焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「それは・・・残党を一掃するためでしょうか?」
「それもあります。ですがそれ以上の狙いとしては言葉は悪いですが、みせしめです」
「みせしめ・・・?」
ルークの言った事の目的をセシル少将なりに検討した質問をするが、ルークは更に理由を追加する。
「確かにこの集団の裏にまだ何か少数でもいたなら、それはまた問題です。ですがこの集団がどんな人物達の集まりであるのか、それを公にして尚且つ残党の始末をつけられたならこの団体とは関係ない未だ預言に未練を持つ方々に対してはっきり示す事が出来ます。プラネットストームを止めてからも尚預言を求めて決起しかねない方々に対し、このような峻烈な仕打ちをするというね」
「成程・・・後々の事を考えて、ですね・・・」
「また更に言うならこの集団がどのような人物達で構成されているかを知ることにより、各国でどれだけの規模で活動していたのかを把握出来ます。それが出来れば反乱を起こしかねない人物達の名前をピックアップ出来て、事前に対応を取りやすくもなります。ただこれはマルクトとダアトに情報を提供して国を上げて協力することが不可欠ですが、それを成せればもう目立った反乱などは起こらなくなるでしょう」
「・・・成程、わかりました・・・すぐさまこの死体達全ての身元を確認するぞ!」
「「「「はっ!」」」」
ルークがみせしめとすることの利点を語り終えるとセシル少将は納得してから兵士達に振り返り、死体の身元確認の命を出す。後ろで聞いていた兵士達はためらうことなく敬礼で返す。
(これで終わりだ、預言に未練を残す元ローレライ教団信者の馬鹿達の希望と足掻きはな)
その光景にルークは誰にも気付かれない程度に喜色を瞳に浮かべる。



・・・宗教というのは熱狂していた時と冷めた時では、人の見方が変わる。ローレライ教団もルーク達の手により三年前から既に堕ち始めていたため、今では熱狂的な信者はルークが首をはねていった連中がほとんどとなった。

そんな状況でこの事件を世界に公表し、処罰の在り方をハッキリとされたならもう決起しようなどという気には到底ならないだろう。今や世界にわずかとなった教団信者どもも。

よしんば信者がまだ足掻こうとしたとしても、周りにはほとんど味方などいない。仮にいたとしてもせいぜい数人単位で活動出来るかどうかが関の山だ。そんな人数で活動しようにも、まず世界を変えられる程のうねりは到底起こせない。

・・・そして手をこまねけばこまねく内に、どんどんと世界は動く。預言があったことが遥か昔の時代へと。そんな時代になってまだ預言を望む人間などまずいるわけがない、青年が老人になって子供に孫が出来る世代になれば預言の利便さなどその子供達に伝わるわけがない。何しろ利便さを伝えようにも実物を拝ませられないのだ、到底次世代の子供達が受け入れられるような物にはなりえるはずがない。

・・・そしてルークはこの死体の山達のメンバーの結構な部分を占めるのは、ダアトで大詠師派と呼ばれていた人間とユリアシティの人間であると確信している。マルクトは預言に戦争での敗北が詠まれていた事で敢えてまだ預言を詠んでくれと願う人間はいないだろうと、いても少数だろうと除外される。キムラスカはインゴベルトとファブレ公爵が預言廃除という考えに至り尚且つ『悲劇のルーク様』がいるので、余程キムラスカに対し反感を持っていなければまず預言になびくことはないだろうと除外される。ただマルクトよりはまだ預言に依存していた面もあり、いるとしたらマルクトよりは人数はいるだろうというのがルークの見立てである。

となれば必然、残ったダアトにユリアシティが俄然怪しくなる。そして調べればすぐにボロボロ出て来るだろう、その面子の正体達が。当然そうなれば世界は預言信者達に対し激しい嫌悪感を抱くことになる上、ダアトを怪しむ目も出て来る。そんな状況で甘い目で対策を取ろうとするイオンの意見など取り入れられないだろう。まず教団の聖地としてのダアトではなく一国家としてダアトを築かねばならないと考えるトリトハイム達の手により、それら預言信者達を排斥といった対応を取るだろう・・・もしトリトハイム達がこれ以上イオンをトップとして飾りでも掲げられない判断したなら、イオンを導師の座から引きずり下ろして自分達がダアトを守ると決めて。

事実、それだけの決意はもうトリトハイム達の中にあるだろう。何しろ失敗すれば今でも立場が悪いのに、更に立場を悪くするのだから・・・



・・・ルーク達が作った時代の流れと、聖地と呼ばれた地にいるルーク達によって心変わりした守護者達の存在・・・この二つがある限り、二度とローレライ教団はその意味を戻すことはなく預言も復活することはない。ルークは自信を持って言える、『教団を絶対と掲げていたダアトは終わりだ』、と。








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