焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「なんだ三人とも。今任務じゃないのか?」
「差し当たった任務は片付けといたし、ばあちゃんにも許可は取ってあるから問題ないってばよ」
ルークの室内に唐突に侵入してきた三人の影。その影の一人であり三人の中心にいたナルトの声かけに、ルークは自然と砕けた態度になる。
「どうだったの、首尾は?」
「バッチリ、抜かりなくやって来たぜ」
そのナルトの右隣にいて確認を取ってきたのは三年が経ってルークと同じくらいに背が伸び、腕組みをしているシンク。その顔にはもう仮面はなく、イオンに間違えられないようにと少しは気を使って整えていた髪型を下ろしてキリッとした面立ちを堂々と見せている。更には額当てをして中忍のベストと黒ズボンを着ており、まさに木の葉の忍としての姿そのものと言える恰好をしていた。
「流石ルークです」
「んな褒められる程でもねぇさ、あっちの体制って奴がずさんなだけだし」
更にナルトの左隣にいたアリエッタから賛辞を送られるが、たいしたことないと手をヒラヒラ振るルーク。三年が経ちアリエッタの体格は多少背が高くなったくらいでそこまでの違いはないが、トレードマークであった人形はもう手にはなくたどたどしかった口調も今はただされスラスラ言葉を発することが出来るようになった。上の服はシズネのように黒い着物を羽織り、下は黒いズボンをはいたシンプルな装いとなっている。長い髪は首筋辺りで一つのゴムで束ねられ、またシンクと同じく額当てを身につけている。飾り気こそないがまたアリエッタもその姿で木の葉の忍であるとわかる恰好をしている。
「・・・まぁ積もる話は後だ。とりあえず火影様にこれで終わったって報告してくるから、俺は」
「なら俺達も行くってばよ」
「いや、別に報告に行くだけだしいいぜゆっくりしててお前らは」
「いいんだよ、火影様からルークが帰ってきたら僕達も一緒に来るよう言われてるんだから」
「ん?どういうことだ?」
そんな三人と話しながらも報告を口にするルークに、シンクが意味深な言葉で興味を引く。
「任務があるんだよ。僕達四人が正式に木の葉の里の住人になった出初式の意味がある、火影用意のS級以上の任務がね」
「・・・成程、そりゃ確かに重用任務だな」
「だからアリエッタ達も行くんです」
「はいはい、わかったよ。んじゃ、行くか」
「「「了解」」」
遠回しに大袈裟に言い回す、三年前からしたららしくない言い方で告げるシンクに、ルークは軽く肩をすくめ笑みを見せると出発を口にし、三人が返事をすると全員瞬時に室内から姿を消す。















・・・一般に知られるレプリカルークが再度現れまた再度消えた後、世界はルーク達の思うように動いていった。数年もすればもはや預言があったころが懐かしい、と言わんばかりに人々は預言のない生活に順応していった。順応出来なかった預言信者達もいたことはいたが、後に決起した者達がことごとく制圧されていく姿を見てそれらの人物達も預言が詠まれない生活を次第に受け入れていった・・・そんなふうに世界が順調に動いていく中で、時代に取り残されたように勝手に苦しんでいた者達がいたことは一部の人間以外は誰も知らない。



・・・マルクトにて懐刀と呼ばれた軍人は研究職から離れられず、認められずにずっと暮らしていく内にもう貼付けられた笑みを浮かべることはなくなっていた。ただ幽鬼のよう、感情の失われた暗い表情を浮かべるだけで・・・そして時が経つといつしか皇帝の懐刀だった事実を知る者はいなくなり、誰に讃えられる事もなく逝ってしまった。



・・・ダアトにて導師直属の導師守護役を勤めていた女は誰にも好かれようとせず、誰にも好かれもしなかった為に生涯誰も彼女と関わりを持とうとする人間はいなかった。

更に重ね上げた罪と父母の残した莫大な借金。それは結局借金を残した大元の父母が先に逝ったことを差し引いても生涯で返しきる事が出来ず、彼女に待ち構えていた最後は過労死だった。勿論というのもなんだが葬式など行える遺産もなかったためすぐさま土葬され、そんな骸を弔おうとする友人達や同僚もいなかった・・・ただ一人、その甘さの為に導師という立場をただの名誉職の実権のない立場に落とされた、その導師を除き。



・・・同じくダアトにて大詠師の配下だった女は導師守護役の女と同じく、誰にも好かれもせず慰謝料を払う事に追われ最後は過労死して葬式も上げられず生涯を閉じた。

ただ導師守護役と違い自らをユリアの子孫と自身の系譜を名乗っていた事もあり、その視線の厳しさは導師守護役とは比べる程もないほど苛烈であった。そして時折棒立ちしたかと思って見ていたらいきなりハッとして頭を抱えだす様子が見られた事から、狂人なのではとの見方もされながらなお一層人々に避けられ死んでいった。








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