焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「ひぃ~・・・おっかしぃ~・・・そんなんになってるなら、修頭胸も大分まいってるんじゃねーのかなぁ・・・?」
「えぇ、大分酷い事になっているようですよ。ただ役立たず導師守護役と違いその存在はダアト内で相当愚昧との見方が広まってるようですからね。ライナーもその話はよく聞いているそうです」
その対象とは修頭胸。涙を拭いながら修頭胸の事を聞くナルトに、サフィールは修頭胸の事を話し出す。
「話によればヴァンの妹ということと元大詠師の部下ということで疑われ、更に自身でヴァンの企みを知っていた事を明かした為に白い目で見られるようになってからことさら口をつぐむようになったとのことです。おそらく失言を恐れてのことでしょうね。まぁファブレ公爵邸の事については公然の秘密のようなものですから、あえてそれを口にしない程度に皆さん言ってはいるんですけどね。それでその調子のようらしいです」
「あ~、わかるわかる。普通にやりそうだってばよ、あいつなら」
サフィールからの話にナルトは面白そうにウンウンと首を振る。
・・・修頭胸は極端から極端に走る傾向がある。自分の身を守るのに馬鹿正直に失言ばかり言う自分では下手に発言出来ないとでも思ったのだろう。
「ですがそんな行動を取られて人々が納得するわけなんてありません。自分は両人とは関係ないと言っても結局肝心な事は言わない訳ですからね、次第にその関心は離れて行ったらしく代わりに残ったのは孤独らしいですよ。同僚すら必要最低限以外の会話しかしない程度の」
「うわぁ~、加減すらわからないあいつらしいってばよ」
「そうですね。沈黙は金なりと言いますが、ヴァンの妹の場合は沈黙でなく話す事を拒否していますからそれは人間関係を築く上では致命的です」
そんな行動を嘲るナルトとサフィール。



・・・修頭胸の立場に立って考えるならずっと責められるのは酷く堪え難い事だったのだろう。だがその状況もうまく逆手を取れたなら、少なくとも多少の人間関係の改訂は出来ただろう。黙り続けるというのは何もしていないことに他ならない、だが何か話していたなら状況は良くも悪くも変わっていた可能性はある。黙っていても状況は不利だから、何か話をして駄目元でやるべき・・・そうすることが正しいとは言わないが、状況打開を求めるなら前進以外に方法はないのだから。

だがここでもまた、修頭胸は自身の悪癖に飲み込まれていた。それは口をつぐむと決めたらとことん口をつぐむ、間違った秘密主義だ。まぁこれにはとことん責められ続けられていたのもあって、守りの姿勢にならざるをえなかったのもあるのだろう。しかしそれも元を糾せば一切周りを信用しようともせず、周りの迷惑を省みず老け髭を自分で殺そうとした責任から来ている。それは自業自得だ。

ともあれ秘密主義だと周りに知られた上に元々からの無愛想な話し方は、真実を知った人々から見れば到底好感を持てる物ではないだろう。そして今働いている理由も慰謝料を払う為に仕方なくとくれば、好感など持てるはずもない・・・ある意味、これほどまでに悪条件の整った人間も中々いない。そう思える程、修頭胸の状況は差し迫った物があった。



「ですがそこまで総スカンをくらっているのに、ダアトから逃げないのはやはり貴方がかけた幻術のせいなんでしょうね」
「だと思うってばよ~?だって別段コウモリと違ってあれを縛り付けられる身内ってダアトにいないし、だからこそ暗示型の幻術を使ったんだしね」
そしてそんな生きにくいはずのダアトから修頭胸が逃げ出さないのは、愉快そうにナルトが語る以前使った幻術にあった。









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