焔と渦巻く忍法帖 第五話

「今頃アニスとやらはイオンを探してんじゃねーの?どうしていなくなったんだろー、って。それにアニス『達』ってつけたって事はまだ何人か他にいるんだろ?いきなり行方不明になったらその人達も慌ててるんじゃねーのか?」
余りにも幼すぎるこの導師に事実を伝えようと、『お前がいなくなって何人の人が困ると思ってるんだ?』という含みを入れた言葉を投げ掛けた。
「ちょっとルーク!!言い過ぎよ!!」
イオンは含みにまで気付いたかどうかまでは分からないが、ルークの言葉に反応し悲しそうにうつむいてしまった。しかし正論を言っている筈なのに何故かイオンが責められているという事だけに反応したのか、修頭胸がルークに反応してきた。
「導師イオン、彼の言葉を気にする必要はありません」
暗にわがまま坊っちゃんの言葉など正しい事は一つもないという侮辱の含みが入った言葉が耳に届いて来た。言われたイオンはどう対応すればいいのか分からずにあわあわしている。
(あーあー、嫌われてんな俺)
好かれたくもねーけど、と心の中で付け足しておく。



言葉面だけで人を判断してはその言葉の意味さえ理解しようとせずに否定でしか返さない。真意を汲み取ろうとする気さえ無い、ただ嫌いだからという感情から中身に実があるかどうか確認さえせずに発言する。人として余りにも未熟すぎる。
(救いようがねー)
ルークは心の底から思った。






「じゃあねーちゃん。この後どうするつもりだってばよ?」
「え?」
「導師イオンが護衛もつけず一人で村の外に出ようとしていた、ねーちゃんならこの後どんな行動をとるのかって聞いてるんだってばよ」
「えっ・・・えっと・・・」
ナルトの突然の質問に修頭胸は明らかな戸惑いを見せている。イオンをかばいさえすれば後はイオンに任せようと思考を丸投げにしていたのが慌てかたから分かる。
ルークと違いナルトの言葉を聞く理由、それはナルトが自分より年下で、年上の自分がちゃんと話をしなければいけないという責任感だけである。しかし修頭胸は気付いていない。質問の中身がルークと言い方が違うだけで全くルークと同じことを。
(やっぱり考えてねーよな)
(考えてないってばよ)
戸惑っている修頭胸を尻目に読唇術で会話をする二人。
(雰囲気だけで動いているようなヤツは少し脳を動かさせないとボケるからいけないってばよ)
(ナルトやっさしー)
読唇術である筈の二人の会話だが、実際にその場に聞こえそうな程に楽しげに話していた。




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