焔と渦巻く忍法帖 epilogue

そしてその後、ルークはインゴベルトの誘いにより共に城の中に退出した。
(ま、表向きは俺は立派な伝説だかんな。そんな人物を放っておくのもまずいって思ったからなんだろうけど、丁度いいや)
ルークはそんな行動を取ったインゴベルトの内心を見抜いていた、民の心を得る為の打算だと。だが国を動かすには打算も必要だと考えていることと、公に城に入れる事を考えればルークに断る理由は存在しなかった。









‘コンコン、ガチャッ’
「失礼します」
「・・・はい、なんですか?」
そしてルークにあてがわれた客室でルークは椅子に座りゆっくりくつろいでいたが、ノックと共に入室してきた兵士にルークはなんなのかと視線を向ける。
「その、貴方と話がしたいと『ルーク様』とナタリア様がこちらに来ているのですが・・・」
「(不機嫌丸出しって感じか、相変わらず未熟だな煙デコ達)・・・わかりました。お入りいただくよう、お伝えください」
「はっ!」
兵士はルークに随分と言いだしにくそうに煙デコ達が来ていると言い、その様子にルークは兵士がどういう風に詰め寄られたかを思い同情の視線を見せながら入室を許可する。
そして敬礼を返した兵士が退出して、数秒もすると・・・
‘ガチャッ!・・・バタン!’
「・・・お久しぶりです、『ルーク様』、ナタリア様」
「「・・・っ!」」
突然勢いよくドアが開かれ二人分の人影が入ったと思ったら乱暴にすぐ閉められた。その乱雑な仕草にルークは一切意を介さずただ丁寧に頭を下げ再会の挨拶をするが、先程から不機嫌であった人影の正体の煙デコと猪思考姫は一瞬にしてまた更に不機嫌そうにルークを睨みつける。
「てめぇ・・・っ!よくその面俺の前にのこのこと晒せたな・・・っ!」
(同じ顔の癖に何言ってんだよ、つーか口調一切変わってねぇし。三年間チンピラから脱皮出来なかったのか?下手すっとセミよりなげぇんじゃねぇの、反抗期って殻を脱ぐの?)
そこらの三下が吐くにしてもあまりにも芸が無さ過ぎる決まり文句に、盛大に心で毒づくルーク。だが表面上では一切そんなそぶりを見せず頭を上げる。
「面、と言いましても私は元々プラネットストーム停止を決めたならこちらに来ようと決めていましたのでそう言われましても・・・それとも貴方は私が来ないまま、国の決定であるプラネットストーム停止が出来ない方がよかったとおっしゃるのですか?」
「っ!・・・そんなことは言ってねぇ!」
そして個人的感情を優先させるのかと丁寧に問うルークに、煙デコは明らかに戸惑いその間を掻き消そうと無駄な虚勢に切り替えすぐに否定する。
「見ていたって言うんなら鍵だけ俺の所に送りゃいいって意味で言っただけだ!てめぇに使えるなら俺に使えない道理がないからな!そうすればわざわざその面を見せる意味もなかっただろうが、この屑が!」
「そうですわ!貴方が来なくとも鍵を送って来たなら、私達がプラネットストームを止めましたわ!」
だがその勢いそのままに煙デコは鍵だけよこせばよかっただろうと言い、更に便乗とばかりに猪思考姫も煙デコに乗っかって勢いよく詰めて来る。
「・・・そんな風に私に責任やら抑えきれない感情を押し付けて、楽しいですか?」
「「・・・っ!?」」
その二人の八つ当たりと言えるルークへの言動に、ルークはあまりにも不自然な程ニッコリとした笑顔で優しく問い掛ける。だが優しいはずであるその顔を見て、二人が浮かべた表情は凍り付いた恐怖の物だった。










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