焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「クーッ!そんな風に聞けたんなら、明日の成人の儀が楽しみだってばよ!」
「ああ、そういえばルークはキムラスカの方に行っているんでしたね。それで、貴方もまたキムラスカに向かうんですか?」
そんな有様を想像し楽しそうに体を震わすナルトに、サフィールはキムラスカに向かうかどうかを問う。
「いや?俺はキムラスカには行かないってばよ」
「・・・行かないんですか?」
だが是と返って来るかと思われた返事が違ったことに、サフィールは少し体を前のめる。
「うん。俺はルークの代わりにサフィールに会いに来た事もだけど、元々アリエッタの帰郷に付き合う為に来たんだってば。だから俺は明日になったらアリエッタを迎えに行って、さっさと帰るってばよ。土産話はルークから聞けば別にいいしね」
「・・・前に使った口寄せ用の巻物は使わないんですか?それを使えば貴方をルークが呼ぶ事もアリエッタを呼び寄せる事も可能でしょう」
「無粋だってばよ、サフィール。アリエッタはもう二度とこっちには戻れないんだってばよ?だからせめて別れは唐突に消えるんじゃなく、ちゃんと挨拶をさせてから消えさせてやるべきだろ」
「・・・成程、確かに無粋でしたね」
訳を聞いたサフィールは失念したと、口に手を当て頷く。
・・・この世界へ来るための時空間忍術はもうルークとナルトの二人により、消滅扱いになっている。それはアリエッタに対しても例外ではない。そんなアリエッタを予告も無しに口寄せで久しぶりで最後に会う親から引きはがすのは、無粋と言えるだろう。
「わかってくれたなら何よりだってばよ。それで忘れない内に渡しておいた巻物を返しておいてくれない?」
「あぁそうですね。ちょっと待ってください、取ってきますので・・・」
それを理解したサフィールにナルトは三年前渡した巻物の事を言い出し、それを取ろうとサフィールは椅子から立ち上がり家の奥へ行く。
「・・・お待たせしました」
するとすぐにサフィールは手に巻物を携えて戻ってきて椅子に座ると、その巻物をナルトに手渡す。
「ああこれこれ。もしもの時があったらと思って渡しといたけど、使うような事態にならなくってよかったってばよ」
「その巻物はどうするんですか?術は封印すると言ってましたが、それも言ってしまえば封印対象でしょう?」
「あー、これは帰ってから適当に処分するってばよ。もう書き直しもきかないし、使い道もないから開かれる前に消滅させてやんないといけないしね」
サフィールの質問に答えつつ、ナルトは巻物を懐にしまい笑みを見せる。
「さっ、マルクトとダアトの事も聞き終わって巻物ももらった事だし後は適当にだべるってばよ。キムラスカの事はルークに任せてるしね」
「・・・そうですね。久しぶりですし、同時にもう以降は会う事もないでしょうから今日は貴方が飽きるまで付き合いますよ」
その笑みにサフィールは少し間を空け覚悟を決めたように同じく笑みを浮かべ、同意をする。
・・・そう、もう二度とサフィールはナルト達と会うことはないのだ。そしてこの時間はもう訪れる事はない、故にサフィールは今日はとことんまでナルトと話をしようと決めた・・・












・・・そんなナルトとサフィールが楽しく話して一夜が明けた。そしてその夜明けを誰よりも望まず、タイムリミットとした人間がいる地がある。
その地はバチカル・・・そのバチカルは今、人でごった返していた・・・






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