焔と渦巻く忍法帖 第五話

その後、修頭胸はようやく導師イオンが一人で行くことの危険性に気付き、イオンをいさめようとした。しかしイオンが泣きそうな顔でうつむき、「すみません・・・」と言い、退く意思がない事を明らかにすると「せめて私を護衛として連れていって下さい」とあっさりイオンの意思の前に崩れおちてしまった。
(だからって何で俺らまで・・・)
話の流れ上、行くのは修頭胸だけだと思っていた。しかし、「それじゃあ行きましょう」と普通にルーク達に同行をしろと言ってきた。流石に身勝手な物言いにルークは反論を始めようとしたが、
「行くってばよ!!」
とナルトが先に反論の芽を潰したのだ。






(どうして同行に賛成したんだ?)
(あの場で言い争いするのは面倒くさかったから)
今現在ルーク達はチーグルの住まいの森にいる。ルークとナルトの二人は前列で歩き、後の二人は後列にいる。ルーク達は横目で互いをみやりながら読唇術で会話をしている。
(それに同行しないって言ったらまたうるさくなってたってばよ)
(あー、あん時そんなの関係なしに俺またあの女をのしてしまう所だったな)
(そうだってばよ。止めなかったら人が来てイオンの連れも来てたってばよ。そうなったらイオンの連れのアニスってヤツと眼鏡狸が確実に来ただろうし)
その言葉にルークも冷静になった今なら理解出来る。騒ぎになっていればマルクト領内の騒ぎにマルクト軍人が来ない筈がない。そこでダアトの導師イオンと揉めている場面でも見られたら幾等でも拘束する理由が出来てしまう。その気になればこの世界の軍人など軽くけちらせるが、今まで隠してきたものをこんな下らない理由でばらしたくはない。それをルークは思い出した。
(わりぃ、ナルト)
(気持ちは分かるってばよ。他に方法があるのにそれを考えもしないからルークもいらついていたんだってばよ)
導師を止めたかったなら無理矢理にでも連れに引き渡せばいい、説得が駄目なら連れにも導師を説得させればいい、更に説得が駄目ならせめてその連れを連れていかせればいい、そういった考えも浮かばなかったのだろうか。選んだ選択は自らが護衛する、ルーク達がついてくるのは当然という態度、更には前衛をルークに任せる事が当然とくる、いらつかない方が不思議になるほど考えがない。
(もう考えんのも面倒くせーよ。こいつの馬鹿さ具合なんて)
(シカマルに似てきたってばよ、その口調)
(・・・俺自身が一番理解してる。気にするな)
下らない会話でも後ろの二人との会話よりは何倍もマシ、二人は雑談を交わす事で今までの鬱憤を晴らしながら森の奥へと歩いていった。




森の奥に進むとチーグルの姿を発見し、そのチーグルの後を追い掛けると樹齢が図れない程の大きな樹が目に入ってきた。その木の近くによると、エンゲーブの焼き印が入ったリンゴが落ちていた。イオンがリンゴを手に取りそれを確認すると、
「チーグルは木の幹を住みかにしているんです」
と言い、幹の中に入って行った。
「導師イオン!危険です!」
そう言い、続いて幹の中に入る修頭胸。
「・・・ナルト、行動よりも言葉が先に出るような兵士ってどう思う?」
「せめて行動しながら発言するべきだと思うってばよ。イオンは賢くておとなしい『筈』の魔物の所に行ってるんだから自分が率先して主の前に立つべきだってばよ」
「だよな~」
会話をしながら幹の中に移動していく二人。『筈』を強調しているのは絶対に安心出来るような魔物なのかということをちゃんと確認していないのに、姿を発見しただけで害はないと決めつけているという安易さからである。



「慎重さが足りないってばよ」




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