焔と渦巻く忍法帖 epilogue
・・・バチカルにて貴族の使用人を勤めた男は結果としては使用人の役目を途中で違える事なく、一般的には生涯をつつがなく終えた。
だが主である貴族がいない時の男の表情は非常に鬼気迫る物で、何か痛みに耐えているようなそんな表情であったと周りの人間達は見ていた。何に苦しんでいるのか、それを周りは理解出来ていなかったが明らかに主がいない場で苦しんでいる事から何か主に反感を持って耐えているのではというのが周りの人間達の暗黙の了解になっていた。そしてその男は突然死んだ・・・四十にも行かず、若い身空で。
原因は一般的には流行り病をこじらせとあるが、死に至る場面を見た者は胸を押さえて倒れた事を知っている。それで男の裏の顔を知っていた者はひそやかに語った、『あれは公爵への恨みを我慢して体に蓄積させつづけ、体の異変に気付けずにいたから死んだのだ』と。
・・・同じくバチカルでレプリカルークが譜石帯に昇って後に王と女王となった二人は政治面で何の役にも立てず、第一子が産まれて以降は一層人々の前に姿を現す事はなくなった。
その時城の中にいる人間達の間にはある不文律があった、『意味のない時はあの二人を会わせないよう』という不文律が。
あくまでも城下には仲睦まじい夫婦として知られているが、城の中という壮大な一つ屋根の下では二人はあまりにもぎこちない表情でそうであるとアピールするため、前陛下の気遣いもあり何かない限りは二人を会わせないスケジュールを組ませていた。そしてそんなスケジュールを二人は何の反論もなく普通に受け入れた事から、不文律の徹底は城内では当然の物となっていた。そんなものだから当然子供はどちらの親とも親子の関係を築けず、祖父にあたる前陛下の教育の元スクスクと育っていく。
そしてその子供が十にも歳が行く頃には、既に幼王擁立の流れが出来、二人は半ば追われるよう自主的にその王位を子供に譲り玉座から離れた。
以降、二人はもう歴史の表舞台にほぼ立つ事はなくなった。儀礼として出なくてはならない行事を抜かして。
そして余生を二人は離れた地で過ごした、前王は城に残り前女王はベルケンドにて療養という形で。これは前女王が体調を崩しやすい状況にあったためと世間には伝えられてはいるが、その当時の二人の近辺で兵やメイドを勤めていた者達には共通して『前王や前の前の陛下達との関係が悪化し、前女王はベルケンドに幽閉された』という考えがあった。
だがそれを喋ったらどうなることかわからないからと、誰も誰にも話さなかった事からその話は封印されたまま二人の生涯は地味に閉じていった・・・
・・・一つ未来が違ったなら彼の者達は自らの罪を自覚せず、のうのうと生き延びていた事だろう。だがそれは許される事はなかった。本来有り得ない世界の壁を破った者と、その者と交流して揺るぎない生き方を身につけた者により。
「お待たせしました、火影様」
火影である綱手の前に四人の暗部が一斉に姿を現し、並び立つ。
「ああ、戻ってきたんだね朱炎・・・早速だけど、お前達の部隊『深淵』に依頼がある。詳しい内容はこれに逐一書いてある。持って行きな」
「はっ」
再会を喜ぶ様子もなく巻物を渡す綱手から巻物を受け取り、ルークは三人とともに姿を消す。
・・・誰がこう呼びはじめたかは定かではない。だがナルトとルーク、『虚空』と呼ばれる死神と『朱炎』と呼ばれる死者を誘う漁火のような二人を形容して畏怖を込めた声でこう呼ばれるようになった。
『深淵』・・・地獄を誘い、そこに対象となったもの達を永遠に突き落とす容赦なき使者達・・・二人にかかって無事だった者はいない、例えどのような腕利きでも。
彼らに睨まれた時点で終わり、その脅威がどれほどかを知っていれば恐々として身分を弁えたかもしれない・・・が、もう終わったのだ彼らの命運は。
「さって、ちゃちゃっと済ませっか」
「だってばよ」
もう二人の心中には裁いてきた愚者達への思いなど微塵もない。全て終わらせた、そして二度と行く予定もない。せいぜい無様だったと笑い話にするくらいのものを、これ以上任務上で議論する価値はない。
シンクとアリエッタを後に伴いながら二人は暗部面の下の表情を引き締め、目的地に向かい闇の中に四人は消えていった・・・
This story is the end
