焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「・・・ならば朱炎様、ラジエイトゲートに着く前にはもう艦隊戦になると見た方がよろしいのでは?敵もそのような理由でしたら、まずこちらに近付く前に貴方を撃墜せんと砲撃を仕掛けて来るのでは・・・」
「いえ、その線は薄いです」
「え?」
預言信者達がラジエイトゲートに集結しているだろうことに納得したセシル少将は、今度は海上での戦いになるのではとルークに聞くがそれを一蹴する。
「確かに私を殺せば預言を詠み続ける環境を維持出来る為、向こうも海の藻屑と私を変えた方が楽だろうとは思うでしょう。ですがそれをやってしまえば、このローレライの鍵もろとも行方知れずにしてしまう可能性が非常に高くなります。そうしてしまえば向こうは士気が下がる事もありますが、それ以上に世界と対等に渡り合う切り札を失う事を示します。まず海上で向こうが襲い掛かって来る事は有り得ません」
「士気が下がり世界と対等に渡り合う・・・どういうことですか、朱炎様?」
ローレライの鍵を手に取り話すルークに、セシル少将も鍵を見てからルークに訳を問う。
「ローレライの鍵は預言を詠んだユリアの形見でもあり、ローレライの力の結晶でもある唯一無二の伝説の存在です。向こうにとって私は邪魔とは言え、流石にローレライの鍵は意志を持っていない事もあり敬愛すべき対象のままでしょう。そんな存在を私共々海の藻屑へと変えてしまう事は向こうも望んではいないでしょう。そして仮に私達が任に失敗した場合、鍵を奪われたか奪われてないかで向こうの命運も決まります・・・もし奪われてない場合でしたら、まずキムラスカ・マルクト・ダアトの三国統合の軍により言い訳を聞く暇もなくラジエイトゲートにいる面々は誅殺されるでしょう。当然です、ローレライの鍵というプラネットストームを止めれるただ一つの存在を行方知れずにしてしまったんですからね。ただローレライの鍵を向こうが所持出来ていたなら話はまた違います。向こうにプラネットストームを止めれる決定的な切り札が手にある以上、いかに三国が協力しようと安々と預言復活から手を引くはずがありません。それどころか向こうはこのような要求すら出す可能性があります。『本当にプラネットストームを止めなければ世界が滅びるというような状況でなければ、この鍵を渡す気はない。それより早く以前のような預言が普通に詠まれる状況に戻せ、でなければローレライの鍵を海の藻屑に変えてもいいんだぞ?』・・・と」
「!それは・・・最早テロリストとしか言えません・・・!」
「そう。ですがやるでしょうね、未だ預言復活を願う者達はそれこそなりふり構わず鍵を手に入れたなら。だからこそ向こうは慎重に海上戦を避け、地上のラジエイトゲート入口で待っているはずです。確実に鍵を手に入れるために・・・だから艦隊戦に関しては過剰な心配は無用だと思います」
「はい・・・っ!」
艦隊戦はないと訳を言い終え鍵を納めるルークが見たのは、覚悟を決めるかのよう真剣な眼差しで自らを見つめて来るセシル少将。
・・・ルークの話を聞いて、自らの役目が重用なのと戦場になるからには決死の意志を定めねばならぬと思ったのだろう。
「セシル少将、そんなに力を入れる必要はありません。抑えて下さい、まだラジエイトゲートは先です」
「・・・はっ、失礼しました」
その意気を見てルークは力を抜くよう言い、セシル少将は力の抜けきれない敬礼で返す。



(言い過ぎたかな?でもま、こうやってやる気出してくれんのは好感持てるんだけどさ)
そんな様子に、心中でルークはラジエイトゲートにいるだろう預言信者達の取るだろう行動を包み隠さず言った事をちょっとだけ失敗かなと思っていた。
・・・いくら焦りの渦中にあるとは言え向こうもある程度は慎重に考える、ローレライの鍵に関しては特にデリケートにだ。だからこそ向こうからしてみれば鍵の事まで考え、秘密裏に集まって事を成そうとしている気のはず・・・もうルークにその動きが悟られているとは知らずとも。
そんな連中が取るだろう大胆かつ繊細(だと思っている)な行動を、この責任感に満ちたどこぞのエセ軍人達などと比べるまでもなく立派な女将校の前で明かしたのはいらぬ焚きつけだったとルークは思った。
(まぁいいや、どうせすぐ終わるんだし)
とは言え別に大したことではないとすぐにルークは考えを切り替える。あくまでも自分に帯同させたのは、事後処理を任せる為のものなんだと思いながら・・・









・・・そして数日後、ルーク達の前にプラネットストームが未だ活動する大元のラジエイトゲートのある陸地が姿を現した。









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