焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「・・・おっと、そろそろ城の前にはっとくか。時間的には丁度いい頃だろうから、ハプニングを引き起こしてくれそうな奴に対しての対処はこれくらいにしとかないとな・・・どうかより辛い現実でも見ながら不幸せに生きてくれよ?ククッ・・・」
するとルークは途端にハッとしたように外に出ようと口にし、フェミ男スパッツを見下ろすように最後のある種の呪いにも似た言葉を狂笑とともに送り部屋から一瞬で姿を消す。そしてその場に残ったのはただ意識を失い、倒れ込んだフェミ男スパッツのみだった・・・



・・・さて、ルークが何故煙デコ達の元に姿を現す前にフェミ男スパッツの元に姿を現したのか?それはルーク自身が言っているよう、煙デコ達と顔を合わせている時に乱入などのハプニングを引き起こしかねないからだ。

かつてルーク達が旅を嫌々共にしてきた同行者達の中で唯一、フェミ男スパッツはルークに夢を見ていた存在だった。ルークは俺の事を気に入ってる、ルークは少なからず俺の事を考えてくれてる、ルークが今の現状を知れば俺を解放してくれるはず・・・大方先程ルークに会うまでのフェミ男スパッツだったなら希望も何もない希望を胸に、なりふり構わずルークに詰め寄っただろう。煙デコと猪思考姫だけでなく、周りにいる全ての人間達を巻き込んだ最後の舞台で全く空気を読まずに・・・

そんな事態をルークは起こしたくはなかった、故にルークはフェミ男スパッツの前に先に現れ先手を打ったのだ。自分の思い通りの展開にするように・・・









・・・そして城の前。貴族しか住めず立ち入る事もはばかられるこの層であるが、今日に関しては特別に無礼を働かないならば成人の儀を見ていいとお触れが出た為城の前には人がたくさん集まっていた。
(おーおー、人がいっぱい集まってんな。お、あそこにいるのは確かマルクト皇帝の側近のゼーゼマンって爺さんじゃん)
そんな中ルークは一般人に紛れ込めるよう変化の術を使い、中年男性の姿でキムラスカ兵士が引いたラインギリギリの最前列の所で堂々とその様子を見ていた。そして城の入口近くに来賓として来たであろう何人かのマルクト兵士を供につけたゼーゼマンを見つけ、ルークは確信を抱いた。
(ゼーゼマンの爺さんがここに遣されたのはマルクトもプラネットストームを止める事を選択したとハッキリさせる為の意思表示ってとこだな。まぁ成人の儀を祝う為にマルクト皇帝の名代としてここに来たってのもあんだろうけど、それは表向きの理由だろうな)
ルークはゼーゼマンが来た理由に検討をつけ、にやけそうになる頬をピクピクと我慢して止める。
(しかしまぁ、ご老体をわざわざ送らにゃダメな程マルクトって人材いねーのかな?・・・あ、違う違う。信頼してた人材はいたけど、それに裏切られたからわざわざ今度は安心できる人材として爺さんを送ったんだったな・・・!)
心の中で盛大な皮肉をピオニー、そしてかつて懐刀と呼ばれていた皇帝の信頼を裏切った眼鏡狸へとゼーゼマンを見ながら呟く。
(あー、ナルトから話聞くの楽しみ~っ!どうなってんだろ、あいつ!)
そして沸き上がるどう落ちぶれたのかへの好奇心に、ルークはウズウズと体をうずかせる。



‘ギィィィィィィ’
そんな風にルークが一人周りとは違う意味で楽しみに待っていると、唐突に城の門が重い音を立てながら開かれた。
(おっ、来た来た。陛下に公爵、そしてその中心に・・・ブッ、なんだありゃっ!)
そこから現れる人物を注意深くルークは見ていたが、たまらず出そうになった笑い声をルークは心の中にだけ納める。



(遠目ならわかんないとでも思ってんのか・・・!?落ち込んでます、本意でないですってのが明らかに顔に出てんぞ!勘違い夫婦・・・!)
ルークが見た光景、それはインゴベルトとファブレ公爵に挟まれた二人が明らかに影を持ったルークの言ったような表情で現れた物だった。








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