焔と渦巻く忍法帖 epilogue
その理由はルークがもう言いはしたが、やはり猪思考姫が本物の『ナタリア王女』でないからに尽きる。
ただでさえ猪思考姫はインゴベルトの不興を買い政治に関わる権限を剥奪されているのに、煙デコと結婚などしたくないと否定が出来るはずがない。まずしたらしたで確実に何を言っていると言われて黙殺され、強制的に子作りをせざるを得ない状況に陥るだろう。
いや、それならまだ表向きの地位がちゃんと残るだけマシと言える。猪思考姫はここまでは想像は出来ないだろうが、猪思考姫にとっての最悪のシナリオはまた別にある。それは煙デコと肉体の契りを交わす事すらなく暗殺されてしまうこと、だ。
・・・シチュエーションは容易に多々想像出来るが、大元に来る動機はこうだ。‘最早女王にすらなれない偽者の王女を擁護する意味もない、ならいっそナタリアを擁立して国を割ってまで対立しようとする輩が現れる前に始末しよう’・・・といった具合に。
キムラスカに王女が偽者だと知っている人物は惑星屑を殺した時謁見の間にいた兵士を除けば、インゴベルトとファブレ公爵に煙デコにフェミ男スパッツだけしかいない。フェミ男スパッツは政治に関わる権限はないのでこれには関係ないが、残りの三人は猪思考姫が婚約を破棄すると明かしたなら非常に面白くない事態になる。何せ何年も前から決まっていた事を今更自身の気持ち一つで変えるのだ、それも記憶の中の『理想のルーク』しか愛せないという極めて身勝手な理由で・・・これだけの侮辱があろうか?
それに名前だけとは言え一応王女は王女、その発言が与える影響も少なからずあると言っていい。そんな王女が王と対立などという事態をハイエナのような輩が知れば、対立する猪思考姫をどうにか取り込み国を取り込もうとする可能性すらある。それはすなわち国の危機、猪思考姫のせいでキムラスカが滅びる事も有り得る。
・・・それらを踏まえれば何か起きる前にと、未然に事態を防ぐため猪思考姫を殺す事をインゴベルト達は選びかねない。もちろんそれは最終手段であるが、猪思考姫がとことんインゴベルト達と対立するようであればそうすることを三人は辞さないだろう。
ただ猪思考姫はそこまでは気付けておらず、ただインゴベルト達は味方ではないとルークに気付かされただけ・・・それだけで狂ったようになったのだ。その態度からどれだけ自らの『理想のルーク』でない、目の前の『ルーク様』とのこれからの気まずい生活を思い浮かべたのかがわかる。流石に自分がもう煙デコから離れることも出来ず、かと言って三年間で煙デコに行っていたような自分勝手で苛烈な態度でいれるとも思っていないのだろう。
・・・最早、猪思考姫は『理想のルーク』とは掛け離れた煙デコに刃向かう事は出来ない。せいぜい出来ることとすれば、煙デコの機嫌をせいぜい損ねないようにと当たり障りのない事くらい。だが猪思考姫は基本的に媚びへつらうなどと言った行動に関してのスキルは皆無に等しく、同時に我慢が続くかどうかも非常に怪しいと言える。そんな猪思考姫ではボロを出す可能性の方が高いとしか言えない。
そしてそんな猪思考姫と暮らさなきゃならない煙デコは煙デコで、また苦しむ事がある。それはこれから絶対好きになれない女と共に暮らし続け、尚且つその女と契りを交わして子を孕ませなければならない事だ。猪思考姫にしてみれば既成事実があれば下手に別れられないだけに歓迎すべき事だろうが、反面変な所で潔癖な考えを持つ煙デコは本性を知っただけに苛立つ姿が目に見える。
・・・よしんばそういったわだかまりを我慢して乗り越えて子供を作ったとて、残った結末はいよいよもっての遠くない未来での玉座からの撤退だ。どうあがいたとて、王と女王としての明るい未来などあるはずがない。せいぜいやれる事は周りには自分達はうまくやってると見せるだけ見せて、裏では一言も喋らない仮面夫婦になって人々を騙すくらいだ。
・・・もうこの二人に待つ未来など、一片の笑みすら本気で浮かべる事もない未来でしかない。ただ互いを心で罵り合い、ただ苛立ちを心に秘める以外に互いの存在を見る事しか出来ない。それも今までルークに向けていた勘違い分の感情を、更に相手に向ける感情に上乗せした形で。
・・・二度とこいつらの道は同じ志の上では交わり合わない、それどころか時には邪魔者として互いを認識しあうだろう・・・ルークは後は時が更にコイツらを壊してくれると、今の既に壊れている二人に冷たい目で一瞥をくれると、パッと髪を握ってた手を離す。
