焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「貴方方が私に対しいい感情を持っていない事は三年前よりよくわかっています。ですがそれを分かって尚、これだけは失礼と知っていながら飾らず本音で言わせていただきます・・・何勘違いしてんの、てめぇら?」
「「・・・!」」
ニッコリ笑顔から丁寧な言葉遣いを消し、毒塗れの本音を向けるルーク。だがその言葉に二人は一切反論が出来ず、意識せずに冷や汗混じりでガタガタと震えている。何故ならルークが行っているのは質量を持ったかのようにひたすら重い殺気を室内全てに張り巡らしているからだ。
「言わば俺がやってることって、善意に基づいたボランティアなんだぜ?プラネットストーム停止もそうだけど、てめぇら全員の処遇に関してもだ。鍵を送りゃてめぇらがやった?ハハッ、よく言うぜ。今のてめぇらがいるのって誰のおかげだ?てめぇらがここにいんのは、俺達のボランティアの結果な訳じゃん。ボランティアに助けられてる立場のてめぇらがボランティアをした俺に恩返しどころか、それを仇で返すようなことがよく言えたな。えぇ、おい?」
‘ポンポン’
「「・・・っ!」」
素の口調で二人に近付くルークは上機嫌そうに顔を覗きながら二人の頭をポンポンと叩くが、それでも無駄なプライドが高いだけの二人は一切文句も何もなく、それも合わせて来るルークの目すらも反らしてしまっている・・・余程今までに感じた殺気の質とは違いすぎるのだろう。
圧倒的恐怖とは与えられると、尊厳も何も人は捨ててしまう。おそらく今頭を叩いているルークの手は二人にとって、凄まじい凶器と同等に感じてるだろう。
「おいおい、どうした?訳があるならちゃんと言ってくれよ。勘違いなんかしてない、恩を仇で返してないってその訳をよ。ん?・・・なんか言ってくれよ?じゃねぇと俺」



「お前らを今すぐ壊したくて、殺したくて仕方なくなっちまうぞ?」



「「っ!!?」」
‘ゴツッ’
・・・殺気に質量があるなら、最後の笑みをはらんだ海の底を思わせる程ほの暗い一言により放たれた更なる殺気で間違いなく圧死させることが出来る。そう思える殺気に二人は膝から崩れ落ち、下を向いてしまい・・・
「うっ・・・うっ、ひぐっ・・・」
「うおぇぇぇっ!」
‘ボトトトトトッ!’
「あらら、泣いて吐いちゃったよ。そんな脅かした覚えないんだけどな、俺」
猪思考姫は唐突に泣き出し、煙デコは唐突に恥も外聞もなく地面に遠慮なく吐瀉物をぶちまける。だが二人は濡れてしまうのも関係なくただそうするばかりで、ルークは吐瀉物を後ろに飛んで避け心外だと言わんばかりの声を出す。が、二人を見下ろすルークは周りの殺気を引いてない上、顔は笑みを浮かべたままだ。
「・・・おい、立ち上がれよ。吐いたり泣いたりしても納得いく答え聞くまでやめねーぞ、俺は」
だがこれだけで終わる気が一切ないルークは情け容赦なく二人の髪を後ろから回り込んで掴み、顔を引き上げさせる。
「「うぅぅぅ・・・」」
だが煙デコは口元を汚し、猪思考姫は顔全てを液体に濡らしながら虚ろな目元になっている。その様子に反論する気など全く見えはしない、力が残ってるかどうかなど一目瞭然だ。



(これでもう無駄な反論は一切出て来ねぇな。後はゆっくり時間をかけて・・・こすように、すり潰すだけだ)
・・・ルークに未だに二人が反感を持っている訳、それは心の底からルークに畏怖を抱いていないが為。元々旅をしていた同行者達の中でも心を壊すのに時間が必要な二人なので必要以上に脅しをかけなかったルークだったが、ここに来て実際に八つ当たりをぶつけられた為にルークは最後だからと植え付けることにしたのだ。細胞レベルで恐れる程ルークという存在を身に染ませ、絶対に思い上がらせないようにして八つ当たりの対象にすらさせないよう・・・










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