガが殺気を消して戸惑っている。
〈クイーン、彼らは少し幻を見ているだけです。気になさらなくても結構です〉
するとライガクイーンの前から人間のものではない魔獣の言葉が聞こえてきた。
〈先程までの無礼をお許し下さいクイーン、これからは私達が貴方と会話をさせていただきます〉
クイーンがその言葉の意味から目の前にいる朱色の髪の人間と金髪の髪の少年が他の人間の異常の原因だと察知した。当の二人はクイーンに礼をとっている。しかし何故二人がライガと話せているのか、それは口寄せ用の動物に触れ合う内に魔獣の言葉を理解出来るようになっていたからだ。口寄せ用の動物は最初は人の言葉を理解出来ていない事が多い。故に言葉を教える際に動物側の言葉も理解しなければ互いの気持ちを伝える事は出来ない、それで二人は動物の言葉を理解出来るようになった。ちなみにチーグルは論外だ。あのような生き物は口寄せにもいない。なので二人にもチーグルの言葉は理解出来ない。



〈クイーン、貴方がこのままこの地にとどまればいずれ人間が来てこの地に住まうライガを全て駆逐しようとするでしょう。今はこの場の我々だけですが貴方がここにいることを知りました。よしんば我々を退けたとしてもこの先エンゲーブから食糧が盗まれ続ければ人間達は原因を探ろうと大規模な捜査の手が伸びてきます。そうすれば貴女方は生き残れたとしても多大な被害を被ります。そしてその被害を真っ先に受けるのは貴方が守ろうとしている今にも産まれそうな子供達です。赤ん坊に戦う力を求めるのは酷です〉
〈だが・・・我々には住むべき場所が無い。ここから立ち去る事も出来ん〉
するとルークは何かを感じたのかピクッと頭を上げた。
〈・・・ご安心下さい〉



〈これから貴女方が住まわれた森を再生させますので〉



〈・・・何?〉
〈これは論より証拠、信じられないと仰るのは分かっていますので森の再生の瞬間を御覧にいれてみせましょう〉
〈・・・子供を置いていく訳にはいかん〉
〈それはご安心を・・・影分身の術!!〉
そう言い印を組んだナルトの近くから現れたのは五十人程のナルトの影分身。
〈見ての通り私達が貴方と貴方の子供をお送り致します。心配なさらずとも結構です〉
そう言うとナルトの大部分の影分身達はクイーンの体を支え、残りの影分身が卵を丁重に抱えていた。
〈さあ、行きましょうクイーン。我等がエスコートさせていただきます〉
そう言うとルークは自分とナルトの影分身を作り、その影分身を残して北へと移動していった。




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