焔と渦巻く忍法帖 epilogue

(見方によっちゃ緊張してるように見えはするけど、あの影の落ち方は明らかに異常だぞ・・・!本意じゃないって明らかに分かる上に、あの様子じゃ大した業績も残せなかったようだな・・・笑えるぜ!)
徐々に城の前に設置された演説台に近付いて来る一同を見て、ルークは三年の間に何も出来なかったのだと確信を得つつ心で爆笑していた。



・・・明らかに煙デコ達は本意とはしていない状況とは言え、賽は既に投げられている。ルーク以外は緊迫した様子でインゴベルトが台の中心にある拡声器の前に立つのを見届ける。
「・・・この場に集まってくれた諸君。こたびは『ルーク・フォン・ファブレ』の成人の儀を共に祝ってくれる事、とても嬉しく思う」
‘‘‘‘・・・’’’’
まずは軽い挨拶から。その様子に聴衆達は真剣に聴き入るが、辺りをよく見るとほとんどがどうもむず痒さを感じているような表情にも見える。
(あーあー、案の定だ。ここに来てる人達のホントの目的は煙デコの成人の儀なんかじゃない、こうやって公に成人の儀をするに至ったホントの理由だろうな。ククッ、大した愛されようじゃん『ルーク様』?)
その様子にルークは理由に当たりをつけ、盛大な皮肉を煙デコに送る。



・・・そう、この場にいる人間達の大まかな目的は煙デコなどではない。世界の行く末だ。

・・・よくよく考えて欲しい、次期王様確実とは言え今この場ですぐさまその地位の継承をするでもなくただ成人を祝うだけの参拝自由の行事・・・もし他に何か起こりそうな背景がないなら、別に興味を強く持つ理由がない。王族が好きだとか貴族として場に出なければならないとか、そういった背景があるなら別だろうが、そもそも一般市民の中には王族の顔すら知らずに生活してる者がいるくらいだ。そんなふうに王族と直に接する機会もある訳でもないのに、顔を知りたいくらいの興味本意ではここまでの人数はまず集まらないだろう。

・・・だからこそやはり、聴衆達の興味は世界の行く末にある。何せ王族の顔を知るだけと世界がどう変わるかを知るかでは、天と地程も違う。片や顔を覚えてこんな顔かと思うだけ、片や世界の行く末を知ることは自らの人生に今後大きく関わって来る事・・・目的が違えばこれ程の差がつく。

・・・これは望まれるべくして望まれた舞台、国の重鎮達、民、そして世界の為に作られた舞台・・・だがその望まれた物の中に、煙デコの成人を祝うなどという物はない。下手をすれば成人の儀がついで、と思っていそうな人間もいるくらいだろう。

・・・栄光の未来が見えずどんよりしてる猪思考姫とともにいる煙デコがそれを悟っているかは定かではないが、まぁそれはどうでもいいことだ。どうせ王様という名の玉座に座る、動く置物になることは確定なのだから。数年後には・・・












「・・・ここで、この場を借りて皆に言いたい事がある」
(おっ、そろそろか)
そんなオマケに等しい、形はちゃんとした成人の儀を右から左に流しつつ、真剣に聞くフリしてだらけていたルークの耳にインゴベルトが空気を改め一大決心を明かすかのような表情になる。
ちなみに言葉は入って来ずとも、儀の間の不機嫌面の二人の顔を見て大層ルークは楽しんでいた。
「こたびこの場にマルクトのピオニー陛下の名代としてゼーゼマン氏が来られているが、彼は成人の儀を祝いに来た事もだがキムラスカ・マルクト・ダアトの間で決定したことをマルクトが相違ないと示す為にこの場に来ている」
‘‘‘‘・・・っ!’’’’
インゴベルトの紹介にゼーゼマンは頭を民衆達に軽く下げ、一気に本題に入るだろうと予測した聴衆達は緊迫感を持つ。
「その決定についてだが、まずは言わせていただこう」



「・・・我々は様々な協議を行い対策を講じた上で、こう結論を出した・・・我々はプラネットストームを止める!」










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