焔と渦巻く忍法帖 epilogue

・・・大方ルークが想像していた通り、コウモリ娘は直属の導師守護役を外されていた。それはサフィールが言っていた訳もあるだろうが、やはり惑星屑に協力していたコウモリ娘を詠師達が信用出来なかったのもあるのだろう。

そんなコウモリ娘を一概に導師直属として使い続けるには心情的にも、実力的にも難しい物がある。それにコウモリ娘の先輩に当たる他の導師守護役の主要の役目を割り振る事も考えねば、導師守護役として雇っている意味もなくなる。だからこその円滑化を図るための、導師守護役チェンジと言えた。

・・・そもそも導師守護役に何故そんなに人数をかける理由があるのかと言えば、徹底した警護を昼夜問わず行う為だ。貴族の屋敷に常に交代で兵士が見張りにつくのと同じよう、導師をいつも守れる体制を作る事が目的の人数である。

そしてそんな体制だからこそ、一人に護衛を全てを任せて昼夜問わず常にいろというのはハッキリとおかしいと言える。疲れれば護衛に必要な全ての能力が下降するのは当然で、護衛対象を守るには不適格なコンディションにならざるを得なくなる。それを避ける為にも複数の人数で護衛を行うべきなのだが・・・それでも漆黒の翼にイオンをさらわれた時に侵入にも気付く事が出来ず、寝過ごしていたのは一人で護衛を行う上ではあまりにも致命的な失態と言えよう。

・・・話は戻るが、あるべき姿に戻っただけなのだ。導師守護役のシステムとして、ある程度の人数を常に導師の側に付けるのは。そしてそんなシステムだからこそ信頼を置ける人間を導師につけるべきなのだが、イオンはともかく詠師達がコウモリ娘を信頼が置けるなどと安々認めるはずなどない。それに本来なら地位剥奪の上、全てを明かされた上で死刑にされてもなんら不思議ではない罪を犯している。元々軍人は軍に籍を置いたなら少年法など適応される職種ではないし、むしろ一般人より罪を犯せば法を守る立場の人間に当たるだけに罰の度合いも強い。

・・・それを考えれば働いて金を返させる為だと縛り付けられ、イオンの直属ではなくなったとは言え導師守護役を続けられるのは破格な処遇と言えよう。



「それでライナーが気を利かせて導師守護役の子に話を聞いたらしいんですよ、あれの勤務態度を。そうしたらまぁ導師守護役の間で評判が悪いらしくて、導師がいる時はやたら媚びを売るような態度を取って近付こうとするのにまともに護衛をするようには気を張らず、かと言って上司がいない導師守護役のみの場ではやたらグチグチと言って人を見下したような荒んだ視線でいるらしいです。そのこともあって導師守護役の間であれを好きだと言うような人間はいないそうですよ」
「ぷっ!アッハッハッ!アホだ、アホだあいつ!自分で墓穴掘って自ら墓穴に飛び込んでるってばよ!ヒィ~、おっかしぃ~・・・っ!」
茶から口を離したサフィールが更に他の導師守護役との関係を口にし、ナルトは盛大に腹を抱えて涙まで浮かべながら笑い倒す。



・・・だがそれでもまだ、無意味にあがこうとするのはコウモリ娘達の特有の行動と言える。
察するにコウモリ娘は再びイオン直属の導師守護役に返り咲く事でどうにか自身の借金返済の為に手を打とうとしているのだろう。直属で常にいるとなればそれなりに金が出やすいのもあるが、それ以上に甘いイオンのことだからどうにか協力してくれると考えているのだろう。



・・・だがそのチャンスを自身でコウモリ娘は無駄にしていた。









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