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だが主である貴族がいない時の男の表情は非常に鬼気迫る物で、何か痛みに耐えているようなそんな表情であったと周りの人間達は見ていた。何に苦しんでいるのか、それを周りは理解出来ていなかったが明らかに主がいない場で苦しんでいる事から何か主に反感を持って耐えているのではというのが周りの人間達の暗黙の了解になっていた。そしてその男は突然死んだ・・・四十にも行かず、若い身空で。
原因は一般的には流行り病をこじらせとあるが、死に至る場面を見た者は胸を押さえて倒れた事を知っている。それで男の裏の顔を知っていた者はひそやかに語った、『あれは公爵への恨みを我慢して体に蓄積させつづけ、体の異変に気付けずにいたから死んだのだ』と。
・・・同じくバチカルでレプリカルークが譜石帯に昇って後に王と女王となった二人は政治面で何の役にも立てず、第一子が産まれて以降は一層人々の前に姿を現す事はなくなった。
その時城の中にいる人間達の間にはある不文律があった、『意味のない時はあの二人を会わせないよう』という不文律が。
あくまでも城下には仲睦まじい夫婦として知られているが、城の中という壮大な一つ屋根の下では二人はあまりにもぎこちない表情でそうであるとアピールするため、前陛下の気遣いもあり何かない限りは二人を会わせないスケジュールを組ませていた。そしてそんなスケジュールを二人は何の反論もなく普通に受け入れた事から、不文律の徹底は城内では当然の物となっていた。そんなものだから当然子供はどちらの親とも親子の関係を築けず、祖父にあたる前陛下の教育の元スクスクと育っていく。
そしてその子供が十にも歳が行く頃には、既に幼王擁立の流れが出来、二人は半ば追われるよう自主的にその王位を子供に譲り玉座から離れた。
以降、二人はもう歴史の表舞台にほぼ立つ事はなくなった。儀礼として出なくてはならない行事を抜かして。
そして余生を二人は離れた地で過ごした、前王は城に残り前女王はベルケンドにて療養という形で。これは前女王が体調を崩しやすい状況にあったためと世間には伝えられてはいるが、その当時の二人の近辺で兵やメイドを勤めていた者達には共通して『前王や前の前の陛下達との関係が悪化し、前女王はベルケンドに幽閉された』という考えがあった。
だがそれを喋ったらどうなることかわからないからと、誰も誰にも話さなかった事からその話は封印されたまま二人の生涯は地味に閉じていった・・・
・・・一つ未来が違ったなら彼の者達は自らの罪を自覚せず、のうのうと生き延びていた事だろう。だがそれは許される事はなかった。本来有り得ない世界の壁を破った者と、その者と交流して揺るぎない生き方を身につけた者により。
「お待たせしました、火影様」
火影である綱手の前に四人の暗部が一斉に姿を現し、並び立つ。
「ああ、戻ってきたんだね朱炎・・・早速だけど、お前達の部隊『深淵』に依頼がある。詳しい内容はこれに逐一書いてある。持って行きな」
「はっ」
再会を喜ぶ様子もなく巻物を渡す綱手から巻物を受け取り、ルークは三人とともに姿を消す。
・・・誰がこう呼びはじめたかは定かではない。だがナルトとルーク、『虚空』と呼ばれる死神と『朱炎』と呼ばれる死者を誘う漁火のような二人を形容して畏怖を込めた声でこう呼ばれるようになった。
『深淵』・・・地獄を誘い、そこに対象となったもの達を永遠に突き落とす容赦なき使者達・・・二人にかかって無事だった者はいない、例えどのような腕利きでも。
彼らに睨まれた時点で終わり、その脅威がどれほどかを知っていれば恐々として身分を弁えたかもしれない・・・が、もう終わったのだ彼らの命運は。
「さって、ちゃちゃっと済ませっか」
「だってばよ」
もう二人の心中には裁いてきた愚者達への思いなど微塵もない。全て終わらせた、そして二度と行く予定もない。せいぜい無様だったと笑い話にするくらいのものを、これ以上任務上で議論する価値はない。
シンクとアリエッタを後に伴いながら二人は暗部面の下の表情を引き締め、目的地に向かい闇の中に四人は消えていった・・・
This story is the end
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