焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「私はローレライとともに音譜帯よりこの下界の様子を伺っておりました、どのような結論を人々は下すのかと・・・そして今、陛下はハッキリと示されました。プラネットストームを止めると。その意志をローレライが確認した為、私はここにこの通り鍵と共に送り出された次第です」
「お、おぉ・・・そうか・・・」
‘あれが、ローレライの鍵・・・’
‘三年前鍵をダアトで見たという人達の話そのままの形だ・・・!’
顔を上げ綺麗に場に現れた訳を述べつつ、鍵を献上するかのよう両手で持ち掲げ上げるルークにインゴベルトは引き攣りながらも威厳を保とうと返し、聴衆達は鍵を見てあれかとボソボソと話をする。
「私がこの場に来た訳としてはマルクトもダアトもプラネットストームを停止されることに同意されたとのことで本来でしたらその意志を確認次第ラジエイトゲート直接行ってもよかったのですが、いきなりプラネットストームを予告も無しに止めては人々が混乱するかと思いましたのでローレライにそう上申してこちらに送っていただいた次第です」
「・・・ふむ、成程。それはありがたい・・・」
更にルークは鍵を納めるとこの場に現れた訳を詳しく至極真っ当に聞こえる話し方で話し、インゴベルトも威圧を感じないそれに調子を戻し口元を抑えながら納得する。
「それでつきましては陛下と、後はゼーゼマン殿にお願いがございます」
「・・・なんだ?」
「・・・私にも、ですか?」
そんな様子のインゴベルトを見てルークはインゴベルト、そして場に来ていたゼーゼマンを見て願い事があると神妙に口にし二人の疑問の視線を自らに持って来る。
「マルクトとダアトに文を送り、プラネットストームを私が止めに行くという趣旨をピオニー陛下と導師イオンにお伝えいただけないでしょうか?今申し上げたよう、いきなりプラネットストームを止めたなら人々の不安を招きます。故にお二方にはそれぞれにそのことをお伝えしていただきたいのです」
「・・・ふむ、確かに我々だけがプラネットストーム停止の為にそなたがラジエイトゲートに行くのを知っておるのはマルクトとダアトに失礼に当たるな・・・わかった、そうしよう。ゼーゼマン殿もピオニー陛下にその旨を伝えていただけますかな?私は導師にその旨を伝えましょう」
「えぇ、そういうことなら慎んでお受け致します」
‘‘‘‘・・・っ!’’’’
そこから丁寧に申し上げられたマルクトとダアトへの気遣いを見せた言葉に、インゴベルトとゼーゼマンは両名納得して首を縦に振り、ほとんどの聴衆達は後ろ姿しか見えないルークの姿を敬うような視線で見ている・・・だがそんなルークを極めて面白くなさそうな目で見ている者がいる。
(だせっ!恨み言も何も言えねーまんま、ムカつくって目で言うしか出来ねーのかてめぇら?自分から得ようとせずに放棄した信頼を俺が安々と手に入れてるからって、わかりやすい逆ギレなんてださくて仕方ねぇよ!)
その視線の元とはもちろん、煙デコと猪思考姫。誰も二人に視線を向けてないのを知ってか知らずか、まぁ知らない方が二人らしいと言える。抑えてはいるが誰が見ても異様に力の入った視線をルークに向けており、その立場を逆恨みしているのがよく分かる。その視線を受けてルークはその感情とは正反対に、二人を心で嘲り笑っていた。
(ま、言いたい事があんなら言わせてはやるか・・・どうせ最後の仕上げには少し時間がいんだ、それまで暇潰しがてら付き合ってやる・・・ベコベコにな)
そしてルークはある気配をそっと後ろの方から感じつつも、時間があるからついでだと煙デコ達の相手をしてやろうと思いながらまた口を開く。
「それでは陛下、私はその返答が来るまでこのバチカルに滞在したいと思います。連絡が参り次第、ラジエイトゲートに向かいたいと思います」
「うむ・・・そうしてくれるなら助かる」
「では私からの話は以上です。機が訪れたとは言え、突然成人の儀に乱入したこと・・・慎んでお詫び申し上げます」
「いや、よい。そなたの行動は世界に是非とも必要な事でわしもこの場で言うにはあまり相応しくない事を言ってしまった。そのことを責める気はない」
「ありがとうございます」
一先ずはこの場を先に終わらせようとルークはその話を打ち切る流れを作り、インゴベルトもその声に応じる。そして互いに非礼を詫び、最後にルークの謝礼で終わる。









・・・そしてそれから少し儀式特有の回りくどいやり方はあったが、中断されていた成人の儀はすぐに終わりを告げた。








21/37ページ
スキ