焔と渦巻く忍法帖 epilogue

・・・元々人の評価の付け方とは、大きく二つに別れる。分野においての能力による優秀さを見て即座につけるか、長い期間を持って人の内面と付き合った上でつける二つに。

まぁどちらも評価の方法は間違いではない、事実その二つを合わせたやり方で人材の見分けをする事が社会の成り立ちを作っている・・・だからこそ、コウモリ娘は評価を下げていた。

・・・能力を見てやるやり方、これはコウモリ娘は度々イオンの行動を見過ごしていた。その度重なる失敗がある故、詠師陣が信用しないのがある。だが能力以上にドツボにはまっていたのが、内面を見られる評価だった。

まず周りを気にせず露骨に媚びを売る、これはそれだけでも十分反感を買う。次に導師守護役という同年代の人間がいるのに、周りと仲良くする気を全く見せず自分から一線どころか二線も三線も引いており付け入りたいと思う気持ちすら失わせてしまっている。

・・・これもまた社会の常識であるが、悪評が悪評を呼ぶ人間。こんな人間を重用したいと思う人間はまずいない。それに重要な役割を負うべくして負った人間は多少の例外こそあれ、周りの信任をその身に一身に受けた上で役割を背負う。それが上司からでも、仲間からでもだ。

それ程に信頼が人と人の間では重要な因子であるというのに、コウモリ娘は自らその信頼を得る為の機会を打ち捨てている。導師に気に入られさえすればそれでいいのか、それ程直属の導師守護役に返り咲きたいのか・・・他の導師守護役の目にはまずこう見られているのだろう。

もちろん他の導師守護役からしても導師直属という響きは他とは一線をかくす魅力があるのは感じているだろう・・・だがそれでもそうと見せないのが美徳であると同時に、自身を綺麗に見せる手段でもある。本来そうするのが当たり前なのだ、誰が飯をがっつくだけの躾のなっていない番犬を飼いたがる?

しかしコウモリ娘はそんな慎重な他の導師守護役を差し置き、見境なく導師に取り入ろうとしている・・・そんな行動は当然目の敵の対象となる。

・・・実力も態度もよくない、そしてなにより邪魔・・・表現の差異こそあれ、大方導師守護役の面々はまずそう思うだろう。そしてその導師守護役の面々に加算して、まずコウモリ娘を信用しない詠師陣が上にいる。

そんな面々に囲まれては、どんなにイオンに取り入ろうとしてもコウモリ娘に勝ち目はない。まず導師守護役の面々はイオンを庇い視界に入れさせようとしないだろう。よしんばイオンがお涙頂戴なほって置けないコウモリ娘の現状を聞いて助け舟を出そうにも、詠師陣がまずそれを許しはしない。更に言うなら現在実権がないに等しいイオンを頼るのも、はっきりと無駄と言える。そして今言ったメンバーは元より、両親には本音を話すことも出来ない・・・つまり、頼れる人間はいないのだ。コウモリ娘は。

・・・ナルトが言った通り、自ら墓穴を掘った形になった。もうこれより、ダアトに誰も助けを求められる人間はいない。だがその事実に今気付いているかどうか、はっきりと言えば定かではない。何故なら前からルーク達はコウモリ娘に感じていた事だが、コウモリ娘の性根は‘悲劇のヒロイン気取り’だ。今も尚自らに降り懸かる自業自得を、自身が不幸だからだと勘違いしていてもおかしくない。他の導師守護役に詠師陣が自分に優しくないのは、自身がただ嫌いだからだと自身に原因がないよう決め付けて。

・・・気付いてるか気付いていないか、それはどちらでもいい。だがもうどちらでもコウモリ娘に救いはない。気付いたら気付いたで手遅れを自覚して歎くばかりの状況にしかなりえないし、気付かないなら気付かないで頭の作りが余程自身を中心としたヒロイン気取りの勘違いのままある意味幸せで不幸せなままの暮らしをすることになる・・・正しく逃げ場がない・・・



そう考えればナルトはルークも納得するだろうなと思って、次の人間の事を聞く事にした。








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