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ただでさえ猪思考姫はインゴベルトの不興を買い政治に関わる権限を剥奪されているのに、煙デコと結婚などしたくないと否定が出来るはずがない。まずしたらしたで確実に何を言っていると言われて黙殺され、強制的に子作りをせざるを得ない状況に陥るだろう。
いや、それならまだ表向きの地位がちゃんと残るだけマシと言える。猪思考姫はここまでは想像は出来ないだろうが、猪思考姫にとっての最悪のシナリオはまた別にある。それは煙デコと肉体の契りを交わす事すらなく暗殺されてしまうこと、だ。
・・・シチュエーションは容易に多々想像出来るが、大元に来る動機はこうだ。‘最早女王にすらなれない偽者の王女を擁護する意味もない、ならいっそナタリアを擁立して国を割ってまで対立しようとする輩が現れる前に始末しよう’・・・といった具合に。
キムラスカに王女が偽者だと知っている人物は惑星屑を殺した時謁見の間にいた兵士を除けば、インゴベルトとファブレ公爵に煙デコにフェミ男スパッツだけしかいない。フェミ男スパッツは政治に関わる権限はないのでこれには関係ないが、残りの三人は猪思考姫が婚約を破棄すると明かしたなら非常に面白くない事態になる。何せ何年も前から決まっていた事を今更自身の気持ち一つで変えるのだ、それも記憶の中の『理想のルーク』しか愛せないという極めて身勝手な理由で・・・これだけの侮辱があろうか?
それに名前だけとは言え一応王女は王女、その発言が与える影響も少なからずあると言っていい。そんな王女が王と対立などという事態をハイエナのような輩が知れば、対立する猪思考姫をどうにか取り込み国を取り込もうとする可能性すらある。それはすなわち国の危機、猪思考姫のせいでキムラスカが滅びる事も有り得る。
・・・それらを踏まえれば何か起きる前にと、未然に事態を防ぐため猪思考姫を殺す事をインゴベルト達は選びかねない。もちろんそれは最終手段であるが、猪思考姫がとことんインゴベルト達と対立するようであればそうすることを三人は辞さないだろう。
ただ猪思考姫はそこまでは気付けておらず、ただインゴベルト達は味方ではないとルークに気付かされただけ・・・それだけで狂ったようになったのだ。その態度からどれだけ自らの『理想のルーク』でない、目の前の『ルーク様』とのこれからの気まずい生活を思い浮かべたのかがわかる。流石に自分がもう煙デコから離れることも出来ず、かと言って三年間で煙デコに行っていたような自分勝手で苛烈な態度でいれるとも思っていないのだろう。
・・・最早、猪思考姫は『理想のルーク』とは掛け離れた煙デコに刃向かう事は出来ない。せいぜい出来ることとすれば、煙デコの機嫌をせいぜい損ねないようにと当たり障りのない事くらい。だが猪思考姫は基本的に媚びへつらうなどと言った行動に関してのスキルは皆無に等しく、同時に我慢が続くかどうかも非常に怪しいと言える。そんな猪思考姫ではボロを出す可能性の方が高いとしか言えない。
そしてそんな猪思考姫と暮らさなきゃならない煙デコは煙デコで、また苦しむ事がある。それはこれから絶対好きになれない女と共に暮らし続け、尚且つその女と契りを交わして子を孕ませなければならない事だ。猪思考姫にしてみれば既成事実があれば下手に別れられないだけに歓迎すべき事だろうが、反面変な所で潔癖な考えを持つ煙デコは本性を知っただけに苛立つ姿が目に見える。
・・・よしんばそういったわだかまりを我慢して乗り越えて子供を作ったとて、残った結末はいよいよもっての遠くない未来での玉座からの撤退だ。どうあがいたとて、王と女王としての明るい未来などあるはずがない。せいぜいやれる事は周りには自分達はうまくやってると見せるだけ見せて、裏では一言も喋らない仮面夫婦になって人々を騙すくらいだ。
・・・もうこの二人に待つ未来など、一片の笑みすら本気で浮かべる事もない未来でしかない。ただ互いを心で罵り合い、ただ苛立ちを心に秘める以外に互いの存在を見る事しか出来ない。それも今までルークに向けていた勘違い分の感情を、更に相手に向ける感情に上乗せした形で。
・・・二度とこいつらの道は同じ志の上では交わり合わない、それどころか時には邪魔者として互いを認識しあうだろう・・・ルークは後は時が更にコイツらを壊してくれると、今の既に壊れている二人に冷たい目で一瞥をくれると、パッと髪を握ってた手を離す。
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