焔と渦巻く忍法帖 epilogue

・・・そしてやることをやり終えたルークに、もうこの世界に居続ける理由などない。



「さてと・・・後の処理は頼みます、セシル少将」
「え・・・朱炎様?」
戦後処理を始め出す兵士達の様子を見て口を開くルークに、セシル少将は疑問の目を向ける。
「私はこれより、プラネットストームを止めに行きます」
「あっ・・・でしたら、私も共に参ります。それが私の役目ですので」
本来の目的を目的を話され目の前の惨状に気を取られていたセシル少将は失念していたと気を取り直し、付いていくと言い出す。
「いえ、セシル少将はこちらにいてください。これより下に降りればすぐにプラネットストームを構成する譜陣にまで着きますので私一人で十分です。それに・・・プラネットストームを止めたなら私はまた、音譜帯に戻らなければなりません。私の体の音素は今現在も失われている最中ですので、そうしなければ死んでしまいます。そしてそうしてしまえばもう私はこちらに戻ることは出来ません、その瞬間に誰かが側にいたなら私は・・・涙を抑えられる自信がありません・・・」
「っ!・・・そのような・・・」
だが自分がナルトのいる世界に戻る瞬間を見せる気のないルークは、世界に未練があると実際には微塵もない弱さを適当な弁と併せて俯い見せ、セシル少将は悲しそうに目を伏せる。
「・・・ですので、私一人で行かせてください。では・・・」
セシル少将の様子に悲壮さを伴った笑みを浮かべ、ルークはラジエイトゲートの中へと振り返り向かっていく。その悲壮さがまた一層世界を救う自己犠牲の偉大さを伴わせ、一種のカリスマをその背に伴わせ。
「・・・全員、朱炎様に敬礼!」
「「「「はっ!」」」」
セシル少将は無意識にその背に敬礼をし、同時に敬礼をするよう号令された兵士達全てが迷いなく一斉に敬礼をする。
その綺麗に統率された敬礼の姿はルークが見えなくなるまで解除されなかった。












「さってとっと」
だがそんなセシル少将達を心酔させたルークは先程までの悲壮さを消し去り、至って気楽そうに最深部の譜陣のある地に辿り着く。
「うっ・・・」
だがその瞬間懐かしくも脳天を揺する痛みを感じ、ルークは顔をしかめる。
『久し振りだな、ルーク。いや、この世界では朱炎か』
「ローレライか・・・久し振りだな」
脳に直接響く声にローレライだと気付き、普通にルークは返す。
『経過は我も見ていた、そなたはもう行くのだろう。そこにある譜陣で鍵を使いプラネットストームを封じたならすぐに周りに残って漂う第七音素をかき集め、超振動を鍵とともに天まで貫くイメージで放ってくれ。それで我は鍵を受け取れる』
「ああ、わかった・・・早速で悪いけどこれやってると頭いてぇからもう切ってくんねぇ?さっさとプラネットストーム停止させたいしな」
『ああ、わかった。ではさらばだ・・・朱炎、いやルークよ』
「ああ、じゃあな」
ルークに接触してきたローレライはどう鍵を渡すのかの方法を告げ、ルークは了承を返すがこれ以上会話に興じる気のない為に同調フォンスロットを切れと言う。その言葉を素直に受け取りローレライは最後に別れの言葉を暗部名から本名に戻して告げ、ルークは別段気にせずにまた返す。その少し後にルークから頭痛がスッと消える。
「さっ、さっさと済ませるか」
・・・あまりにも最後を飾るには味気なく、ルークは淡々と譜陣の中心へ入っていく。だがそれでいい、この世界には心残りなど一切ないのだ。感傷を覚える気配すら立たないからこそ、ルークはアッサリと事を進められる・・・
‘フゥンッ’
「・・・さて、これでよし。後はすぐに超振動っと・・・」
譜陣の中心に来て鍵を掲げルークが念じると、辺りに浮かんだ譜陣が瞬いてすぐさま消える。それを見て成功だと見たルークはすぐさま超振動を使う為、意識を集中する・・・






‘ドゥゥゥーンッ!’
「!・・・あれは・・・朱炎様・・・」
ラジエイトゲートの外にて死体を相手にしていたセシル少将の目に、プラネットストームが停止してそのすぐ後に天まで貫く超振動の光が映る。その瞬間セシル少将は理解をした、もうあの光の下にはルークはいないのだと。
「・・・作業を続けろ。朱炎様が残した平和への道筋、無駄には出来ん!」
「「「「はっ!」」」」
それを受け止めたセシル少将は悲嘆に暮れるのではなく、兵士に気丈に振る舞い指揮を取ることを選択した。ルークからもたらされた平和を無駄にはしないようにと、固く思うことで・・・












「・・・ふう、終わったな」
そして、木の葉の里の自らの部屋の中。見慣れた景色を見てルークは一人呟いた。
「あ、戻ったってば」
・・・いや、一人ではなかった。








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