焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「船があります・・・それも一隻ではなく、何隻も・・・」
「決起を待って、水面下で同志を集め武力を蓄えていたのでしょう。とは言えあれが全戦力かそれに近い戦力、あれらを撃退すれば以降はもう武装勢力などは出て来なくはなると思います」
「そう、ですか・・・」
その陸地に付けられた何隻かの船達を見てセシル少将は表情を曇らせ、ルークはあれらを切り抜ければもう大丈夫と別段普通に返す。だがセシル少将はこの一隻にある戦力のみで何隻もの武装勢力と戦えるのかと、不安を隠せずにいる。
「・・・セシル少将、証拠は残すようにしますのでバチカルに戻った後は色々お願いしますね」
「えっ・・・!?」
そんなセシル少将にルークはその後の始末を頼み、どういうことかと振り向くセシル少将の目に映ったのはいきなり船頭まで飛び、そこに着地したルーク。そのあまりの動きの違いにセシル少将が驚きを隠せずにいると、ルークは笑顔で振り返る。
「じゃ、行ってきます」
「!?」
まるですぐそこまで買物にでも行くかのような気安さで行くと告げると、ルークは船から飛び降り目の前の陸地目掛け水面を一気に走り出す。その光景を見てセシル少将はもう何も言えず、ただ目を丸くする。
「下忍ですらねー雑魚相手にしても、面白くもくそもねーけどさ・・・自分の意志を込めた足で歩こうとすらしねー赤ん坊以下の餓鬼をほっとくってのは、俺の心の中でしこりになりそうなんでな」
水面を一気に駆け抜け、ルークは自らが愛用する刀を抜くと同時に陸地にたどり着く。その目の前にいたのは、まだルークが来た事を認識しきれていない武装勢力達。



「だからさ、死んでくれよ」



そして口を開いた瞬間、ルークは全ての感情を一切顔から排し、場から一瞬で姿を消した。












・・・そしてルークから遅れる事、数十分。セシル少将の乗った船が陸地に接岸する。
「急げ!朱炎様の後に続け!」
「「「「はっ!」」」」
それを待っていたセシル少将はすぐさま号令をかけ、配下を引き連れ一気に上陸して走り出す。いきなり水面を走り出し先行で敵に突っ込んで行ったルークをなんとしても助けねばと思っているのだろう、例え手遅れの線が強くとも。
「「「「・・・っ!?」」」」
だがすぐにその足はセシル少将を先頭に止められた、誰が合図を出した訳でもなく。その上セシル少将の顔には冷や汗と驚愕が浮かんでいる。恐らく同じよう立ち止まった兵士達の兜の下はセシル少将と同じようなものだろう。
・・・そうなる理由は誰の目にも明らかだ、何故ならセシル少将達の目の前にある光景は・・・



「これを全部、朱炎様が・・・!?」
セシル少将が呆然と呟く・・・彼女が目にした物、それは胴体と首がことごとく離れた死体達が凄惨に大地にぶちまけられたものだった。パッと見ても百は死体の数は下回らず、その中に誰ひとりとて立って活動しているモノなど見受けられない。
「・・・あれは・・・」
・・・そう、この状況を生み出した者以外は。
「朱炎様・・・」
惨劇の中心にいた後ろ姿のルークを見つけ、畏怖が多大にこもった声で暗部名を呟く。その声に気付いたようルークは振り返りセシル少将達の元に歩き出すが、その身なりには血の一滴すらも付着していない。
「あぁ、セシル少将。お待ちしていました」
「・・・いえ、遅れて申し訳ありません・・・」
「大丈夫です、元々私一人で片付ける予定でしたので」
「・・・!」
結構な兵と戦ったはずなのに何事もなかったかのよう、当然の事だと話すルークにセシル少将は返す言葉がなくなる。
「さて・・・セシル少将に、お願いしたいことがあります」
「・・・は、なんでしょうか?」
しかしそんなルークがあえて頼み事をするということに、頭の中が色々なことでごちゃごちゃなセシル少将は表面だけは凛とした表情で何なのかを聞く。



・・・そしてルークが告げた事が、世界に残ったローレライ教団の残滓を片付ける一手となる。
「この人達がどこの誰なのか調べ、そして船をバチカルまで持って帰るよう押収してください。そして誰がどのように協力しあってこのようなことを為したのか、調べあげてはもらえないでしょうか?」








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